新ローマ教皇選出!カトリックの国スペインの反応は⁈

第267代ローマ教皇レオ14世

去る5月8日に、キリスト教カトリック教会の新しいトップがコンクラーベ(Cónclave)によって選出され第267代のローマ教皇となりました。初めてのアメリカ合衆国出身の教皇で、ペルーの国籍も持っているとのこと。司教になる前から宣教師として長年ペルーで活動したため、南米の信者たちからも慕われているようです。実際、スペイン語でのスピーチで、長年寄り添ってきたペルーのチクラヨの人達へのメッセージもありました。

スペインでの反応

スペインでは、新教皇が選出されるとすぐニュースとなり、アメリカ合衆国出身でレオ14世の親がスペイン系にルーツを持っているということも強調されていました。

5月8日のスペインの新聞「ABC」では、「ロベール・プレヴォスト氏とはどんな人物か。スペインとの関係、両親と年齢(Quién es Robert Prevost, el nuevo Papa León XIV: su relación con España, sus padres y su edad)(筆者訳)」という見出しで、レオ14世の母方の祖先がスペイン人だったと記載されていました。(参照: https://www.abc.es/sociedad/robert-prevost-misionero-chicago-opciones-elegido-papa-20250508111416-nt.html?ref=https%3A%2F%2Fwww.google.com%2F

教皇制は、キリスト教の勃興と共に誕生し、様々な局面を迎えながらも2000年以上にも亘り存在し続けているヨーロッパで最も古い制度で、世界でも最も古い制度の一つです。世界中の隅々にまで教会があり、その信者数たるや13億人を数えるので、中国やインドの人口がそれぞれ約14億人ということを鑑みると、キリスト教カトリックを「一つの国」と考えるとかなり大きな国になるということです。そのトップの選出に世界中が注目したのも納得ですよね。日本でも教皇の選出方法コンクラーベ(Cónclave)についての報道等も多くみられました。

連日のニュース

さて、新教皇誕生から1週間近く経ちますが、スペインでは連日新教皇のニュースが流れてきます。

昨日(5月12日)のスペインの新聞「20 minutos」では、「新教皇レオ14世、バチカンから生中継。教皇はバチカンのメディアに「平和のためのコミュニケーションの道」を選ぶよう呼びかける(Nuevo Papa León XIV, en directo | El Papa pide a los medios en el Vaticano que elijan “el camino de la comunicación a favor de la paz”)(筆者訳)」という見出しの記事を掲載して、刻一刻と新教皇の行動を伝えています。(参照: https://www.20minutos.es/internacional/directo-robert-prevost-nuevo-papa-leon-xiv-ultima-hora-vaticano-5708614/)

本日(5月13日)のスペイン新聞「El País」には、「レオ14世、トランプ大統領の大量強制送還作戦に立ち向かうローマ法王(León XIV, un papa para hacer frente a la campaña de deportaciones masivas de Trump)(筆者訳)」という見出しで、社会問題に取り組んだレオ13世から「レオ」という名前を選んだことに言及したうえで、「レオ14世は、社会正義へのコミットメントを明らかにした」と締めくくられていました。(参照: https://elpais.com/us/migracion/2025-05-13/leon-xiv-un-papa-para-hacer-frente-a-la-campana-de-deportaciones-masivas-de-trump.html)

教皇レオ13世は、19世紀に、歴史的な回勅『レールム・ノヴァールム(Rerum novarum)』と呼ばれる新教皇の手紙によって、全世界のカトリック教会の司教にむけて、第一次産業革命後に問題となっていた貧富の差や経済・福祉における国家の役割について説き、社会問題に取り組んだ画期的な教皇でした。そのため、教皇レオ14世の母国アメリカ合衆国の大統領が何千人もの移民を犯罪者にし、拘留し、追放していることに対して、この新しい教皇が傍観しているはずはないだろうということです。

他にも本日のスペイン新聞「El Mundo」には、「ローマ法王は「真実を伝えたために投獄されたジャーナリスト」の自由を求める(El Papa pide la libertad para “los periodistas encarcelados por contar la verdad”)(筆者訳)」と題する見出しで、「公正で適切な判断を下すことができるのは、十分な情報に基づいた国民だけです」と教皇は強調していることを取り上げています。(参照: ttps://www.elmundo.es/internacional/2025/05/12/6821c689e4d4d8a06c8b45ae.html

このように、新教皇の行動や、政治的意見等がスペインの新聞には連日載せられていて、つくづくキリスト教カトリックのトップであるローマ法王の影響力の強さを感じさせられます。そして、スペイン国民の関心の高さにも驚かされます。と同時に、ヨーロッパ内でウクライナ戦争が勃発したり世界中で戦争や紛争が起きている現在、多くのスペインの人々が心の底から一刻も早い停戦を願い、その平和の願いを世界的にも影響力のある新ローマ法王に託していることが伝わってきます。

番外編 バードウォッチング!-「お手軽バードウォッチング」(ポーランド・首都ワルシャワ)

