歴史の街トルデシージャス(Tordesillas)

首都マドリードから車で北西180㎞に歴史の街トルデシージャス(Tordesillas)はあります。バジャドリード県にある人口約8000人(2024年)の街には、長く複雑な歴史が詰まっていて、ビックリさせられます。

夕方のトルデシ―ジャス(写真: ウィキペディア・ドメイン)

スペインとポルトガル間で取り決められたデマルカシオン(demarcación)

デマルカシオン(demarcación)という言葉を聞いたことがありますか?これは、「境界、画定された土地」等という言う意味のスペイン語ですが、歴史的には大航海時代、新大陸でのスペインとポルトガル間の国境線を確定したものを指します。この境界-デマルカシオン(demarcación)-を定めた条約をこのトルデシ―ジャスの街で結んだことにより、この条約は「トルデシ―ジャス条約(Tratatdo de Tordesilas)」と呼ばれていますが、「トルデシ―ジャス条約(Tratatdo de Tordesilas)」に関する資料などを集めて説明した博物館が街にはあります。

コロンブスが新大陸に向かった最初の航海時のキャラベル船ピンタ号(La Pinta)の模型(写真: 筆者撮影)

博物館の中の説明では、

「トルデシ―ジャス条約の要点は、大西洋に極から極までの境界線を引いたことである。ポルトガルは、カーボべルデ岬諸島の西に370レグア(約2000km)を設定することを望んだが、この要求は、カスティーリャ地域を侵略することなくアフリカのラ・ミナ要塞から帰還する必要性によって正当化された。厳しい議論の末、この提案はカスティーリャ王国の君主たちに受け入れられ、交渉は終了した。和平が双方によって調印されると、代表者たちはさらに、ローマ教皇が合意した条件を確認し、100日以内に両国の国王が、羊皮紙に鉛の印章と君主の自筆署名が押された厳粛な文書によって条約を承認し、批准することを願った。ポルトガル側は、王位継承者であるドン・ファン皇太子もカスティーリャ王国の証書に署名するよう要請し、これを取り付けた。」

とありました。

1545年スペイン人ペドロ・デ・メディーナ(Pedro de Medina)が書いた、初めての「航海術」に関する本。その中には、良い航海に必要で、知っておくべきすべての規則、宣言、秘密、警告が含まれていました(写真: 筆者撮影)

つまり、本条約によって、2国間が勝手にカーボべルデ岬諸島の西370レグア(約2000km)の海上において子午線に沿った線(西経46度37分)の東側の新領土がポルトガルに、西側がスペインに属することが定められたという内容です。これによって現在のブラジルはポルトガル領に、それ以外の南米はスペイン領になり、今でもブラジルではポルトガル語、それ以外の南米の国々はスペイン語を話しているという訳です。

1494年6月7日、トルデシージャズの街でスペイン君主代表とポルトガル王ジョアン2世の間で調印された条約の批准を記した文書。(写真: 筆者撮影)

ちなみに、条約証書の原本は2007年にスペインとポルトガルの共同申請で、ユネスコの記憶遺産に登録されています。

サンタ・クララ王立修道院(Real Monasterio de Santa Clara)

1931年に国の文化財に指定されたこのサンタ・クララ王立修道院(Real Monasterio de Santa Clara)は、ムデハル様式のファサード、アラブ様式の浴場、ゴシック様式の礼拝堂等、12世紀から18世紀までの様々な様式の集合体です。1363年に修道院として生まれ変わるまでは、宮殿として使われていました。この宮殿は、ムデハル様式の建築でした。

アラブ様式の中庭(Patio árabe)の美しい柱と漆喰装飾(写真: 筆者撮影)

イスラム教徒の支配を800年にも亘り受けてきたスペイン特有の芸術にムデハル芸術があります。これは、イベリア半島のキリスト教王国で発展した芸術様式で、イスパノ=イスラム様式の影響や要素、素材を取り入れたものです。(ウィキペディア参照)

イスラム様式の建物の壁には磔刑のキリストの絵が描かれていました(写真: 筆者撮影)

イスラム様式の影響を受けた宮殿には、アラブ様式の浴場がありました。今も、その浴場が残っていて見学することができました。

アラブ様式の浴場ではイスラム建築でよくみられる星型の明かり窓が印象的(写真: 筆者撮影)

サンタ・クララ王立修道院(Real Monasterio de Santa Clara)で絶対に見てほしいものは、黄金礼拝堂です。その素晴らしい天井装飾には思わず息を呑みました。こんなに素晴らしい芸術品が小さな街トルデシ―ジャスに、あまり知られることもなく存在していたことに驚嘆しました。実際、一緒に訪れたスペイン人友人のうち、誰もこの至宝のことを知っている人はいなかったのです。とにかく、礼拝堂に入ったらまるで別世界へ来たような感覚を覚えました。

緻密な天井装飾は見応え十分!!(写真: 筆者撮影)

幽閉された狂女王フアナ

スペイン史で最も有名な女性の一人に「狂女フアナ(Juana la Loca)」と呼ばれる王女がいます。プラド美術館にあるフランシスコ・プラディージャ・イ・オルティス(Francisco Pradilla y Ortiz)の絵画「狂女フアナ」を思い出す方もいらっしゃることでしょう。

「狂女フアナ(Juana la Loca)」フランシスコ・プラディージャ・イ・オルティス(Francisco Pradilla y Ortiz)(Copyright de la imagen ©Museo Nacional del Prado)

