おいでよ!スペインの素敵な村(1)-カスティーリャ・イ・レオン州-カンデラリオ(Candelario)

ベハール(Béjar)からカンデラリオ(Candelario)の遊歩道

10月末、お天気が良かったので栗拾い兼紅葉を見にカスティーリャ・イ・レオン州のサラマンカ県にあるカンデラリオ(Candelario)という村に行ってきました。標高1136mというこの村は、サラマンカ市内から車で小一時間程です。紅葉にはちょっと早かったのですが、カンデラリオの村の近くにあるベハール(Béjar)という街に車を止めて、カンデラリオの村に続く遊歩道を気持ちよく散歩できました。ベハールからカンデラリオの村までは約4km、ゆっくり歩いても1時間程です。小さい子供連れでも、あまり歩きなれていない人でも無理なく歩ける遊歩道です。

ベハールの街がみえます。写真:筆者撮影

歩いていると、カウベルが鳴り牛たちがのんびりと草を食む光景や、鳥の鳴き声が聞こえてくる歩道が急に細くなって林の中に誘ってくれる小道や、石橋がある川を渡ったり、乾燥したサラマンカ県の気候の中ではこの辺りは割と雨が多いところなので、普段はめったに見られないコケ蒸した石垣の道を通ったりと、なかなか変化に富んだ遊歩道です。

牛が草を食む牧歌的な風景 写真:筆者撮影

お目当ての栗も拾えました。家族連れで栗拾いを楽しんでいる人もいましたよ。この辺りの栗は小粒ですが、焼いて食べると味は良いですね。我が家でも帰った後、早速オーブンで焼いて食べました。

遊歩道に沿った苔むした石垣 写真:筆者撮影

スペインで最も美しい村

さて、1時間以上かけてゆっくりとカンデラリオの村に着きました。このカンデラリオの村は、「スペインで最も美しい村」という協会に認定され登録されている村の一つです。「日本で最も美しい村」という日本版の協会もあるのでご存知の方も多いかもしれません。ちなみに、この「スペインで最も美しい村」という協会は2011年に設立され、人口1万5000人以下(歴史地区の人口は5000人以下)であること、建築的遺産または自然遺産があることなどを条件に、村内の環境、宿泊施設、案内板に至るまで厳正に審査し、登録を認定しています。2020年8月末時点で、94村が認定されています。(ウィキペディアより)

標高1136mの村カンデラリオ。右上の山には薄っすらと雪が積もっていました。 写真:筆者撮影

ここカンデラリオの村は2015年に「スペインで最も美しい村」に登録されましたが、その伝統的な建築により歴史的・芸術的な場所としても宣言されています。遊歩道からカンデラリオの村への入り口に、「カンデラリオ サラマンカの史跡ルート」なる看板が立っていました。

カンデラリオ山脈は、サラマンカ県、アビラ県、カセレス県にまたがり、その美しく多様な風景は、フユナラと栗の森におおわれた渓谷による河川と、氷河の浸食作用によって形成された地形の1つである圏谷とによってつくられています。

この自然の飛び地は、「共同遺産地区」並びに「野鳥保護特別地区」に指定されています。また、2006年にユネスコ協会により「ベハール山脈とフランス山脈の生物圏保護区」の一部として生物圏保護地区(ユネスコエコパーク)として宣言されました。ちなみに、スペインはこの生物圏保護地区(ユネスコエコパーク)に登録されている場所は、現在52か所あり、ヨーロッパの中でもかなり多い国です。

カンデラリオの村は、坂の多い可愛い村です。小さい村ですが、隅々まで歩いて周ると色んな発見があります。今回数年ぶりにこの村を訪れましたが、村の所々に様々な説明板がありました。残念ながらスペイン語しかありませんでしたが。この村を週末や夏に訪れると、結構な数の観光客で賑わっていますが、今回はお天気も良い週末にもかかわらず、コロナウイルスの影響で人っ子一人居ない閑散とした状態でした。いつもなら人のいない写真を撮るのに一苦労するところですが、今回はまるで村全部を貸し切っているかのような感じでした。コーヒーを飲みに入ったバルの人と話すと、「本当にいつもの賑わいが戻ってほしい」と残念がっていました。心からコロナウイルスの収束を願ってやみません。