観察日: 2025年4月13日

スペインではないのですが、番外編としてポーランドでのバードウォッチングについて紹介しています。イースター休暇を利用して友人たちとポーランド旅行に行ってきました。今回はバードウォッチングを中心とした旅行ではなく、初めて訪れるポーランドとして一般的な観光コースを車を借りて回りました。という訳で、街中などを歩いていて出会った鳥たちなので、あくまでもお手軽なバードウォッチングでしかないことを初めにお断りしておきます。

盾と矛を持ってワルシャワ市民を守っているシレンカと呼ばれる人魚の像(写真: 筆者撮影)

ワルシャワ市内で楽しめるバードウォッチング

第二次世界大戦の際、ワルシャワ市内は徹底的に破壊されましたが、残った資料や記録を頼りにワルシャワ旧市街を「壁のひび一本にいたるまで忠実に」復元したそうです。そして、「ワルシャワ旧市街」は「破壊からの復元および維持への人々の営み」が評価された最初の世界遺産となりました。そんなポーランドの人達が戦争からの復興を願って復元した素晴らしい街並みを堪能した後、夏の間、毎日曜日にショパン・コンサートが開かれることで有名なワジョンキ公園(Łazienki Królewskie)に足を延ばしてみました。お目当ては公園の中にある水上宮殿。水に映る宮殿は本当に美しいものでした。

ワジョンキ公園(Łazienki Królewskie)内の水上宮殿(写真: 筆者撮影)

公園の中を散策していると、様々な動物に遭遇しました。そして、予期せぬ様々な鳥たちにも会うこともできました!

ワジョンキ公園(Łazienki Królewskie)の人気者

公園の中を逍遥していると、1本の木の前で子供連れの家族等結構な人数の人達が携帯で写真を撮っているようなので、私も近づいてみることにした。木の上に見事な羽を持つオスのインドクジャク(Pavo real) が居ました。木の上に居るインドクジャク(Pavo real) を目の前で見るのは初めてだったので、新鮮な驚きを感じました。

-インドクジャク(学名: Pavo cristatus / 西:Pavo real)

派手な色がひときわ目立っています(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

人馴れしているこのインドクジャク(Pavo real) は、その後木から飛び降りて公園内をのんびり散歩していました。美しい羽は公園内の人達の目を引き、人気者でした。 

ヨーロッパでは珍しいオシドリ(Pato mandarín)も!

オシドリ(Pato mandarín) は日本では馴染み深い鳥ですが、ヨーロッパではほとんど見ることができない希少な鳥です。その美しい姿がヨーロッパでも愛されていて、ヨーロッパ各地に移入され、多くの公園で飼育されています。(ウィキペディア参照)

ワジョンキ公園(Łazienki Królewskie)で見たオシドリも多分、移入されて飼育されているオシドリ(Pato mandarín) だと考えられます。

-オシドリ(学名: Aix galericulata / 西:Pato mandarín)

「おしどり夫婦」という日本語を思わず思い出しました(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

キツネやリスも住む公園

広い公園内をのんびりと楽しんでいると、時々リス達の姿を見かけました。しばらく観察していると、しきりと穴を掘って木の実を掘り出したかと思うと、また別の場所に穴を掘って木の実を隠しています。そのひたむきな姿がとても可愛かったですね。子供たちが木の実をリスに直接渡そうとしている光景もほのぼのとしたものでした。

小柄で茶色のヨーロッパリス(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

また、いきなりキツネが建物の陰から出てきて目の前を通り過ぎました。とにかく、公園内の鳥も動物も周りの人間の存在を全く意に介さないようで、自然に公園内でそれぞれの活動をしているのは驚きでした。

周りの人達など気にも留めずのんびりと通り過ぎていくキツネ(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

公園内で見れた他の鳥たち

他にも池に居た白鳥 (Cisne vulgar)、ヨーロッパコマドリ(Petirrojo)、カケス(Arrendajo)やヒメアカゲラ (Pico mediano)等も見ることができましたよ。

-ヨーロッパコマドリ(学名: Erithacus rubecula/ 西:Petirrojo)

ヨーロッパコマドリ(Petirrojo)はスペインでもよく見かける可愛い鳥です(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

-コブハクチョウ(学名: Cygnus olor / 西:Cisne vulgar)

はやりヨーロッパの公園には白鳥がつきものですね(笑)(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

-カケス(学名: Garrulus glandarius / 西:Arrendajo)

カケスのカップルが求愛中のようでした(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

-ヒメアカゲラ(学名: Leiopicus medius / 西:Pico mediano)

初めてヒメアカゲラ(Pico mediano)を見ました!可愛いですね(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

もし、ワルシャワに訪れる機会があれば、是非ワジョンキ公園(Łazienki Królewskie)をゆっくり逍遥されることをお薦めします。

春の芽吹きで緑の優しい色が心も身体も癒してくれました(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

ちょっとスペイン語 -37-  (Dar calabazas a 人)1.[異性を]ふる 2. 落第させる、試験に落ちる

ここでは、ちょっとしたスペイン語の言い回しや、ことわざ、話し言葉など、辞書には載っていない単語も含めて紹介していきます。スペイン語を勉強している方には言葉の幅が広がるお手伝いができればいいなと、スペイン語には興味ないという方には雑学として楽しんでいただければいいなと思っています。

Dar calabazas a 人-1.[異性を]ふる 2. 落第させる試験に落ちる

今回は、同じ表現を使いながら、全く異なる意味を持つ言い回しを紹介します。両方の意味とも、スペインの話し言葉ではよく使われる言葉です。

 (Dar calabazas a 人)1.[異性を]ふる 2. 落第させる試験に落ちる

まずは1つ目の意味から。

¡Buaaa! ¡Estoy muy triste!

