修道院のシスターが作る「SUSHI」が大人気!!

スペイン各地にある修道院のシスター達が作って販売する食べ物は、お菓子類やリキュール類、ジャム類やチョコレートなど色々ありますが、今回は、なんとお寿司のテイクアウトを始めたグラナダの跣足(せんそく)カルメル修道院(Carmelitas descalzos)を紹介します。

修道院生活を維持するために

日本でも北海道にあるトラピスト修道院で作られているトラピストバターやクッキーなどは有名ですが、ソフトクリームも売っていて人気だとか。添加物やトランス脂肪酸等が入っていない安心・安全材料を使って作られているお菓子や食べ物っていうイメージが強いですよね。

こちらスペインでも、修道院のシスター達が作るお菓子は昔から自然素材の材料や修道院の中で栽培している果物などを使ってありとても人気があります。観光などで訪れた修道院に売店があると私もつい覗いてお土産や自宅用に買っています。スペイン観光にいらして各地の修道院のお菓子をお土産に買われた経験がある方もいらっしゃることでしょう。

スペインの修道院で作られる食べ物は主にお菓子類ですが、スペインでは11月1日の諸聖人の日(Día de Todos los Santos)頃からクリスマス、2月のカーニバル、そして3月から4月にかかるイースターの頃まで約半年間はそれぞれの祝日に合わせたお菓子を食べる習慣があります。その他の時期は確かにクッキーなどを食べる機会はグッと減ってしまいます。夏の間はやはりアイスクリームをよく食べますし、毎週末に家族で集まってお昼ご飯を食べた後のデザートには、小さなニミケーキを買ってきて食べることが多いようです。

今回話題になっているグラナダの修道院は500年という長い歴史があり、その間シスター達はその土地の伝統的なお菓子を作ってきました。ところが修道院生活を維持するために伝統的なお菓子の販売だけでは経済的にままならなくなってきていたため、ここ数年スペインで大人気の日本の「寿司」をテイクアウトで販売するようになったとのことです。時代の要請にこたえる形で伝統を守るだけではなく柔軟に時代への適応を図っている点は素晴らしいことです。スペインの新聞でも、グラナダの修道院で隠遁生活を送る修道女が作る「祝福された」寿司を食べることができますよ、と記事になって紹介されています。

修道院内に吹く新しい風

現在7名のシスターが修道院内に暮らしていますが、そのうち5人はフィリピンから来た比較的若いシスターです。そのフィリピンの若いシスター達が修道院存続のため、知恵を出し合って伝統的なお菓子だけではなく新しい味を提供することにしました。

跣足カルメル修道院は、修道院の中から出ず禁域生活を送っているシスター達の修道院です。500年間そして今も修道院のお菓子を買いたいグラナダの人達が修道院の入口へ来てベルを鳴らし、格子窓の向こうにいるシスターが「Ave María Purísima(アベ・マリア・プリッシマ=至聖なるマリア様)」と問いかけ「Sin pecado concebida(シン・ぺカード・コンセビーダ=無原罪)」と訪問者が答えると格子窓が少し開くようになっています。これは、罪なくして宿られた最も清らかなマリア様という意味のスペイン語を二つに区切って合言葉の一種として使われているもので、スペイン中の修道院で共通な合言葉です。

ところが、今回はテイクアウトができるように電話応対という現代的な方法も加えたところ、注文の電話が殺到したそうです。お陰で、今では何とか修道院生活を維持することができるようになったとのこと。スペインの修道院に若くて新しい風が吹いたと言えそうです。

Sushi だけじゃない!

フィリピンから来たシスター達は、最初はフィリピン料理の麺類やソータンホン(=sotanghon)、スパイシーなスープ、エキゾチックなマンゴーとパッションフルーツのスムージーなどを作っていましたが、お寿司も加えることにしたそうです。すると、このお寿司が爆発的な人気となったというわけです。

驚くことに30種類ものメニューがあり、まるでレストランのように修道院の売店の入口には写真入りのメニューが張り出してあります。残念ながら私はグラナダには住んでいないので直接見たことはありませんが、下の記事の中の動画で見ることができますのでご覧ください。

https://www.ideal.es/granada/sushi-famoso-espana-monjas-carmelitas-granada-20231030111748-nt.html

それにしても、昨今の和食-特に寿司-の人気には驚かされます。そして、日本では見たこともないようなカラフルな巻き寿司や日本では使わないような食材を使ったヌーベルキュイジーヌ (=新しい料理)がスペインで花開いている感じです。逆に本場日本で一般的な巻き寿司を食べたら、地味で種類が少ないと感じてしまうスペイン人も多いんじゃないかと心配してしまうほどです。(笑)

遠く離れたスペインで500年も続いている修道院の財政再建に一役買っている「SUSHI」、考えてみれば面白いですね。

写真: ウィキペディアドメイン

参考

・今回の内容は、スペインの様々なメディアが取り上げているニュースを基に書いたものです。興味のある方はスペイン語ですがこちらの記事も読まれてください。写真や動画もあるので分かりやすいと思います。

こちらは、修道院長へのインタビューやシスター達がお寿司を作るビデオを見ることができます。

https://www.ideal.es/granada/sushi-famoso-espana-monjas-carmelitas-granada-20231030111748-nt.html

4番目に大きな通信社であるスペインのEFE通信社のデジタル新聞でも取り上げられています。

https://www.elperiodico.com/es/cata-mayor/actualidad-gastronomica/20231102/monjas-clausura-carmelitas-granada-sushi-94037639

https://www.granadahoy.com/granada/monjas-clausura-Granada-encargo-receta-celestial_0_1843617036.html

https://www.lavanguardia.com/comer/al-dia/20231031/9340437/monjas-clausura-sushi-encargo-receta-celestial-agenciaslv20231030.html

*アイキャッチの写真はウィキペディアドメイン写真です。