カスティージャ王国のイサベル女王を母に、アラゴン王国のフェルナンド王を父に持つフアナは、1479年に第2王女として生まれました。そして17歳の時にハプスブルグ家の神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世の長男ブルゴーニュ公フィリップと結婚しました。「端麗公フィリップ」と呼ばれるほどのハンサムな彼に一目ぼれしたフアナと、今まで見てきた女性とは全く異なるタイプのフアナにすぐに惹かれたフィリップは、最初こそ上手くいっていったものの、浮気っぽいフィリップの不実を敬虔なカトリック信者として育てられてきたフアナには許すことができず、人目も気にせず嫉妬するようになり、フィリップの手に余る妻となっていきました。更には、フィリップの心はフアナから離れていき、夫への猜疑心へ駆られ、次第にフアナの精神状態は不安定になっていきました。

端麗公フィリップとフアナ (ウィキペディア・ドメイン)

そんな中、兄フアンそして姉イサベルとその子供ミゲルの早世によって、フアナは王位継承順位が1位となりました。しかし、夫との関係の中で精神異常が顕著となり、更には母イサベル女王の崩御によってカスティージャ王国の女王に即位したものの、夫の突然死により決定的にフアナの精神状態は破壊されてしまいます。そんなフアナを見た父フェルナンド王は、フアナにはカスティージャ王国とアラゴン王国の女王には到底相応しくないと考え、フアナを排除するに至ります。実際には、女王フアナとフアナの長男カルロス1世を、名目上の共同統治者としたのです。但し、フアナはトルデシ―ジャスの街の館に幽閉されてしまいます。そして、なんと約40年という長い年月を館に幽閉されたまま、1555年、76歳の生涯を終えます。

因みに共同統治者であった長男カルロス1世は、最後の神聖ローマ皇帝カール5世 のことで、日本ではこちらの名前の方が有名かもしれません。

こんな人生を送ったフアナですが、何故「狂女」と呼ばれるようになったかというと、様々な異常な言動があった中で、最愛の夫の死に直面して取った行動が決定的となったと思われます。それは、夫の埋葬を許さず、棺を運び出し、数年間各地を放浪して周った奇怪なものでした。前述したフランシスコ・プラディージャ・イ・オルティス(Francisco Pradilla y Ortiz)の「狂女フアナ」の絵の通り、喪服に身を包んだフアナは気が狂うほど愛していた夫フィリップの遺体を収めた棺をお付きの者たちに担がせ、自分は身重であったにもかかわらず、歩き回る生活を送っていたのです。そしてその途中で、最後の子供を産むのです。一般的には、グラナダに向かっていたと言われていますが、目的地に着くことはなく、前述した通り、父フェルナンド王に捕らえられ生まれた娘と共にトルデシ―ジャスの街に幽閉されてしまいました。

「娘のカタリナ王女とともにトルデシーリャスに幽閉される狂女フアナ王妃(La reina Juana la Loca, recluida en Tordesillas con su hija, la infanta Catalina)」フランシスコ・プラディージャ・イ・オルティス(Francisco Pradilla y Ortiz)(Copyright de la imagen ©Museo Nacional del Prado)

悲哀を誘うことの一つに、フアナは、正式には崩御するまで退位を拒み、幽閉の身でありながら女王であり続けたことです。そして、公式文書に署名する際、最後まで「我、女王(Yo la reina)」の言葉を添えてサインしていたことです。そのことから、今もフアナは実は狂っていたわけではなく、狂っているふりをしていただけではないか、という説もあります。確かに、フアナが唯一育てた最後の娘カタリーナには、きちんとしたプリンセスとしての教育をし、カタリーナは成長した後ポルトガル王に嫁いでいくことになります。そして、ポルトガルで王を支え、積極的に政治に関与する重要な存在となったことを鑑みると、少なくとも完全に狂っていたわけではなかったかもしれません。権力の座から引きずりおろされた政治的な犠牲者だったのかもしれません。

トルデシ―ジャスの街にあるフアナの像。ここには、「カスティージャ王国の王女」と記されている(写真: 筆者撮影)

歴史好きの人にはこの街は興味深いものになると思います。現在も南米の文化圏を二分するその起源が、この小さな街で取り決められたことも今のトルデシ―ジャスの街を歩いていると不思議な気持ちにさせられました。

参考

・サンタ・クララ王立修道院(Real Monasterio de Santa Clara)公式サイト英語版です。

https://www.patrimonionacional.es/en/visita/royal-monastery-santa-clara-tordesillas

やっと会えました!ワシミミズク(Buho real)の親子-エストレマドゥーラ州「モンフラグエ国立公園 (Parque Nacional de Monfragüe)」

観察日:2025年5月1日

観察した鳥の種類:35種類

以前にも紹介したことのあるエストレマドゥーラ州にある「モンフラグエ国立公園 (Parque Nacional de Monfragüe)」は、ヨーロッパ中からバードウォッチャーたちが訪れるバードウォッチングの聖地です。去年は訪れることができなかったので、今年こそは!と行ってきました。(笑)

モンフラグエ国立公園 (Parque Nacional de Monfragüe)で誰もがお目当てにしている鳥は、絶滅の危機にあるイベリアカタシロワシ(Águila imperial ibérica)でしょうか。他にも、ナベコウ(Cigüeña negra)をお目当てにして来るバードウオッチャーも多いですね。私は、今回はまだ実際には見たことのないワシミミズク(Búho real)をどうしても見たくて、頑張っていつもより早起きして行ってきました。

