ガリシア州のポンテべドラ県にあるバイヨーナは、大西洋に面する港町。この町は人口1万2千人(2018年統計)ほどですが、夏にはスペイン国中から避暑に来る人達でにぎわいます。海辺の散歩道を歩くと、魚介類満載のレストランやバル、観光客用のお店、お洒落なマリンウエアのお店などが並んでいて、ぶらぶら散歩するだけでも楽しい町です。
この町は、現在パラドール(国立ホテル/4つ星)として使われているモンテレアル城またはバイヨーナ城で有名です。この大西洋に突き出したモンテレアル半島に、12世紀から16世紀にかけて要塞として建設されました。16世紀から17世紀にかけて作られた周囲約2㎞にわたる城壁に沿って遊歩道が作られていて、外洋からの風に当たりながら散歩するのはとても気持ちいいものです。特に私が訪ねた2019年9月上旬は、まだ夏のバカンスを楽しむ人たちがいるものの、7月8月に比べグッと観光客も減り落ち着いた雰囲気。それに日差しも真夏のようには強くなく、でも海風は心地よい、という丁度良い季節です。
このバイヨーナ、実は歴史的には重要な町で、欧州の中で一番最初に新大陸発見ニュースがもたらされた町なのです。1493年3月1日、コロンブス第1回目航海の際、マルティン・アロンソ・ピンソンに率いられたピンタ号がスペインへの帰還で最初に寄港した港、それがバイヨーナ港でした。
その歴史的出来事を記念し、毎年3月1日には「ラ・アリバーダ」(La Arribada/入港・到着という意味)と呼ばれる中世のお祭りが催されるとか。
ちなみに、バイヨーナとアンダルシア地方ウエルバ県にある町パロス・デ・ラ・フロンテーラ(Palos de la Frontera)は姉妹都市ですが、これは、パロス・デ・ラ・フロンテーラがコロンブス第1回目航海の際、1492年8月3日にスペインを出港した時の町だったからです。
さて、バイヨーナは魚介類料理がおいしいことで有名なので、地元の人がお薦めのレストランに行きました。「カサ・リタ」(Casa Rita)というレストラン。決して安いレストランではないけれど、キビキビとしたプロのウエイターとそのサービスは確かなものでした。そして2時間以上かけてのんびりと食事をするこの至福の時間は、今どきの日本の食べ物屋さんで2時間限定です、などど時間を気にしながら食べるところでは味わえない、充実した食事の時間となりました。
サンブリーニャ(Zamburiña)と呼ばれるホタテ貝に似た二枚貝のこの貝、今まで白っぽい色のサンブリーニャ貝しか食べたことがなかったけれど、ここ「カサ・リタ」で出たのはこの辺り特産のサンブリーニャで、黒っぽい貝でした。普通のに比べて一回り位大きく、身がしまって弾力があって食べ応えがあり、味も濃厚でとても美味しかったです。オリーブオイルを好みでかけても美味しく、貝独自の味を消すことなく貝そのものの味を引き立てるのに相性の良いアルベキーナ(arbequina)というオリーブの種類のオイルを選んであったのも納得でした。
もちろん食事と一緒に飲むのは地元ガリシア州の白ワイン、リアス・バイシャス(Rías Baixas)のワイナリー、テラス・ガウダ(Terras Gauda)。その上質な果実味の飲みやすいワインは私もお気に入りのひとつ。日本で地産地消を奨励していますが、ここガリシアに来たら地元でとれた魚介類と地元で作る白ワインのコンビネーションに勝るものはないでしょう。
さて、バイヨーナから約5,5㎞ほど海沿いの遊歩道に沿って歩いていくと、1時間ちょっとでアメリカ海岸(Playa América)と呼ばれるビーチに着きます。アメリカ大陸で一旗揚げて帰ってきたスペイン人の人たちが多く住み始めたことがその名の由来とか。私が最初に訪れた25年前は、本当に真夏でもビーチにいる人は少なかったのですが、今では、場所を探すのにも苦労するほど人気のビーチになっています。大西洋は地中海とは比べ物にならないほど海水が冷たいにもかかわらず、9月だというのにかなりの人が泳いでいました。
サンダルを脱いで、チョットひんやりする海水に足を入れながらビーチが終わるパンション(Panxon)の町まで散歩してみるのも一興。私以外にはアジア人に出会うこともなく、海に夕日が沈む時間(ちょうど9時ぐらいでした)までゆっくり過ごしました。パンションに着いて、海に面したバルに立ち寄り、ちょっと白ワインとマテ貝(navajas)をたのみバルにいる他のスペインの人たちを見ると、みなそれぞれが楽しそうに友人や恋人、または家族とおしゃべりしながらビールやワインを飲んでいます。ああ、これがスペイン的な人生の楽しみ方だなと実感しました。
どこへ行っても観光客だらけ、特にスペイン人以外の観光客が多いマドリッドやバルセロナに比べ、ここバイヨーナやパンションの町はほとんどが地元の人かスペイン人観光客という町なので、遠い異国に来たという気分に浸れるかも。なにより、スペイン的な人生の楽しみ方をあなたも味わえることでしょう。
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