左側に見えるバルでコーヒーを飲みました。本当に人が全く居なくて驚くやら悲しいやら・・・。 写真:筆者撮影

ラ・カサ・チャシネラ(La Casa Chacinera)

さて、カンデラリオの村の特徴の一つは、何といってもその建築にあります。18世紀初頭から「チョリソ」や「サルチチョン」と呼ばれるスペインのソーセージやサラミ等豚肉製品を作る産業が盛んになってくると、「チョリソ」や「サルチチョン」作りに適した家屋を造るようになりました。そして、一階は肉製品加工所、二階は居住する場所、そして三階は乾燥室並びに一階で加工した物を保管する倉庫である三階建ての家が造られ始めました。それらの家を「ラ・カサ・チャシネラ(豚肉製品用家屋)」と呼び、この村の特徴の一つとなったわけです。

「ラ・カサ・チャシネラ」一階は肉製品加工、二階は居住用、三階は乾燥室並びに一階で加工した物を保管する倉庫 写真:筆者撮影

バティプエルタ(Batipuerta)

上の写真でもみえますが、この村にある建物の特徴のもう一つに、「バティプエルタ」と呼ばれる扉があります。本扉の前に付けられた下から半分だけの扉です。この「バティプエルタ」には多様な用途があったようで、それらは、①通りに降り積もった雪から本扉を守るため ②動物たちが勝手に家の中に入るのを避けるため ③本扉を開け放ったままで自然光や風が建物の中にも入るためのものでした。

昔のスペインでは、犬や猫だけではなく豚や牛などの家畜も放し飼いにされていて、家の中に勝手にお邪魔してくる家畜たちも少なくはありませんでした。そこで、この「バティプエルタ」が活躍するわけです。また、前述したようにスペインソーセージやサラミ「チョリソ」「サルチチョン」等の豚肉製品を加工する際、自然光がよく入り、風通しを良くするためにもこの「バティプエルタ」はなくてはならないものでした。

自然や産業に適した建物を造り、そこには生活の知恵や生活様式が反映されていてとても興味深いです。その上、ただ単に半分に切った扉ではなく、デザイン的にもなかなかお洒落です。

「バティプエルタ」 写真:筆者撮影

ヌエストラ・セニョーラ・デ・ラ・アスンシオン教会(Iglesia de Ntra. Sra. de la Asunción)

村の高い所に建てられたアスンシオン教会は、1329年に建設が始まり、ロマネスク、ゴシック、ムデハル、バロックと様々な様式が混在しているためか、ちょっと不思議な印象を与えられる教会です。外側から見ると飾り気はないけれど力強く古拙な感じを受けますが、中に入るとその独特なスタイルに驚かされます。

石畳の階段を上るとアスンシオン教会が建っています 写真:筆者撮影

祭壇の上を飾るムデハル様式の天井は一見の価値ありです。ムデハル様式とは、スペインの建築様式の一つで、イスラム教徒の建築様式とキリスト教徒の建築様式が融合したイベリア半島特有の様式です。特徴として建物の壁面に幾何学文様の装飾を施していますが、この教会のムデハル様式の天井は約100㎡の大きさがあり、ポリクロームと呼ばれる多色装飾による99個の星が施されています。

鮮やかに多色装飾された美しい天井 写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ

村巡りのすすめ

今回は紹介しませんでしたが、この遊歩道の出発点がある「ベハール」の街も見るところが沢山あります。また、もう少し足を延ばすと「モガラス(Mogarraz)」や「ミランダ・デル・カスタニャル (Miranda del Castañar)」や「ラ・アルベルカ(La Alberca)」という「スペインで最も美しい村」に登録されている素敵な村々もありますよ。是非、車を借りて、村巡りを楽しんでみてください。マドリッドやバルセロナ等の大都市にはない、もっとディープなスペインに出会えること間違いなしです。

カンデラリオの村の隅々に流れる水路。山からの水は冷たかった!