モンフラグエ国立公園 (Parque Nacional de Monfragüe)の地質は興味深いもので、写真の様に地層の側方から大きな力が掛かった際に、地層が曲がりくねるように変形している褶曲(しゅうきょく)がみられます(写真: 筆者撮影)

やっと会えたワシミミズク(Búho real)

どんよりと曇った朝9時半頃着くと、既に望遠鏡を設置してバードウォッチングをしている人がいました。そして、私達が着くとすぐ、「ワシミミズク(Búho real)が見えるよ」と教えてくれました。早速私たちも望遠鏡を設置して見てみると、巣の中にワシミミズク(Búho real)が!! いきなり到着早々にワシミミズク(Búho real)が見えるなんて、なんてラッキー!更に、30分後くらいには、巣の中に居た雛の姿も見れました!! ポヨポヨした灰色がかった毛と大きな丸い目が見えています。なんと可愛らしい姿でしょう。時々、首を動かしています。そのしぐさがまた可愛らしくて、巣の中に隠れてしまうまで約2時間程ずっと観察し続けていました。

ワシミミズク(Búho real)の雛はまるでぬいぐるみ!(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

見たかった鳥たちのオンパレード

その間に、イベリアカタシロワシ(Águila imperial ibérica)やナベコウ(Cigüeña negra)、クロハゲワシ(Buitre negro)やエジプトハゲワシ(Alimoche)が飛んでいるのも見えました。そして、数えきれないほどの数のシロエリハゲワシ(Buitre leonado)が岩山の上に止まっている姿も勿論見えました。

この国立公園では、無数のシロエリハゲワシ(Buitre leonado)が生息していて、そのあまりの数の多さにシロエリハゲワシ(Buitre leonado)を見てもありがたみがないほどです。(笑)

-イベリアカタシロワシ(学名:Neophron percnopterus / 西:Águila imperial ibérica)

イベリアカタシロワシ(学名:Neophron percnopterus / 西:Águila imperial ibérica)(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

-ナベコウ(学名:Ciconia nigra / 西:Cigüeña negra)

ナベコウ(Cigüeña negra)の雛たち 雛のうちは真っ白 (写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

– クロハゲワシ(学名:Aquila adalberti / 西:Buitre negro)

クロハゲワシ(学名:Aquila adalberti / 西:Buitre negro)(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

-シロエリハゲワシ(学名:Gyps fulvus / 西:Buitre leonado)

ここでは数多くのシロエリハゲワシ(学名:Gyps fulvus / 西:Buitre leonado)を見ることができます(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

卵を抱いていたエジプトハゲワシ(Alimoche)

他のポイントに移り、今度はエジプトハゲワシ(Alimoche)を見ました。こちらは、まだ雛はかえっていないようで、じっと巣の中に座って卵を抱いている様子でした。

– エジプトハゲワシ(学名: / 西:Alimoche)

今回も卵を抱いているエジプトハゲワシ(学名: / 西:Alimoche)が見れました(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

アオサギ(Garza real)の巣

モンフラグエ国立公園 (Parque Nacional de Monfragüe)は何度も訪れたことはありましたが、今回初めて巣に居るアオサギ(Garza real)の姿も目撃することができました。

– アオサギ(学名: Ardea cinerea / 西:Garza real)

アオサギ(学名: Ardea cinerea / 西:Garza real)(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

色んな鳥たちに出会え、お目当てのワシミミズク(Búho real)とおまけにその雛まで見れて、大満足の1日でした。その他の鳥たちも紹介します。

今回見れた鳥たち

ワシミミズク(Búho real)、イベリアカタシロワシ(Águila imperial ibérica)、ナベコウ(Cigüeña negra)、クロハゲワシ(Buitre negro)、エジプトハゲワシ(Alimoche)、シロエリハゲワシ(Buitre leonado)、アオサギ(Garza real)の他に見た鳥たちは次の通りです。

-トビ(学名: Milvus migrans / 西:Milano negro)

トビ(学名: Milvus migrans / 西:Milano negro)の姿も見れました(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

– シュバシコウ(学名:Ciconia ciconia / 西:Cigueña blanca)

シュバシコウ(学名:Ciconia ciconia / 西:Cigueña blanca)(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

– チャイロツバメ(学名:Ptyonoprogne rupestris / 西:Avión roquero)

チャイロツバメ(学名:Ptyonoprogne rupestris / 西:Avión roquero)(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

– ニシイワツバメ(学名:Delichon urbicum / 西:Avión común)

ニシイワツバメ(学名:Delichon urbicum / 西:Avión común)(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

– ツバメ(学名:Hirundo rustica / 西:Golondrina común)

ツバメ(学名:Hirundo rustica / 西:Golondrina común)(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

-コシアカツバメ(学名:Cecropis daurica / 西:Golondrina dáurica)

コシアカツバメ(学名:Cecropis daurica / 西:Golondrina dáurica)(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

– クロウタドリ(学名: Turdus merula / 西:Mirlo común)

クロウタドリ(学名: Turdus merula / 西:Mirlo común)(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

– カンムリヒバリ(学名:Galerida cristata / 西:Cogujada común)

カンムリヒバリ(学名:Galerida cristata / 西:Cogujada común)(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

– ワタリガラス(学名:Corvus corax / 西:Cuervo grande)

ワタリガラス(学名:Corvus corax / 西:Cuervo grande)(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

– シラヒゲムシクイ(学名:Sylvia cantillans / 西:Curruca carrasqueña)

シラヒゲムシクイ(学名:Sylvia cantillans / 西:Curruca carrasqueña)(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