うわーん!悲しいよー!

¿Qué te ha pasado, María?

マリア、どうしたの?

Es que me ha dado calabazas…

振られちゃった……。

¿Quién? ¿Pedro?

えっ、誰に振られたの?ペドロ?

Sí. Pensaba que le gustaba a Pedro… pero no…

そう、ペドロも私のことが好きだとばっかり思っていたのに……。

¡Pobrecita!

かわいそうに!

この場合、主語はペドロで、Pedro da calabazas a mi となります。

次は2つ目の意味。

¿Qué tal fue el examen de la semana pasada?

先週の試験どうだった?

¡El profesor me dio calabazas! ¡Después de tanto estudiar!

不合格だった!あんなに勉強したのに!

この場合、主語は先生(El profesor)です。

どちらにしても、直訳すると「誰かが誰かにカボチャの実をやる」という意味です。面白い表現ですよね。カボチャの実を誰かにやることが、その人を振ることだったり、不合格にしたり落第したりすることを意味するなんて!この表現を使ってよくスペイン人は冗談を言ったりもします。

¿Qué tal este curso?

今年の勉強は上手くいってる?

Sí, este año hay buena cosecha de calabazas.

うん、今年はカボチャが豊作だよ。(不合格の教科が一杯)

この言い回しがどこから来たのかネット検索してみると、古代ギリシャから来た表現だとか。というのも、古代ギリシャでは、カボチャの実は、性欲を鎮めるか鈍らせる物質アナフロディジアック(Antiafrodisiaco)と考えられていたので、自分が好きではない人から言い寄られたり、告白されたりすると、カボチャの実を渡してその気がないことを相手に伝えていたということでした。

落第させたり、不合格にする意味でのカボチャの由来は見つかりませんでした。

どちらにしても、面白い表現なのでぜひ使ってみてくださいね。

娼婦とピクニック⁈ サラマンカの楽しいお祭り「ルーネス・デ・アグアス(Lunes de Aguas)」

今日(2025年4月28日)はサラマンカの人にとって特別な日。ルーネス・デ・アグアス(Lunes de Aguas)と呼ばれるお祭りの日です。このお祭り、現代に生きる私達にはビックリするようなルーツを持つお祭りですが、地元の人達は自分たちの伝統文化に誇りをもって楽しんでいるようです。

サラマンカ大聖堂(写真: 筆者撮影)

イースターの後のお祭り

キリスト教徒の国スペインでは、他のキリスト教徒の国々と同様に復活祭を祝う様々なお祭りがあります。サラマンカのルーネス・デ・アグアス(Lunes de Aguas)は復活祭の月曜日の次の月曜日に祝われ、一般的には復活祭の翌日の月曜日にお祭りが多いので、ひと呼吸おいてこのお祭りが行われることも特徴の一つかもしれません。

というのも、ひと呼吸おかなければならない理由がこのお祭りの起源にありそうです。

聖週間中には聖母マリアやキリストの受難等を表した山車が街を練り歩きます(写真: 筆者撮影)

フェリペ王子の結婚式

1543年11月12日、16歳だった王子フェリペ2世とポルトガルのマリア・マヌエラ王女はサラマンカの街で結婚することになっていました。サラマンカには、1218年にスペイン最古の大学であるサラマンカ大学が設立され、フェリペ王子の結婚式が行われた16世紀にはスペイン国内のみならず、世界中の学生がサラマンカ大学で勉強していました。当時、サラマンカには8千人以上の学生が住んでいたらしく、同じ時期のマドリードの人口が1万1千人だった(ウィキペディア参照)ことを鑑みると、驚くほど多くの学生たちがこの街に住んでいたようです。

サラマンカ大学ファサード(写真: 筆者撮影)

結婚式の祝賀は14日の夜から19日まで行われ、その間街中で王室主催の様々なパーティー、お祭り、馬上槍試合、伝統的な両陣営によるトーナメントなどが途切れることなく続きました。ところが王室主催以外にも、街中ではこれ幸いと、淫らな酒場や売春宿などでの一般市民や学生たちがお祭り騒ぎで賑わっていました。このどんちゃん騒ぎの様子に、敬虔かつ厳格な若きフェリペ2世は驚愕します。それもそのはず。サラマンカ大学は、知識の殿堂として、またヨーロッパのキリスト教の光として、神学・哲学・法学の研究を進めていたので、サラマンカは厳粛な街というイメージをフェリペ王子は抱いていたのです。ところが、その厳粛な街サラマンカには別の顔も兼ね備えていました。それは、ありとあらゆる娯楽を無制限にそして無秩序に楽しめるというものでした。