「ラ・アルベルカ(La Alberca)」についてはこちらもどうぞ。

「ムセオ・カサ・チャシネラ」博物館 開館情報

・「ムセオ・カサ・チャシネラ」カンデラリオにある博物館。

住所: カジェ・ペラレス3番地(Calle Perales, 3 )

郵便番号 37710 カンデラリオ( Candelario)サラマンカ県 ( Salamanca ).

電話番号:(34)695 56 34 91

E-mail:museocasachacinera@gmail.com. 

開館時間:土曜日 17:30~19:00 日曜日 11:30~13:00

一風変わった博物館で、ここに訪れると1920年頃にタイムスリップし、「チョリソ」「サルチチョン」などを作る人達の姿を見ることができます。というのも、博物館に居る人たちがその当時の服装で迎えてくれ、芝居によって説明してくれるからです。芝居はスペイン語ですが、当時の服装、仕事ぶりを見るのも楽しいものです。是非、立ち寄って見てくださいね。

http://www.candelario.es/museo-casa-chacinera-de-candelario/

スペインでバードウォッチング!-カスティーリャ・イ・レオン州-ベハール(Bejar)からカンデラリオ(Candelario)への遊歩道

私が住むカスティーリャ・イ・レオン州のサラマンカ県にあるベハールという町からカンデラリオというとても美しい村までの遊歩道でバードウォッチングしてきました。

このベハールからカンデラリオの地域は、2006年にユネスコ協会により「ベハール山脈とフランス山脈の生物圏保護区」(ユネスコエコパーク)として宣言されました。また、「野鳥保護特別地区」にも指定されており、バードウォッチングには最適の場所です。

カンデラリオ(Candelario)の山々 / 写真:筆者撮影

今回、出会えた鳥たちは以下の通りです。

・カケス(学名:Garrulus glandarius / 西:Arrendajo)

カケス(学名:Garrulus glandarius / 西:Arrendajo)/ 写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ

・タンシキバシリ(学名:Certhia brachydactyla / 西:Agateador Europeo o Agateador Común)

タンシキバシリ(学名:Certhia brachydactyla / 西:Agateador Europeo o Agateador Común)/ 写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ

・ゴジュウカラ(学名:Sitta europaea / 西:Trepador Azul)

ゴジュウカラ(学名:Sitta europaea / 西:Trepador Azul)/ 写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ

・マミジロキクイタダキ(学名:Regulus ignicapilla / 西:Reyezuelo Listado)

マミジロキクイタダキ(学名:Regulus ignicapilla / 西:Reyezuelo Listado)/ 写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ

・アオガラ(学名:Cyanistes caeruleus / 西:Herrerillo Común)

アオガラ(学名:Cyanistes caeruleus / 西:Herrerillo Común)/ 写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ

・カンムリガラ(学名:Lophophanes cristatus / 西:Herrerillo Capuchino)

カンムリガラ(学名:Lophophanes cristatus / 西:Herrerillo Capuchino)/ 写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ

・シジュウカラ(学名:Parus major / 西:Carbonero Común)

シジュウカラ(学名:Parus major / 西:Carbonero Común)/ 写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ

・ヒガラ(学名:Periparus ater / 西:Carbonero Garrapinos)

ヒガラ(学名:Periparus ater / 西:Carbonero Garrapinos)/ 写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ

・クロジョウビタキ(学名:Phoenicurus ochruros / 西:Colirrojo Tizón)

ヒガラ(学名:Periparus ater / 西:Carbonero Garrapinos)/ 写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ

・エナガ(学名:Aegithalos caudatus / 西:Mito)

エナガ(学名:Aegithalos caudatus / 西:Mito)/ 写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ

・カササギ(学名:Pica pica / 西:Urraca)