– シジュウカラ(学名:Parus major / 西:Carbonero común)

シジュウカラ(学名:Parus major / 西:Carbonero común)(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

– アオガラ(学名: Cyanistes caeruleus / 西:Herrerillo común)

アオガラ(学名: Cyanistes caeruleus / 西:Herrerillo común)(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

– ズアオアトリ(学名:Fringilla coelebs / 西:Pinzón vulgar)

ズアオアトリ(学名:Fringilla coelebs / 西:Pinzón vulgar)(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

-イソヒヨドリ(学名:Monticola solitarius / 西:roquero solitario)

イソヒヨドリ(学名:Monticola solitarius / 西:roquero solitario)(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

ちょっとスペイン語 -38-  (Hasta cuarenta de mayo no te quites el sayo-5月40日まではコートを脱ぐな)

ここでは、ちょっとしたスペイン語の言い回しや、ことわざ、話し言葉など、辞書には載っていない単語も含めて紹介していきます。スペイン語を勉強している方には言葉の幅が広がるお手伝いができればいいなと、スペイン語には興味ないという方には雑学として楽しんでいただければいいなと思っています。

近くを歩いていると道端にこんな可憐な花が咲いていました(写真: 筆者撮影)

5月も後半となり、もうすぐ6月になろうとしています。

今年のサラマンカは、例年になく2月頃からずっと雨の多い天気が続いてきました。通常、スペインは秋と4月に雨が多く降ります。ところが、今年に入って2月頃から雨が多いなと思っているうちに、3月に入ると本格的に雨が降り出し、まるで日本の梅雨のようでした。4月は通常通り雨が多い1ヵ月でしたが、5月に入っても一向に雨が止む気配がなく中旬辺りまでずっと雨の毎日。流石に皆、長雨にはうんざりさせられ、「鱗が生えそうだよ!」とか「今年のイースターの山車はゴンドラ式にしないといけないね!」等ど色んなジョークが飛び交っていました。(笑) 

さて、雨が多かったのは普通ではなかったのですが、スペインは結構朝晩の気温差が激しい国です。お昼に25℃を超す日でも朝晩は5℃程というのは普通です。スペインの人は、この時期はまるで玉ねぎのように重ね着をして温度調節をし、体調管理に気を付けています。

この時期にテレビの天気予報等でよく聞くことわざがあります。このことわざを今日は紹介します。

Hasta cuarenta de mayo no te quites el sayo-5月40日まではコートを脱ぐな

直訳を挙げていますが、「6月上旬までは寒い日もあるので、暖かくして過ごすことをおすすめする、寒さのぶり返しに気を付けて」、という意味を含んでいます。

Mañana va a hacer calor. Dicen que sube la temperatura hasta los 30 grados de máximo.

明日は暑くなるってよ。最高気温は30℃まで上がるって言ってた。

¿De verdad? Entonces, ya voy a guardar la ropa de invierno.

本当⁈ じゃ、冬服はもう片付けてしまおう。

Espera una semana más. Ya sabes aquí “Hasta cuarenta de mayo no te quites el sayo“, puede que vuelve el frio de nuevo.

あと1週間位待ったほうがいいよ。スペインでは「5月40日まではコートを脱ぐな」って言って、寒さがぶり返すかもしれないから。

¡Es verdad! La guardaré después de cuarenta de mayo.

そうだね!じゃ、5月40日になってから片付けるよ。

今日は5月28日。サラマンカは、先週まで朝晩10℃以下で肌寒い毎日でしたが、今日は最低気温15℃、最高気温は32℃まで上がるようです。本当に、寒暖差が激しく体調管理が大変です。どうぞ皆様もお体に気を付けて下さいね。

新ローマ教皇選出!カトリックの国スペインの反応は⁈

第267代ローマ教皇レオ14世

去る5月8日に、キリスト教カトリック教会の新しいトップがコンクラーベ(Cónclave)によって選出され第267代のローマ教皇となりました。初めてのアメリカ合衆国出身の教皇で、ペルーの国籍も持っているとのこと。司教になる前から宣教師として長年ペルーで活動したため、南米の信者たちからも慕われているようです。実際、スペイン語でのスピーチで、長年寄り添ってきたペルーのチクラヨの人達へのメッセージもありました。

スペインでの反応

スペインでは、新教皇が選出されるとすぐニュースとなり、アメリカ合衆国出身でレオ14世の親がスペイン系にルーツを持っているということも強調されていました。

5月8日のスペインの新聞「ABC」では、「ロベール・プレヴォスト氏とはどんな人物か。スペインとの関係、両親と年齢(Quién es Robert Prevost, el nuevo Papa León XIV: su relación con España, sus padres y su edad)(筆者訳)」という見出しで、レオ14世の母方の祖先がスペイン人だったと記載されていました。(参照: https://www.abc.es/sociedad/robert-prevost-misionero-chicago-opciones-elegido-papa-20250508111416-nt.html?ref=https%3A%2F%2Fwww.google.com%2F

教皇制は、キリスト教の勃興と共に誕生し、様々な局面を迎えながらも2000年以上にも亘り存在し続けているヨーロッパで最も古い制度で、世界でも最も古い制度の一つです。世界中の隅々にまで教会があり、その信者数たるや13億人を数えるので、中国やインドの人口がそれぞれ約14億人ということを鑑みると、キリスト教カトリックを「一つの国」と考えるとかなり大きな国になるということです。そのトップの選出に世界中が注目したのも納得ですよね。日本でも教皇の選出方法コンクラーベ(Cónclave)についての報道等も多くみられました。