フェリペ2世の勅令

このことがよっぽど衝撃的なものだったのか、フィリッペ2世は、四旬節と聖週間の間、娼婦たちはサラマンカを離れ、対岸にある売春宿に閉じこもらなければならないという勅令を出します。つまり、娼婦たちは1ヶ月以上サラマンカの街から追い出され、学生等の男性たちは復活祭の月曜日の次の月曜日(ルーネス・デ・アグアス)まではジッと我慢していなければならなかったという訳です。そして、ルーネス・デ・アグアス(Lunes de Aguas)の月曜日には、堰を切ったように娼婦たちはボートで街に戻りました。

貝の家の窓(写真: 筆者撮影)

ルーネス・デ・アグアス(Lunes de Aguas)のお祭りに欠かせないオルナッソ(Hornazo)

彼女たちの帰還は、学生たちの間でお祭り騒ぎとなり、彼女たちを歓迎するために川までやってきて、酒を飲んだり、サラマンカの郷土料理であるチョリソやスペインソーセージ、ハムやゆで卵を詰めた人気のオルナッソ(Hornazo)と呼ばれる食べ物を振る舞い、彼女たちの帰還を大いに祝い楽しんだそうです。

これが、ルーネス・デ・アグアス(Lunes de Aguas)のお祭りのルーツです。

復活祭の翌日の月曜日はまだキリスト復活を祝う宗教的な意味合いの強いお祭りが多かった中、このような宗教的道徳に反するお祭りを祝うにはフィリッペ2世も躊躇したのでしょう。きっと、内心ではこのような破廉恥なお祭りは禁止してしまいたかったというのがフィリッペ2世の本音だったのでしょうが、流石にこれほど熱狂的に祝い、民衆から支持されていたお祭りを完全に禁止することは統治をする上でも得策ではないと考えたに違いありません。そのため、せめて復活祭からもう少し時間が経った次の月曜日までのひと呼吸をおくことになったのでしょう。

オルナッソ(Hornazo)(写真: 筆者撮影)

現在のルーネス・デ・アグアス(Lunes de Aguas)のお祭り

流石に、21世紀の今日ではサラマンカの街から追い出される娼婦もいませんし、娼婦たちとどんちゃん騒ぎをする男性も居ませんが、お祭りは無形文化財としても指定され、復活祭の月曜日の次の月曜日(ルーネス・デ・アグアス)の午後は、サラマンカ中の市民が思い思いにオルナッソ(Hornazo)と呼ばれるチョリソやスペインソーセージ、ハムやゆで卵を詰めたパイ持参で川沿いにてピクニックをしてお祝いしています。生憎お天気に恵まれない時は、ピクニックではなく友人や家族の家に集まってオルナッソ(Hornazo)を食べます。

オルナッソ(Hornazo)の中身は具が詰まっていて食べ応え十分です(写真: 筆者撮影)

ルーネス・デ・アグアス(Lunes de Aguas)の午後は、学校は勿論のこと様々な職場もお店も全て休みとなり、街中には人っ子一人いません。サラマンカの人達は皆、トルメス川沿いの原っぱでオルナッソ(Hornazo)を囲んで家族や友人たちとのピクニックを楽しんでいるからです。

大停電(Apagón)でもなんのその!

偶然、今日はスペイン中で大停電(Apagón)が起きたのですが、幸いここサラマンカはスペインの中でも電気の復旧が早く、約3時間半程の停電ですみました。でも、もともと午後はサラマンカ中のお店も役所も閉まってしまうルーネス・デ・アグアス(Lunes de Aguas)の日だったので、あまり大きな被害はなかったようです。その上、サラマンカのほとんどの市民は、お天気に恵まれたこともあり、トルメス川沿いでオルナッソ(Hornazo)を囲んでピクニックをしていたので、あまり電気を恋しく思うこともなかったとか。今年は特に大勢のサラマンカの人達が川沿いで楽しんだようです。

皆さんも来年の復活祭の月曜日の次の月曜日にサラマンカにいらっしゃる際は、是非オルナッソ(Hornazo)持参でトルメス川沿いへ行ってピクニックを楽しんでみませんか。

スペインでバードウォッチング!-種類別 スペインの野鳥 日本語名(カワセミ科)

ここでは、スペインに生息する野鳥の名前を、種類別に集めてみました。スペイン語名をクリックしてもらうと、スペイン鳥学会のホームページに飛びます。残念ながら日本語版はありませんが、英語での鳥の名前は出ています。スペインで野鳥観察されるとき、またはスペインの旅の途中で見かけた鳥のスペイン語名を知りたいときに、少しでもお役に立てれば幸いです。

カワセミ(学名:Alcedo atthis / 西 : Martín pescador)/(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

Martin pescador = カワセミ科

スペイン語日本語ラテン語//常駐/偶然
Martin pescadorカワセミAlcedo atthis常駐

スペインでバードウォッチング!-種類別 スペインの野鳥 日本語名(ヤツガシラ科)