カササギ(学名:Pica pica / 西:Urraca)/ 写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ

・シロエリハゲワシ(学名:Gyps fulvus / 西:Buitre Leonado)

シロエリハゲワシ(学名:Gyps fulvus / 西:Buitre Leonado)/ 写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ

・アカゲラ(学名:Dendrocopos major / 西:Pico Picapinos)

アカゲラ(学名:Dendrocopos major / 西:Pico Picapinos)/ 写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ

・チャイロツバメ(学名:Ptyonoprogne rupestris / 西:Avión Roquero)

チャイロツバメ(学名:Ptyonoprogne rupestris / 西:Avión Roquero)/ 写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ

・モリバト(学名:Columba palumbus / 西:Paloma Torcaz)

モリバト(学名:Columba palumbus / 西:Paloma Torcaz)/ 写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ

カンデラリオの村についてすぐの公園で、持参したサンドウィッチのお弁当を広げお昼にしましたが、その公園内にはたくさんの木が植えてあり、そこでも様々な鳥に出会えました。愉快だったのは、夫が持参していた携帯電話のアプリを使って鳥の鳴き声を付けると、シジュウカラやアオガラ、マミジロキクイタダキなどが近くの木に集まってきたことです!! あまりにたくさんの鳥たちが集まってきたのでびっくりしました。鳥の鳴き声のアプリって、鳥を引き寄せるには効果的なんですね!

ここカンデラリオの村は2015年に「スペインで最も美しい村」に登録された、坂の多いとてもかわいい村です。バードウォッチングをした後は、村でゆっくり観光してみませんか?バードウォッチングと美しい村観光という二重の楽しみを味わえますよ!

カンデラリオ(Candelario)の村 / 写真:筆者撮影

スペインのワイナリー見学(1)-テーラス・ガウダ(Terras Gauda)

スペインを訪れる楽しみの一つは、何といってもその食事とワイン!きちんとしたレストランに行かなくても、街のちょっとしたバルでおいしいおつまみ(タパス)と豊富なワインが気軽に楽しめます。今回は、スペインの白ワインでは絶大な人気を誇るガリシア地方にある「Terras Gauda (テーラス・ガウダ)」というワイナリー見学を報告します。

「Terras Gauda (テーラス・ガウダ)グループ」の紹介

リアス・バイシャスと呼ばれるスペイン、ガリシア州の南、ポルトガルとの国境近くのオ・ロサルという所にこのワイナリーはあります。ローマ、エルサレムと並びキリスト教の三大巡礼地に数えられるサンティアゴ・デ・コンポステーラからは、車で約1時間半。大西洋からは8Km程離れたところに位置し、年間平均温度は15℃。ここは、ガリシア州の中では比較的天気に恵まれており、ぶどうの糖度を高めた状態で成熟させることができる理想的な土地です。

1990年、今からちょうど30年前に最初のワインを造り始めました。最初の年のヴィンテージは3万7千本だったのが、今では150万本を生産し、日本も含め世界45か国に輸出するほどの会社に成長しています。スペイン国内でも絶大な人気があり、今年3月から5月にかけてコロナウイルスによるロックダウンになっていたスペインで、インターネットを通して最もヒットしたワインのベスト10に唯一白ワインで入っていたのがこの「Terras Gauda (テーラス・ガウダ)グループ」のワイン、テーラス・ガウダ(Terras Gauda)です。

1992年バルセロナ五輪のマスコット「コビー」の生みの親ハビエル・マリスカル氏の絵      
「テーラス・ガウダの友達たちへ愛情をこめて」という献辞が見える(写真:アルベルト・F・メダルデ撮影)

魚介類が豊富で、食べ物がおいしいガリシア州。このワイナリーの白ワインも魚介類との相性抜群!ワインだけでもおいしいですが、食事を引き立ててくれる陰の立役者とでも言えるのがこの「Terras Gauda(テーラス・ガウダ)グループ」のワインです。