連日のニュース

さて、新教皇誕生から1週間近く経ちますが、スペインでは連日新教皇のニュースが流れてきます。

昨日(5月12日)のスペインの新聞「20 minutos」では、「新教皇レオ14世、バチカンから生中継。教皇はバチカンのメディアに「平和のためのコミュニケーションの道」を選ぶよう呼びかける(Nuevo Papa León XIV, en directo | El Papa pide a los medios en el Vaticano que elijan “el camino de la comunicación a favor de la paz”)(筆者訳)」という見出しの記事を掲載して、刻一刻と新教皇の行動を伝えています。(参照: https://www.20minutos.es/internacional/directo-robert-prevost-nuevo-papa-leon-xiv-ultima-hora-vaticano-5708614/)

本日(5月13日)のスペイン新聞「El País」には、「レオ14世、トランプ大統領の大量強制送還作戦に立ち向かうローマ法王(León XIV, un papa para hacer frente a la campaña de deportaciones masivas de Trump)(筆者訳)」という見出しで、社会問題に取り組んだレオ13世から「レオ」という名前を選んだことに言及したうえで、「レオ14世は、社会正義へのコミットメントを明らかにした」と締めくくられていました。(参照: https://elpais.com/us/migracion/2025-05-13/leon-xiv-un-papa-para-hacer-frente-a-la-campana-de-deportaciones-masivas-de-trump.html)

教皇レオ13世は、19世紀に、歴史的な回勅『レールム・ノヴァールム(Rerum novarum)』と呼ばれる新教皇の手紙によって、全世界のカトリック教会の司教にむけて、第一次産業革命後に問題となっていた貧富の差や経済・福祉における国家の役割について説き、社会問題に取り組んだ画期的な教皇でした。そのため、教皇レオ14世の母国アメリカ合衆国の大統領が何千人もの移民を犯罪者にし、拘留し、追放していることに対して、この新しい教皇が傍観しているはずはないだろうということです。

他にも本日のスペイン新聞「El Mundo」には、「ローマ法王は「真実を伝えたために投獄されたジャーナリスト」の自由を求める(El Papa pide la libertad para “los periodistas encarcelados por contar la verdad”)(筆者訳)」と題する見出しで、「公正で適切な判断を下すことができるのは、十分な情報に基づいた国民だけです」と教皇は強調していることを取り上げています。(参照: ttps://www.elmundo.es/internacional/2025/05/12/6821c689e4d4d8a06c8b45ae.html

このように、新教皇の行動や、政治的意見等がスペインの新聞には連日載せられていて、つくづくキリスト教カトリックのトップであるローマ法王の影響力の強さを感じさせられます。そして、スペイン国民の関心の高さにも驚かされます。と同時に、ヨーロッパ内でウクライナ戦争が勃発したり世界中で戦争や紛争が起きている現在、多くのスペインの人々が心の底から一刻も早い停戦を願い、その平和の願いを世界的にも影響力のある新ローマ法王に託していることが伝わってきます。

番外編 バードウォッチング!-「お手軽バードウォッチング」(ポーランド・首都ワルシャワ)

観察日: 2025年4月13日

スペインではないのですが、番外編としてポーランドでのバードウォッチングについて紹介しています。イースター休暇を利用して友人たちとポーランド旅行に行ってきました。今回はバードウォッチングを中心とした旅行ではなく、初めて訪れるポーランドとして一般的な観光コースを車を借りて回りました。という訳で、街中などを歩いていて出会った鳥たちなので、あくまでもお手軽なバードウォッチングでしかないことを初めにお断りしておきます。

盾と矛を持ってワルシャワ市民を守っているシレンカと呼ばれる人魚の像(写真: 筆者撮影)

ワルシャワ市内で楽しめるバードウォッチング

第二次世界大戦の際、ワルシャワ市内は徹底的に破壊されましたが、残った資料や記録を頼りにワルシャワ旧市街を「壁のひび一本にいたるまで忠実に」復元したそうです。そして、「ワルシャワ旧市街」は「破壊からの復元および維持への人々の営み」が評価された最初の世界遺産となりました。そんなポーランドの人達が戦争からの復興を願って復元した素晴らしい街並みを堪能した後、夏の間、毎日曜日にショパン・コンサートが開かれることで有名なワジョンキ公園(Łazienki Królewskie)に足を延ばしてみました。お目当ては公園の中にある水上宮殿。水に映る宮殿は本当に美しいものでした。

ワジョンキ公園(Łazienki Królewskie)内の水上宮殿(写真: 筆者撮影)

公園の中を散策していると、様々な動物に遭遇しました。そして、予期せぬ様々な鳥たちにも会うこともできました!

ワジョンキ公園(Łazienki Królewskie)の人気者

公園の中を逍遥していると、1本の木の前で子供連れの家族等結構な人数の人達が携帯で写真を撮っているようなので、私も近づいてみることにした。木の上に見事な羽を持つオスのインドクジャク(Pavo real) が居ました。木の上に居るインドクジャク(Pavo real) を目の前で見るのは初めてだったので、新鮮な驚きを感じました。

-インドクジャク(学名: Pavo cristatus / 西:Pavo real)

派手な色がひときわ目立っています(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

人馴れしているこのインドクジャク(Pavo real) は、その後木から飛び降りて公園内をのんびり散歩していました。美しい羽は公園内の人達の目を引き、人気者でした。 

ヨーロッパでは珍しいオシドリ(Pato mandarín)も!