ここでは、スペインに生息する野鳥の名前を、種類別に集めてみました。スペイン語名をクリックしてもらうと、スペイン鳥学会のホームページに飛びます。残念ながら日本語版はありませんが、英語での鳥の名前は出ています。スペインで野鳥観察されるとき、またはスペインの旅の途中で見かけた鳥のスペイン語名を知りたいときに、少しでもお役に立てれば幸いです。

ヤツガシラ(Abubilla)/ (写真: アルベルト・F・メダルデ)

Abubilla = ヤツガシラ科

スペイン語日本語ラテン語//常駐/偶然
AbubillaヤツガシラUpupa epops常駐

スペインはタコ料理もいろいろ!タコとジャガイモの煮物(Pulpo con patatas)

スペインは西洋諸国の中でも珍しくタコを食べる習慣のある国。特にポルトガルの北にあるガリシア州ではタコ料理は有名です。プルポ・ア・フェイラ(Pulpo a feira)と言ったり、プルポ・ア・ラ・ガジェガ(Pulpo a la gallega)とも呼ばれているガリシアを代表する伝統料理です。日本でもスペイン料理レストラン等ではよくある料理の一つだと思います。

今回のタコ料理は、バスク地方出身のお魚屋さんから教えてもらったバスク家庭料理です。簡単でとっても美味しいので是非お試しください。

スペインの家庭料理は、美味しいレシピが一杯!(写真: 筆者撮影)

材料:4人分

・生ダコ             800g ~1kg

・ジャガイモ           5~6個(中)

・玉ねぎ             1/2個(中)

・トマト             1 個  

・ニンニク            1片

・塩               適宜

・スペインパプリカ        小匙1~2杯

・オリーブ油           大さじ3~4杯

・イタリアンパセリ        適宜

作り方

まず最初に、ソフリート(sofrito)と呼ばれる香味ベースを作る。このタコ料理に使われるソフリートは、玉ねぎ・トマト・ニンニクが使われる。

1.玉ねぎはみじん切りにして、鍋に多めのオリーブ油(大さじ3~4杯)で、中弱火でゆっくりと気長に炒める。

玉ねぎがひたひたに浸るくらいのオリーブ油をいれます(写真: 筆者撮影)

2.玉ねぎをよく炒めたら、皮をむいてみじん切りにしたトマトとニンニクのみじん切りを入れて、更によーく気長に炒める

とにかく焦らず気長にゆっくりとソフリートを作ります(写真: 筆者撮影)

3.15分~20分位してソフリート(sofrito)ができたら、一口大に切った生ダコを入れてよく混ぜ、蓋をして中弱火で煮る。

生ダコはこんな感じ(写真: 筆者撮影)
タコは縮むので、少し大きめに切った方が良いかも(写真: 筆者撮影)

4.タコが柔らかくなり始めたら(15~20分位)、ジャガイモをペティナイフ等で割りながら一口大にしたものを3の鍋に入れる。少し塩とスペインパプリカを入れて混ぜ、更に15~20分位中火で煮る。

こんな感じで、ジャガイモはペティナイフ等で割ります(写真: 筆者撮影)

5.ジャガイモが柔らかくなったら味をみて整え、みじん切りにしたイタリアンパセリを加え、一煮立ちしたら火を消して出来上がり!

もう少し煮込んだほうがよいかな(写真: 筆者撮影)

スペインの家庭では、ジャガイモをフォークの背で潰して、たっぷりかけたソースに絡ませて食べるのが普通です。確かに、食感も異なり、ソースの絡み具合が絶妙で、グレードアップされます。是非お試し下さい!

ジャガイモをフォークの背で潰した状態(写真: 筆者撮影)

ちょっとスペイン語 -36-  (¡Está de rechupete!-とっても美味しい!)

ここでは、ちょっとしたスペイン語の言い回しや、ことわざ、話し言葉など、辞書には載っていない単語も含めて紹介していきます。スペイン語を勉強している方には言葉の幅が広がるお手伝いができればいいなと、スペイン語には興味ないという方には雑学として楽しんでいただければいいなと思っています。

スペインに来たら絶対食べてほしいオマール海老の米料理(Arroz con bogavante)(写真: 筆者撮影)

¡Está de rechupete!-とっても美味しい!

「de rechupete」という言い方があり、スペイン王立アカデミーの辞書には、話し言葉で使われる言葉で「とても良い、素晴らしい、美味しい」という意味で使われているとの説明があります。「rechupete」という単独での使い方はなく、常に「de rechupete」という使われ方をします。「rechupete」のみの意味を調べてみましたが、結局この単語本来の意味は分かりませんでした。「chupete」には「おしゃぶり」等の意味もあり、「chupar」という動詞には「吸う、しゃぶる、なめる 」という意味なので、その動詞に接頭辞の「re-」を付け、「再び」という意味合いや「(強調としての)すごく、とても」という意味が加味されるのかな⁈と勝手に想像したりしています。この「rechupete」という単語を聞くと、私の頭の中で指に付いたクリームやソースを美味しそうに舐める女の子の姿が想像されてしまいます。(笑)

Este fin de semana hemos ido a Galicia y hemos comino un arroz con bogavante. La verdad que ¡estaba de rechupete!

