ロマネスクへのいざない (7)- カスティーリャ・イ・レオン州-ブルゴス県 (4)– サン・ペドロ・デ・テハダ教会 (Iglesia de San Pedro de Tejada)

ロマネスク様式の絶頂期に造られたサン・ペドロ・デ・テハダ教会 カスティージャ・イ・レオン州のブルゴスから北へ車で約1時間程に行くと、スペインで2番目に長く大きな河川であるエブロ川流域の村にこのサン・ペドロ・デ・テハダ教会はある。静寂に包まれているサン・ペドロ・デ・テハダ教会は、周囲の景色と溶け込んでまるで今にも修道士たちが教会から出てくるような錯覚に陥らせてくれる。 車は教会の下方にある村に停めてなだらかな坂を上っていくと、すらりとしたサン・ペドロ・デ・テハダ教会の姿が現れる。ロマネスク様式によくみられるずんぐりとした雰囲気はない。伸びた鐘楼部分と入口の三角の屋根は神の国を目指しているような印象を与える。 教会の敷地の前にある柵の前で、事前に電話予約していた管理人の方が鍵をもって待っていて下さった。 サン・ペドロ・デ・テハダ教会は、セノビオ(cenobio)と呼ばれる共住苦行者たち(初期修道士たち)が作った修道院を受け継いだものだが、修道院自体は紀元850年まで遡る。現在の教会は12世紀前半に造られ、12世紀といえばロマネスク様式の絶頂期であった。このサン・ペドロ・デ・テハダ教会はこの地方特有のロマネスク様式の特徴を併せ持つ、最も完全で保存状態の良いロマネスク様式の教会の一つだ。他のロマネスク様式の教会によくみられる時代ごとの改修などもなく、12世紀そのままの姿を21世紀に生きる私たちの目の前に現してくれている。ちなみに、原型となった修道院は今は全く存在せず、教会のみが残っている。しかし、この修道院は当時この地方で重要な役割を果たし、サン・ペドロ・デ・テハダ修道院の修道士たちの中から、同じ今のブルゴス県にあるオーニャという町に1011年に設立され19世紀まで続いたたベネディクト会のサン・サルバドール・デ・オーニャ修道院 (Monasterio de San Salvador de Oña)の設立者たちがでたという記録が残っている。 教会の入口(Portada) サン・ペドロ・デ・テハダ教会の入口には、特徴のある刳(く)り型彫刻や飾り持ち送りが見られる。スペイン語ではモディジョン(modillón)またはカネシージョ(canecillo)と呼ばれる8つの飾り持ち送りがあり、左右両側の二つは羽のあるマタイ(Mateo)、マルコ(Marcos)、ルカ(Lucas)、ヨハネ(Juan)の4人の姿が表してある。この4人は、福音書を書いた4人である。そして、残りの四つはテトラモルフ(tetramorfo)と呼ばれるこの4人の福音記者を象徴する形象が施してある。福音記者4人とテトラモルフによる福音記者4人の形象が同じところにあるのは珍しいということだった。ちなみに、左から鷲の姿をしたヨハネ、雄牛の姿をしたルカ、獅子の姿をしたマルコ、人間の姿をしたマタイである。飾り持ち送りの真ん中には、上昇するキリストの姿が見て取れ、キリストの昇天を表している。 8つの飾り持ち送りの下には左右両側に刳(く)り型彫刻が見えるが、キリストの12人の弟子が6名づつ彫られている。幾人かの弟子は両手を上に広げた姿をしており、これは「オランス(=祈る人)」の姿勢と呼ばれるものであり、ここでは弟子たちがキリストに対する期待、望みなどを表しているのだという。 更に、両端の刳(く)り型彫刻の下には、キリストの「最後の晩餐」と「人間の上にライオンが押し乗っている姿」が表してあるが、これについては未だにその解釈ははっきりされていないとのことだった。 石材と飾り持ち送りのモチーフ サン・ペドロ・デ・テハダ教会に使われた石は、下層部分は石灰岩(piedra de caliza)で上層部は凝灰岩(piedra de toba)である。凝灰岩は石材としては軽いもので、まだ建築技術が発達していなかったロマネスク時代において負担を軽くするためにこの石材が選ばれたという。 さて、サン・ペドロ・デ・テハダ教会の入口だけではなく、教会の側面部分や鐘楼部分にも飾り持ち送りが施されている。その一つ一つを見ていくと、笑いを誘うものや不思議なもの、楽器を弾く人やもしかしたらこの教会に携わったのかもしれないと想像させられる石工の姿、ユニークな動物たちや扇情的な人物像等々、実に様々な飾り持ち送りが施されていて、見ていて飽きない。 サン・ペドロ・デ・テハダ教会の内部 管理人の方に案内され、教会の内部へと足を入れると想像以上に広く高く感じた。塔部分は17メートルあるということで、現代の建物でいえば5階建てというところだろうか。 サン・ペドロ・デ・テハダ教会は唯一の身廊が3つの部分を成していて、翼のない公差部(crucero sin alas)の上に二層からなる塔が建造され、突き当りに祭壇がある半円形の後陣(ábs … 続きを読む ロマネスクへのいざない (7)- カスティーリャ・イ・レオン州-ブルゴス県 (4)– サン・ペドロ・デ・テハダ教会 (Iglesia de San Pedro de Tejada)