オシドリ(Pato mandarín) は日本では馴染み深い鳥ですが、ヨーロッパではほとんど見ることができない希少な鳥です。その美しい姿がヨーロッパでも愛されていて、ヨーロッパ各地に移入され、多くの公園で飼育されています。(ウィキペディア参照)

ワジョンキ公園(Łazienki Królewskie)で見たオシドリも多分、移入されて飼育されているオシドリ(Pato mandarín) だと考えられます。

-オシドリ(学名: Aix galericulata / 西:Pato mandarín)

「おしどり夫婦」という日本語を思わず思い出しました(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

キツネやリスも住む公園

広い公園内をのんびりと楽しんでいると、時々リス達の姿を見かけました。しばらく観察していると、しきりと穴を掘って木の実を掘り出したかと思うと、また別の場所に穴を掘って木の実を隠しています。そのひたむきな姿がとても可愛かったですね。子供たちが木の実をリスに直接渡そうとしている光景もほのぼのとしたものでした。

小柄で茶色のヨーロッパリス(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

また、いきなりキツネが建物の陰から出てきて目の前を通り過ぎました。とにかく、公園内の鳥も動物も周りの人間の存在を全く意に介さないようで、自然に公園内でそれぞれの活動をしているのは驚きでした。

周りの人達など気にも留めずのんびりと通り過ぎていくキツネ(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

公園内で見れた他の鳥たち

他にも池に居た白鳥 (Cisne vulgar)、ヨーロッパコマドリ(Petirrojo)、カケス(Arrendajo)やヒメアカゲラ (Pico mediano)等も見ることができましたよ。

-ヨーロッパコマドリ(学名: Erithacus rubecula/ 西:Petirrojo)

ヨーロッパコマドリ(Petirrojo)はスペインでもよく見かける可愛い鳥です(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

-コブハクチョウ(学名: Cygnus olor / 西:Cisne vulgar)

はやりヨーロッパの公園には白鳥がつきものですね(笑)(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

-カケス(学名: Garrulus glandarius / 西:Arrendajo)

カケスのカップルが求愛中のようでした(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

-ヒメアカゲラ(学名: Leiopicus medius / 西:Pico mediano)

初めてヒメアカゲラ(Pico mediano)を見ました!可愛いですね(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

もし、ワルシャワに訪れる機会があれば、是非ワジョンキ公園(Łazienki Królewskie)をゆっくり逍遥されることをお薦めします。

春の芽吹きで緑の優しい色が心も身体も癒してくれました(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

ちょっとスペイン語 -37-  (Dar calabazas a 人)1.[異性を]ふる 2. 落第させる、試験に落ちる

ここでは、ちょっとしたスペイン語の言い回しや、ことわざ、話し言葉など、辞書には載っていない単語も含めて紹介していきます。スペイン語を勉強している方には言葉の幅が広がるお手伝いができればいいなと、スペイン語には興味ないという方には雑学として楽しんでいただければいいなと思っています。

Dar calabazas a 人-1.[異性を]ふる 2. 落第させる試験に落ちる

今回は、同じ表現を使いながら、全く異なる意味を持つ言い回しを紹介します。両方の意味とも、スペインの話し言葉ではよく使われる言葉です。

 (Dar calabazas a 人)1.[異性を]ふる 2. 落第させる試験に落ちる

まずは1つ目の意味から。

¡Buaaa! ¡Estoy muy triste!

うわーん!悲しいよー!

¿Qué te ha pasado, María?

マリア、どうしたの?

Es que me ha dado calabazas…

振られちゃった……。

¿Quién? ¿Pedro?

えっ、誰に振られたの?ペドロ?

Sí. Pensaba que le gustaba a Pedro… pero no…

そう、ペドロも私のことが好きだとばっかり思っていたのに……。

¡Pobrecita!

かわいそうに!

この場合、主語はペドロで、Pedro da calabazas a mi となります。

次は2つ目の意味。

¿Qué tal fue el examen de la semana pasada?

先週の試験どうだった?

¡El profesor me dio calabazas! ¡Después de tanto estudiar!

不合格だった!あんなに勉強したのに!

この場合、主語は先生(El profesor)です。

どちらにしても、直訳すると「誰かが誰かにカボチャの実をやる」という意味です。面白い表現ですよね。カボチャの実を誰かにやることが、その人を振ることだったり、不合格にしたり落第したりすることを意味するなんて!この表現を使ってよくスペイン人は冗談を言ったりもします。

¿Qué tal este curso?

今年の勉強は上手くいってる?

Sí, este año hay buena cosecha de calabazas.

うん、今年はカボチャが豊作だよ。(不合格の教科が一杯)

この言い回しがどこから来たのかネット検索してみると、古代ギリシャから来た表現だとか。というのも、古代ギリシャでは、カボチャの実は、性欲を鎮めるか鈍らせる物質アナフロディジアック(Antiafrodisiaco)と考えられていたので、自分が好きではない人から言い寄られたり、告白されたりすると、カボチャの実を渡してその気がないことを相手に伝えていたということでした。

落第させたり、不合格にする意味でのカボチャの由来は見つかりませんでした。

どちらにしても、面白い表現なのでぜひ使ってみてくださいね。

娼婦とピクニック⁈ サラマンカの楽しいお祭り「ルーネス・デ・アグアス(Lunes de Aguas)」

今日(2025年4月28日)はサラマンカの人にとって特別な日。ルーネス・デ・アグアス(Lunes de Aguas)と呼ばれるお祭りの日です。このお祭り、現代に生きる私達にはビックリするようなルーツを持つお祭りですが、地元の人達は自分たちの伝統文化に誇りをもって楽しんでいるようです。