週末にガリシア州に行って来て、オマール海老の米料理を食べてきたよ。本当に、とっても美味しかった!

「美味しい!」以外の例文としては、次のような使い方もできます。

¿Qué tal fue el viaje a Praga?

プラハ旅行はどうだった?

Me encantó la ciudad, es una ciudad muy bonita. Me lo pasé de rechupete.

プラハはとっても美しい街でとっても気に入ったわ。とっても楽しく過ごしたわよ。

スペインは美食の国。どこにでもある気さくな街角のバルで食べるタバスも美味しいものが多いし、きちんと座って食べるレストランで食べる様々なスペイン料理もとっても美味しいものが多く、本当に「あーここはハズレだったね」という所が少ないのも食べ物に対する思いが強いスペインならではといえるでしょう。

もし、バル等でウエィターの人から「如何ですか?」って尋ねられたら、「Está muy rica. (とっても美味しい)」だけではなく、「¡Está de rechupete!」と言ったらきっと喜ばれることでしょう。言葉の幅が広がり旅が楽しくなること間違いなしです!

2025年3月30日までにスペインに行く人必見!-プラド美術館の植物散歩(Un paseo botánico por el Prado)

去る2月3日、マドリードにあるスペインが誇るプラド美術館に久しぶりに行ってきました。丁度中国の春節の時期に重なったので中国からの団体さん達の姿が多かったのですが、それでも夏に比べれば少ない方だったかもしれません。まあ、ヨーロッパ内でも人気の美術館の一つなので、何時行っても人は多いようです。

今回、3月30日まで開催されている展覧会の一つ、「プラド美術館の植物散歩(Un paseo botánico por el Prado)(筆者訳)」を見てきました。この企画は、園芸家でもあり芸術の中の植物を研究しているスペイン人エドゥアルド・バルバ・ゴメス(Edurardo Barba Gómez)氏とプラド美術館のコラボで実現したものです。彼は、今までも絵画等の中に描かれている植物を研究した題材を本にして出版したり、ラジオや新聞などでもこの題材について語っています。以前、彼の本を読んだこともあり行ってきました。

各時代の植物の表現方法

エドゥアルド・バルバ・ゴメス(Edurardo Barba Gómez)氏が述べているように、芸術の中で描かれている植物は、各時代によってそれぞれ異なる手法で表現されています。

例えば、10世紀から12世紀にかけてヨーロッパに広まったロマネスク様式では、植物を極限まで単純化することで、植物に独特の美しさやダイナリズムを与えました。今回の展覧会の一つに、マドリードからすぐ近くに位置するセゴビア県のベラ・クルス礼拝堂に描かれている「アダムの誕生」の場面があります。

12世紀に描かれた壁画。左側が神がアダムを造った場面、右側は禁断の実を食べたアダムとイブが裸であることを恥ずかしがる姿が描かれています (Wikipedia Dmain)

上の写真を見ていただくと左端に大きな木があり、その横で神がアダムを創り、アダムが誕生しています。この木はナツメヤシだということ。ナツメヤシはヨーロッパ芸術の世界では常連さんらしく、「楽園」の象徴として描かれてきたそうです。「エデンの園」等をテーマにした絵画には必ずと言ってもいいほど描かれている木だということです。

こちらがナツメヤシの写真。上の壁画の植物をナツメヤシと見破るのは結構難しいですね(ウィキペディアドメイン)

また、12世紀~15世紀のゴシック時代には、それぞれの植物、それぞれの花を正確に描写することが目指されたと彼は語っています。ゴシック時代の絵として、初期フランドル派の画家ヤン・ファン・エイクの「生命の泉」が紹介されていました。

絵に沿って作られた額のこの形はかなり珍しい(ウィキペディアドメイン)

この絵の中のどこに植物が描かれているのかちょっと見分けずらいですが、実は、2段目の楽器を弾いている天使たちが座っている緑色の所は、一面の野イチゴ畑です。他にも、20種類程の異なる植物が緻密に描かれていて、ロマネスク時代とはかなり異なる表現方法が用いられていることは分かります。

イチゴはその赤い実がキリストが流した血に見立てられることが多いとか。また、イチゴの葉は3枚の葉から構成されているので、キリスト教の父・子・聖霊を示す三位一体を象徴しているのだそうです。

ヤン・ファン・エイクの「生命の泉」の中で描かれている野イチゴは、学名をフラガリア・ベスカ(Fragaria vesca)と呼ばれている実はとても小さなエゾヘビイチゴです(ウィキペディアドメイン)

そしてルネサンス時代になると、植物自体が主人公となり、静物画が独自の存在感を獲得していきました。その後、16世紀末から18世紀初頭にかけてヨーロッパで広がったバロック時代になると、意図的にバランスを崩した動的でダイナミックな表現が好まれるようになりました。17世紀にスペインの宮廷画家として活躍したフアン・バン・デル・アメンは、多くの静物画を残していますが、その中の一つが今回取り上げられています。

