ロマネスクへのいざない (12)- カスティーリャ・イ・レオン州-ブルゴス県 (9)– ミニョン・デ・サンティバニェス村の聖ペドロ教会 (Iglesia de San Pedro en Miñón de Santibáñez)

ブルゴス市から約20㎞、ミニョン・デ・サンティバニェスという村に聖ペドロ教会はある。この同じブルゴス県にある1011年に設立されたベネディクト会修道院の聖サルバドール・デ・オーニャ修道院に残っている文書によると、ミニョン・デ・サンティバニェスという村の起源は11世紀まで遡る。 聖ペドロ教会は、後期ロマネスク様式時代に当たる12世紀の終わりから13世紀の初めにかけて建設された。そのため、ロマネスク様式とは言え、入口の門部分がゴシック様式の影響も受けてわずかながら尖っている。そして、教会は16世紀に再建され、ロマネスク様式はこの入り口部分と教会の中にある洗礼盤のみが残っているのみである。再建された際、出入り口に厚いバットレスが建てられたため、アーキボルトを支える柱頭や入口の門の一部が切断された。もう少し、オリジナルであったロマネスク様式の入口を尊重して完全な形で保存してほしかったと惜しまれるが、今ではなすすべもない。 ミニョン・デ・サンティバニェス村の聖ペドロ教会は、1983年にはスペインの文化財に指定されている。 なんて漫画チック‼ 入口の前に来て、入口に彫られているモチーフを見て「なんて漫画チックな彫り物!」というのが第一印象だった。百聞は一見に如かず、とにかく下の写真をご覧いただきたい。 今まで見てきたロマネスク様式の彫り物の中でも、これほど漫画チックなものは見たことはない。今回のブルゴス県のロマネスク様式の旅の中で見た彫り物の中でも異彩を放っている。一見稚拙な印象さえも与える。アーキボルトに施されている18人の姿は、日本の漫画で見たことがあるようなユーモラスで他のものとは一味違うものだ。もう少し近くから見てみよう。 一般的にロマネスク様式の人物像は、施されている場所の空間による制限もあり、極端にバランスが取れていないものも見受けられるが、ここに彫られている楽師たちや書物を持つ人物像等はあまりにも頭でっかちで丸みを帯び漫画チックである。 また、顔つきもちょっと現実離れしたまるでお化けのような顔つきだ。ちなみに、同じブルゴス県にあり同じく12世紀末に造られたアエド・デ・ブトロン村にある聖母の被昇天教会(Iglesia de La Asunción de Ahedo de Butrón)に施されている楽師たちを紹介しよう。 同じ時代の、同じ地方の、同じロマネスク様式のものとはかなり違っていることがお分かりになるだろう。 これが何を意味するのか。この入り口を造った石工達が意図的にこのようなユニークな彫り物を施したのか、単に石工達の技術が未熟であったためこのような稚拙ではあるが面白み溢れる独創的な作品になったのか、色んな文献を当たってみたが答えになるものは見つからなかった。ただ、この漫画チックで一度見たら忘れられない入口を造った石工達は、後世に名前を残すこともなかった名もなき、しかし当時人気のあった地元の石工達によって造られたことだけは確かなようだ。 (アエド・デ・ブトロン村の聖母の被昇天教会(Iglesia de La Asunción de Ahedo de Butrón)についてもっと知りたい方はこちらもどうぞ。) ゾディアック-12個の神秘的なメダイヨン もう一つ目を引くのは、入り口のアーチとして機能しているアーチボルトに施されている12個のメダイヨンだ。メダイヨンとは円形の浮彫装飾である。 それらの装飾は、四足獣、爬虫類、そして人間の姿を、常に円形の枠の形に合わせて描かれており、己の四肢の先端をつかまえたり噛んだりしているもの、S字型にデザイン化しているものなどが見られる。 ミニョン・デ・サンティバニェスの聖ペドロ教会のすぐ近くにある家の教会管理人の方が、教会の簡単な説明が書かれた紙を1枚くれたが、その説明文の中には、単に装飾的発想に従ってこのようなモチーフを選択したのだろうとあった。 しかし他の研究者たちの意見として、天球上の12星座を示すゾディアックだろうという説もある。例えば、ライオンは「獅子座」、女性は「乙女座」、弓を引き絞る弩(いしゆみ)の射手は「射手座」を意味する。だが、その他のモチーフについては説明できないものもあるとのことだった。 実際、ロマネスク様式の教会にはゾディアックが描かれていることがある。興味深いことは、星によって影響を受けるという占星術は、キリスト教の中では軽蔑すべき異教徒たちの迷信と考えられていた。では何故、天球上の12星座を示すゾディアックを教会の入口の装飾に使ったのだろうか?これは、天球上の12星座を示すゾディアックが示すものは、農業暦のようなものを指していると考えられている。つまり、ロマネスク芸術では、神が絶対的な支配者である1年の月の時系列的なサイクルであり、「時間の支配 … 続きを読む ロマネスクへのいざない (12)- カスティーリャ・イ・レオン州-ブルゴス県 (9)– ミニョン・デ・サンティバニェス村の聖ペドロ教会 (Iglesia de San Pedro en Miñón de Santibáñez)