サラマンカ大聖堂(写真: 筆者撮影)

イースターの後のお祭り

キリスト教徒の国スペインでは、他のキリスト教徒の国々と同様に復活祭を祝う様々なお祭りがあります。サラマンカのルーネス・デ・アグアス(Lunes de Aguas)は復活祭の月曜日の次の月曜日に祝われ、一般的には復活祭の翌日の月曜日にお祭りが多いので、ひと呼吸おいてこのお祭りが行われることも特徴の一つかもしれません。

というのも、ひと呼吸おかなければならない理由がこのお祭りの起源にありそうです。

聖週間中には聖母マリアやキリストの受難等を表した山車が街を練り歩きます(写真: 筆者撮影)

フェリペ王子の結婚式

1543年11月12日、16歳だった王子フェリペ2世とポルトガルのマリア・マヌエラ王女はサラマンカの街で結婚することになっていました。サラマンカには、1218年にスペイン最古の大学であるサラマンカ大学が設立され、フェリペ王子の結婚式が行われた16世紀にはスペイン国内のみならず、世界中の学生がサラマンカ大学で勉強していました。当時、サラマンカには8千人以上の学生が住んでいたらしく、同じ時期のマドリードの人口が1万1千人だった(ウィキペディア参照)ことを鑑みると、驚くほど多くの学生たちがこの街に住んでいたようです。

サラマンカ大学ファサード(写真: 筆者撮影)

結婚式の祝賀は14日の夜から19日まで行われ、その間街中で王室主催の様々なパーティー、お祭り、馬上槍試合、伝統的な両陣営によるトーナメントなどが途切れることなく続きました。ところが王室主催以外にも、街中ではこれ幸いと、淫らな酒場や売春宿などでの一般市民や学生たちがお祭り騒ぎで賑わっていました。このどんちゃん騒ぎの様子に、敬虔かつ厳格な若きフェリペ2世は驚愕します。それもそのはず。サラマンカ大学は、知識の殿堂として、またヨーロッパのキリスト教の光として、神学・哲学・法学の研究を進めていたので、サラマンカは厳粛な街というイメージをフェリペ王子は抱いていたのです。ところが、その厳粛な街サラマンカには別の顔も兼ね備えていました。それは、ありとあらゆる娯楽を無制限にそして無秩序に楽しめるというものでした。

フェリペ2世の勅令

このことがよっぽど衝撃的なものだったのか、フィリッペ2世は、四旬節と聖週間の間、娼婦たちはサラマンカを離れ、対岸にある売春宿に閉じこもらなければならないという勅令を出します。つまり、娼婦たちは1ヶ月以上サラマンカの街から追い出され、学生等の男性たちは復活祭の月曜日の次の月曜日(ルーネス・デ・アグアス)まではジッと我慢していなければならなかったという訳です。そして、ルーネス・デ・アグアス(Lunes de Aguas)の月曜日には、堰を切ったように娼婦たちはボートで街に戻りました。

貝の家の窓(写真: 筆者撮影)

ルーネス・デ・アグアス(Lunes de Aguas)のお祭りに欠かせないオルナッソ(Hornazo)

彼女たちの帰還は、学生たちの間でお祭り騒ぎとなり、彼女たちを歓迎するために川までやってきて、酒を飲んだり、サラマンカの郷土料理であるチョリソやスペインソーセージ、ハムやゆで卵を詰めた人気のオルナッソ(Hornazo)と呼ばれる食べ物を振る舞い、彼女たちの帰還を大いに祝い楽しんだそうです。

これが、ルーネス・デ・アグアス(Lunes de Aguas)のお祭りのルーツです。

復活祭の翌日の月曜日はまだキリスト復活を祝う宗教的な意味合いの強いお祭りが多かった中、このような宗教的道徳に反するお祭りを祝うにはフィリッペ2世も躊躇したのでしょう。きっと、内心ではこのような破廉恥なお祭りは禁止してしまいたかったというのがフィリッペ2世の本音だったのでしょうが、流石にこれほど熱狂的に祝い、民衆から支持されていたお祭りを完全に禁止することは統治をする上でも得策ではないと考えたに違いありません。そのため、せめて復活祭からもう少し時間が経った次の月曜日までのひと呼吸をおくことになったのでしょう。

オルナッソ(Hornazo)(写真: 筆者撮影)

現在のルーネス・デ・アグアス(Lunes de Aguas)のお祭り

流石に、21世紀の今日ではサラマンカの街から追い出される娼婦もいませんし、娼婦たちとどんちゃん騒ぎをする男性も居ませんが、お祭りは無形文化財としても指定され、復活祭の月曜日の次の月曜日(ルーネス・デ・アグアス)の午後は、サラマンカ中の市民が思い思いにオルナッソ(Hornazo)と呼ばれるチョリソやスペインソーセージ、ハムやゆで卵を詰めたパイ持参で川沿いにてピクニックをしてお祝いしています。生憎お天気に恵まれない時は、ピクニックではなく友人や家族の家に集まってオルナッソ(Hornazo)を食べます。

オルナッソ(Hornazo)の中身は具が詰まっていて食べ応え十分です(写真: 筆者撮影)

ルーネス・デ・アグアス(Lunes de Aguas)の午後は、学校は勿論のこと様々な職場もお店も全て休みとなり、街中には人っ子一人いません。サラマンカの人達は皆、トルメス川沿いの原っぱでオルナッソ(Hornazo)を囲んで家族や友人たちとのピクニックを楽しんでいるからです。

大停電(Apagón)でもなんのその!