背景が黒に様々な花が浮かび上がる美しい絵画(ウィキペディアドメイン)

この絵の中でひときわ目立っているのが、沢山の小さな花によって大きな丸い花の形をしているセイヨウテマリカンボクの白い花でしょう。背景が黒なので余計に浮きだち、存在感抜群です。この花は、元々ヨーロッパが原産の植物ですが、バロック時代ではとても好まれて絵の題材にされた植物の一つだったそうです。そして、現在もこの植物はスペインではよく庭に植えられる人気の植物の一つです。何を隠そう、我が家の庭にもこの木を植えていて、夏になると大きな手毬のような花を沢山咲かせ私たちを楽しませてくれています。

セイヨウテマリカンボクの花は、ちょっとアジサイの花のよう(ウィキペディアドメイン)

大航海時代の植物たち

16世紀以降は、大航海時代へと入っていきます。と同時に、遠い国々からもたらされたエキゾチックな植物がスペインにも紹介されていきます。南米・北米・アジア等、今までヨーロッパの人々が見たこともないような色や形の珍しい植物に、多くの人が魅了されていきましたが、芸術家もまた然りでした。芸術家たちは、熱心に植物を観察し、それらを繊細に描き出し、そしてあたかも一人の人間の様な魅力的な姿をキャンバスに収めたのです。

展示会の中では17世紀のスペインの画家トマス・イエペスの静物画が紹介されています。残念ながら作品の写真を撮ることができず、パブリックドメインの写真も入手できなかったのでお見せすることはできませんが、この静物画には東アジアを原産とするハゲイトウという赤・黄・緑の三色カラーの葉が美しい植物が描かれています。(この記事の最後にプラド美術館の本展覧会の公式ウエブサイトを紹介していますが、そこを開いてもらうとこの作品も見ることができます。)もっとも、静物画の中では枯れた花として描かれていて、この植物の特徴である鮮やかな三色カラーは描かれていません。絵のトーンに一致しないとの判断だったのかもしれませんが、画家の意図は謎です。

一見ポインセチアかと見誤ってしまいそうなハゲイトウ(ウィキペディアドメイン)

植物に託されたもの

昔の人にとって植物はとても身近なものでした。その身近な植物に、神話的または宗教的な意味を持たせたり、高貴な象徴性や伝統的な象徴性も含ませることを芸術家たちはしてきました。何気なく描かれた一輪の花や植物によって、芸術家たちが描く絵の主題を更に立体的にし、意味を際立たせたり奥深いものにしたりする効果を期待していたのです。

エドゥアルド・バルバ・ゴメス(Edurardo Barba Gómez)氏が語るように、現代社会は、こうした植物たちとの結びつきから切り離されてしまいました。このことは芸術作品の鑑賞にも反映され、私たちは絵を見る際、これらの植物たちに全く注意を払うことなく絵の前を通り過ぎていくことが多くなっています。園芸家でもある彼は、「私たちはただ植物たちを探し、それに耳を傾けるだけで、プラド美術館の庭師になったような気分になれる。」と言っています。

最後に

エドゥアルド・バルバ・ゴメス(Edurardo Barba Gómez)氏が指摘しているように、多くの芸術作品は植物で溢れています。何気なく描かれているような小さな植物にも、実は画家が表現したかったことやその植物に託す意味等があり、とても興味深い展示会でした。また、一つの植物が時の権力者の権力の象徴であったり、大航海時代、新大陸からヨーロッパに紹介された植物たちは遠い旅をし、全く異なる環境からやって来たこと等まで思いを馳せると、どんどん想像が広がっていく楽しみもありました。うっかり見落としてしまいそうな植物、これからはもっとじっくりと絵画を楽しむことができそうです。そして、別の角度から絵画や彫刻を観察することができそうです。

もし、3月末までにスペイン、マドリードにいらっしゃる機会があれば、是非この展示会にも足を運んでみてください。きっと新しい発見の散歩となることでしょう。

プラド美術館の公式サイトからこの展覧会の情報を入力することができます。また、今回の展覧会で紹介されている全ての絵画をこちらから確認することもできますので、是非ご覧ください。

https://www.museodelprado.es/en/whats-on/exhibition/a-botanical-stroll-through-the-prado/3f48df04-a1fb-d356-7ad5-56cbf5d3b2ce

国立プラド美術館 開館情報

住所:プラド通り無番地(Paseo de Prado, s/n)
最寄り駅:エスタシオン・デル・アルテ(Estación del Arte 1号線・水色) 、バンコ・デ・エスパーニャ (Banco de España 2号線・赤色)      
開館時間:月~土 10:00~20:00(最終入館 19:30)日・祝 10:00~19:00(最終入館 18:30)         
*1月1日・5月1日・12月25日は休館                                    入場料:一般 15€  65歳以上 7,50€ 無料-18歳未満、25歳未満の大学生(国際学生証必要)、教師(国際証明書必要)              

*バッグ、リュック、傘、かさばる物、荷物は、美術館のロッカーに預けなければなりません。

スペインでバードウォッチング!-絶滅危惧種ホオアカトキ(Ibis eremita)に迫る!

