2000年の時を超えてローマ劇場で行われるメリダ古典演劇祭(Festival Internacional de Teatro Clásico de Mérida)

もう、20年以上も前にメリダ(Mérida)を最初に訪れた際、ローマ劇場や円形競技場を観光しました。ローマ時代の建造物の中に足を踏み入れた初体験だったので、とても感動したことを今でも覚えています。まるでタイムスリップしたかのように2000年以上の時を一気に超え、ローマ時代の人たちが実際に居たところに私も居るんだという、とても不思議な気持ちで一杯になりました。そして、その時友人が「毎年夏になるとここで演劇祭が行われていて、誰でも観に来れるんだよ」と説明してくれたました。その時から、”あー、一度でいいから私もこのローマ劇場でローマ時代の人たちのように劇を楽しんでみたいなぁ・・・”と思っていました。そして、やっとその願いが叶いました!!

ローマ劇場&舞台 (写真:筆者撮影)

メリダ古典演劇祭 (Festival Internacional de Teatro Clásico de Mérida)

長い間廃墟となっていたメリダのローマ劇場は、1910年から本格的な発掘が進められ1933年6月に、実にローマ時代以来初めての演劇が開催されました。しかし、スペイン市民戦争 (1936~1939) の前後を含め約20年近くこのローマ劇場で演劇が催されることはありませんでした。その後、1954年から「メリダ古典演劇祭 (Festival Internacional de Teatro Clásico de Mérida)」が開催されるようになり、今年は第67回目のフェスティバルが7月から8月末まで約一ヶ月にわたって催されました。現在は演劇だけではなく、様々なコンサートが開かれ、また映画も上映されています。今年は去年に続きコロナ下での開催でしたが、多少の制限はあったものの多くの人がこのフェスティバルを堪能することができました。

ローマ劇場 観劇席への入口外観(写真:筆者撮影)

私は初めての観劇となりましたが、毎年必ず観に行く常連さんも多いようです。メリダの夏は、日中は40度前後まで気温が上がるので心配していましたが、開演時間が22時45分と日本人の感覚ではかなり遅いこともあり、暑さも感じず気持ちよく観劇できました。作品は全てスペイン語なので、全部を理解するにはかなり難しいとは思いますが、大体のあら筋を下調べしておけば後はローマ劇場の雰囲気を十分楽しむことができます。今回私が観た「愛の市場(Mercado de amores)」は、紀元前約200年の劇作家プラウトゥスの喜劇でした。YouTubeで劇が終わって役者達が挨拶する場面が出ています。雰囲気を知りたい方はどうぞ。

Final de “Mercado de amores” Festival internacional teatro clásico de Mérida. Julio 2021 – YouTube

ちなみに、主人公のパンフィロ(Pánfilo)の名前は、ギリシャ語では「全てを愛する者、誰でも好きになる人」という意味があるそうです。そしてスペイン語で パンフィロ(Pánfilo)は、「無気力な(人)、のろま(な)、お人好し(の)」という意味があり、面白いなと思いました。

ローマ劇場 メインエントランスを入るとトンネルが !(写真:筆者撮影)

メリダのローマ劇場について

さて、このローマ劇場は、ローマ時代はその植民都市として「エメリタ・アウグスタ」と呼ばれた現在のメリダに、紀元前16年から紀元前15年にかけてアウグストゥス帝の娘婿アグリッパ将軍の後援により築かれました。建設当初の観客収容人数は約6千人で、半円形の階段席は、花崗岩で覆われたローマンコンクリート(古代コンクリートとも呼ばれる)で造られています。現在の観客収容人数は3千人です。

ギリシャ劇場と同じように丘の傾斜を上手く利用した抜群の音響効果で、舞台から観客席まで生の声が鮮明に聞き取れます。既にローマ時代には数回の増築工事が行われ、ローマ時代の人たちの娯楽の場として活躍しましたが、その後、演劇は不道徳なものと考えるキリスト教の影響が強い時代へと移ると、4世紀頃にはローマ劇場は打ち捨てられていきました。そして1500年以上の年月は、劇場を土の下へ埋めてしまったのです。発掘が始まる前までは、 ローマンコンクリートで出来ている観客席のみが地上に現れていたそうです。

ウィキペディアには、1867年の発掘並びに再建前の写真がでています。残存していた観客席がまるで椅子のようだったので「七つの椅子( Las Siete Sillas )」と呼ばれていたそうです。現在の様子とはかなり異なることに驚かされます。

「七つの椅子(Las Siete Sillas)」Wikipedia Domain

そして前述したように、 1910年から本格的な発掘が進められ全容が現れました。実に発掘するため地下9メートルまで掘ったという記録が残っています。地中深く埋まってしまいすっかり忘れられてしまったローマ劇場の真上に、ジャガイモ畑があったり、闘牛場として使っていた時期もあったとか。

ローマ劇場 観劇席の入口から舞台を見る(写真:筆者撮影)

もし、7月から8月にかけてスペインを訪れるなら、旅のルートにこの2000年以上も前に建築されたローマ劇場で行われる 「メリダ古典演劇祭 (Festival Internacional de Teatro Clásico de Mérida)」 を加えて、ローマ時代の人たちのようにローマ劇場での演劇やコンサート等を是非楽しんでみてください。きっと、観光のみでは味わえない旅の思い出になること間違いなしです!

情報

・残念ながらスペイン語のみのサイトです。

Festival Internacional de Teatro Clásico de Mérida – (festivaldemerida.es)

・ スペイン観光公式サイトが日本語で「メリダ古典演劇祭」を紹介しています。

メリダ古典演劇祭。Mérida | spain.info 日本語

・ ローマ劇場について。英語版もあります。


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