偶然、今日はスペイン中で大停電(Apagón)が起きたのですが、幸いここサラマンカはスペインの中でも電気の復旧が早く、約3時間半程の停電ですみました。でも、もともと午後はサラマンカ中のお店も役所も閉まってしまうルーネス・デ・アグアス(Lunes de Aguas)の日だったので、あまり大きな被害はなかったようです。その上、サラマンカのほとんどの市民は、お天気に恵まれたこともあり、トルメス川沿いでオルナッソ(Hornazo)を囲んでピクニックをしていたので、あまり電気を恋しく思うこともなかったとか。今年は特に大勢のサラマンカの人達が川沿いで楽しんだようです。

皆さんも来年の復活祭の月曜日の次の月曜日にサラマンカにいらっしゃる際は、是非オルナッソ(Hornazo)持参でトルメス川沿いへ行ってピクニックを楽しんでみませんか。

スペインでバードウォッチング!-種類別 スペインの野鳥 日本語名(カワセミ科)

ここでは、スペインに生息する野鳥の名前を、種類別に集めてみました。スペイン語名をクリックしてもらうと、スペイン鳥学会のホームページに飛びます。残念ながら日本語版はありませんが、英語での鳥の名前は出ています。スペインで野鳥観察されるとき、またはスペインの旅の途中で見かけた鳥のスペイン語名を知りたいときに、少しでもお役に立てれば幸いです。

カワセミ(学名:Alcedo atthis / 西 : Martín pescador)/(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

Martin pescador = カワセミ科

スペイン語日本語ラテン語//常駐/偶然
Martin pescadorカワセミAlcedo atthis常駐

スペインでバードウォッチング!-種類別 スペインの野鳥 日本語名(ヤツガシラ科)

ここでは、スペインに生息する野鳥の名前を、種類別に集めてみました。スペイン語名をクリックしてもらうと、スペイン鳥学会のホームページに飛びます。残念ながら日本語版はありませんが、英語での鳥の名前は出ています。スペインで野鳥観察されるとき、またはスペインの旅の途中で見かけた鳥のスペイン語名を知りたいときに、少しでもお役に立てれば幸いです。

ヤツガシラ(Abubilla)/ (写真: アルベルト・F・メダルデ)

Abubilla = ヤツガシラ科

スペイン語日本語ラテン語//常駐/偶然
AbubillaヤツガシラUpupa epops常駐

スペインはタコ料理もいろいろ!タコとジャガイモの煮物(Pulpo con patatas)

スペインは西洋諸国の中でも珍しくタコを食べる習慣のある国。特にポルトガルの北にあるガリシア州ではタコ料理は有名です。プルポ・ア・フェイラ(Pulpo a feira)と言ったり、プルポ・ア・ラ・ガジェガ(Pulpo a la gallega)とも呼ばれているガリシアを代表する伝統料理です。日本でもスペイン料理レストラン等ではよくある料理の一つだと思います。

今回のタコ料理は、バスク地方出身のお魚屋さんから教えてもらったバスク家庭料理です。簡単でとっても美味しいので是非お試しください。

スペインの家庭料理は、美味しいレシピが一杯!(写真: 筆者撮影)

材料:4人分

・生ダコ             800g ~1kg

・ジャガイモ           5~6個(中)

・玉ねぎ             1/2個(中)

・トマト             1 個  

・ニンニク            1片

・塩               適宜

・スペインパプリカ        小匙1~2杯

・オリーブ油           大さじ3~4杯

・イタリアンパセリ        適宜

作り方

まず最初に、ソフリート(sofrito)と呼ばれる香味ベースを作る。このタコ料理に使われるソフリートは、玉ねぎ・トマト・ニンニクが使われる。

1.玉ねぎはみじん切りにして、鍋に多めのオリーブ油(大さじ3~4杯)で、中弱火でゆっくりと気長に炒める。

玉ねぎがひたひたに浸るくらいのオリーブ油をいれます(写真: 筆者撮影)

2.玉ねぎをよく炒めたら、皮をむいてみじん切りにしたトマトとニンニクのみじん切りを入れて、更によーく気長に炒める

とにかく焦らず気長にゆっくりとソフリートを作ります(写真: 筆者撮影)

3.15分~20分位してソフリート(sofrito)ができたら、一口大に切った生ダコを入れてよく混ぜ、蓋をして中弱火で煮る。

生ダコはこんな感じ(写真: 筆者撮影)
タコは縮むので、少し大きめに切った方が良いかも(写真: 筆者撮影)

4.タコが柔らかくなり始めたら(15~20分位)、ジャガイモをペティナイフ等で割りながら一口大にしたものを3の鍋に入れる。少し塩とスペインパプリカを入れて混ぜ、更に15~20分位中火で煮る。

こんな感じで、ジャガイモはペティナイフ等で割ります(写真: 筆者撮影)

5.ジャガイモが柔らかくなったら味をみて整え、みじん切りにしたイタリアンパセリを加え、一煮立ちしたら火を消して出来上がり!

もう少し煮込んだほうがよいかな(写真: 筆者撮影)

スペインの家庭では、ジャガイモをフォークの背で潰して、たっぷりかけたソースに絡ませて食べるのが普通です。確かに、食感も異なり、ソースの絡み具合が絶妙で、グレードアップされます。是非お試し下さい!

ジャガイモをフォークの背で潰した状態(写真: 筆者撮影)