観察日:2025年1月18日

芝生の上で一生懸命エサを探して食べるブロンズトキ(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

こんな鳥がいますよ!

1月13日に、スペイン北部ガリシア州のバヨーナ(Baiona)の近く、ラマジョサ(Ramallosa)という海岸沿いの街に、こんな鳥がいますよ!という友人からのラインが届きました。最初は、スペイン南部で見かけるブロンズトキ(Ibis morito común)だと思っていたら、よくよく送られてきた動画を見てみると、ちょっと違うみたいだと夫が気づきました。早速、夫はバードウォッチング仲間が発信する「珍しい鳥がみれたよ!」というインターネットに書き込みをするサイトに入ってみると、モロッコに生息する絶滅危惧種のホオアカトキ(Ibis eremita)だということが分かりました。少なくとも1月に入ってからラマジョサ(Ramallosa)でのんびり過ごしているようです。

ホオアカトキに会えるか⁉

私たちも週末にはラマジョサ(Ramallosa)へ駆けつけて、スペインでは見ることができないホオアカトキ(Ibis eremita)を見に行きました。朝から友人が見たという公園に行く途中、大きな看板の上にとまっているホオアカトキ (Ibis eremita)を発見しました!その後ロータリーの芝生部分に降り立ち、しきりと虫を探して食事を始めました。ロータリーでは結構な車が横を通っているものの全く気にも留めていない様子です。

その後は、友人が見た場所の公園方面に飛び立ち、公園内にある建物の屋根の上で日向ぼっこでもしているかのよう。地元では結構有名人ならぬ有名鳥になっているようで、子供連れの家族や双眼鏡を持ったカップル、そして写真を撮ろうと立派なカメラ機材持参の人など,10名位がこの珍しいホオアカトキのウォッチングを楽しんでいました。

午後も再びホオアカトキに会いに行くと、海辺の近くの散歩道の横にある芝生地帯で羽を広げたり、食べ物を探したりしていました。人が歩いているすぐ近くにいて、あまり警戒心がないようです。また、足には黄色い足環を付けていたので、もしかすると動物園等の人間がいる所にいたホオアカトキが逃げ出してこの辺りまで飛んできたのかもしれません。

絶滅危惧種ホオアカトキ

ホオアカトキについて調べてみると、17世紀にヨーロッパでは完全に姿を消していたようです。それまでは、ドイツやスイス等にも生殖していたとのこと。スペインでも16世紀まではスペイン本土の大部分で生息していたらしい。しかし、今では野生のホオアカトキは、モロッコ等のアフリカ大陸の一部でのみ生息している絶滅危惧種に指定されています。

日本のトキも一旦絶滅した後、人工繁殖等の努力の結果、飼育下とは言うものの現在かなりの数まで回復していると聞いているので、洋の東西を問わずトキの環境は厳しいものなのでしょう。

屋根の上で日向ぼっこの(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

エレミータ 計画(Proyecto Eremita)とは

そんなとても珍しい鳥を見ることができたので、単純にとても嬉しくなりました。家に帰ってこの鳥について調べてみると、こんな興味深いプロジェクトが行われていることを知りました。

それは、「エレミータ 計画(Proyecto Eremita)」と呼ばれるプロジェクトで、スペイン南部アンダルシア州にあるドニャーナ生物学研究所(CSIC)の科学的助言を得ながらヘレス動物園が2003年に開始したプロジェクトです。具体的には、野生のホオアカトキが絶滅の危機に晒されているため再導入計画が策定されて、飼育下で繁殖させた若い個体の放鳥が試みられています。そのお陰で、スペイン南部カディス県のハンダ(Janda)という地域で繁殖が確認されているそうです。

このプロジェクトで放鳥されているホオアカトキの足には、識別用の足輪が付けられているそうなので、もしかすると、私たちが見たガリシア州のラマジョサに居たホオアカトキは、このプロジェクトの賜物かもしれません。繁殖が確認されているスペイン南部カディス県のハンダ(Janda)から、私たちが見た場所ラマジョサまでの直線距離は約900㎞。結構な距離を頑張って飛んで来たんですね。

最後に

一体何時までラマジョサ周辺にこのホオアカトキが居座るかは分かりませんが、3月になったらまた行ってみようかなと考えています。3月は繁殖期に入るので、きっと仲間を探しに別のところに移っているとは思いますが…。

それにしてもこんなに貴重な鳥を間近に見ることができて本当にラッキーでした。「エレミータ 計画(Proyecto Eremita)」がこれからも成功して、もっと仲間が増えることを願っています。

資料

・「エレミータ 計画(Proyecto Eremita)」について

https://www.zoobotanicojerez.com/proyecto-eremita#:~:text=En%202004%20se%20inici%C3%B3%20el,para%20establecer%20una%20poblaci%C3%B3n%20sedentaria%2C

・2019年の「エレミータ 計画(Proyecto Eremita)」の報告書

https://www.zoobotanicojerez.com/fileadmin/documentos/2019/Resumen_Proyecto_Eremita_2019.pdf