今回は、グループ発祥の白ワインのワイナリー「Terras Gauda (テーラス・ガウダ)」について紹介していきます。

ユニークなブドウ畑とブドウの種類

2020年9月18日、午前11時にワイナリー見学が始まりました。1週間程前に予約の電話を入れると、「丁度ブドウの収穫真っ盛りなので、普段見れない光景も見学できますね!」と言われ楽しみにしていました。ただ、雨が降るという天気予報だったのでちょっと心配しましたが、最終的には雨も降らず気持ちの良い一日でした。

予定の時刻にワイナリーまで行くと、エノツーリズム(ワインツーリズム)担当のベゴーニャが迎えてくれました。彼女がバンでブドウ畑まで連れて行ってくれます。バンに乗り込むと、まず、名前の由来の説明がありました。「Terras Gauda (テーラス・ガウダ)」の「Gauda(ガウダ)」の意味には、二通りの説があるとのことで、一つ目は、守り人に対して与えたゴード人のことだという説と、二つ目は、ラテン語の意味である「Tierra de Alegría」、「歓喜の土地」という意味。この辺りは肥沃な土地で、今でも果物、野菜、花や鑑賞用の植物の栽培が盛んなところだそうです。作物に恵まれた「喜びの土地」、素敵な名前ですね。

車でしばらく行くと、両側にブドウ畑が広がってきました。早速、車を降りてベゴーニャの説明がありました。「Terras Gauda (テーラス・ガウダ)」では、垣根仕立て(スペイン語では”Espaldera”といいます)によるブドウの栽培が行われています。垣根仕立てによるメリットは、垂直に伸びていくので雨が降っても水はけがよく菌が発生しにくいということと、棚仕立て(”Parra”)のように陰を作らないので、全てのブドウの実に太陽の光が行き届いて実が完熟し、ムラのないブドウの実を収穫することができ、ワインを造る段階で高品質かつムラのない品質を保つことができること。デメリットとしては、棚仕立てに比べると、収穫量が40%ほど少ないということ。「Terras Gauda (テーラス・ガウダ)」では、プレミアムワインやウルトラプレミアムワインを主に生産することを目的としているため、この垣根仕立てによる高品質を追求したブドウの栽培が採用されている訳です。

垣根仕立て(”Espaldera”)のブドウ畑(写真:アルベルト・F・メダルデ撮影)

更に、車で移動しながらベゴーニャが「Terras Gauda (テーラス・ガウダ)」で栽培されているブドウの種類についても説明してくれました。ここでは、アルバリーニョ種(Albariño)、ロウレイラ種(Loureira)、カイーニョ・ブランコ種(Caiño Blanco)の3種類のブドウが栽培されています。原産地がここガリシア州で、ガリシア州白ワインの代名詞ともいえるアルバリーニョ種(Albariño)が一番多く栽培されていますが、「Terras Gauda (テーラス・ガウダ)」が特に力を入れて栽培数を増やしているのが、カイーニョ・ブランコ種(Caiño Blanco)。この品種は病気にかかりやすくデリケートな株で、アルバリーニョ種(Albariño)に比べても収穫量が少ないことを理由に、今から約20年前までは殆んどワイン用のブドウとしては使われていない廃れたブドウの種類だったとか。今では、「Terras Gauda (テーラス・ガウダ)」は、97%がこのカイーニョ・ブランコ種(Caiño Blanco)である「La Mar(ラ・マール)」というワインを造っていて、カイーニョ・ブランコ種(Caiño Blanco)を主にしたワインはスペインでも唯一だそうです。ブドウを植えてから4~5年間は収穫せず、その後やっと収穫が始まりワインが造られるそうで、1株のブドウの木は、30~32年程を過ぎると新しいブドウの木に植え替えるという作業が続けられています。車からも2~3年前に植えたばかりというまだまだひ弱いブドウの木が見えました。

左側に見えるブドウの木はまだ植えて2~3年(写真:アルベルト・F・メダルデ撮影)
2021年8月に再度訪問した際、ブドウ園での試飲が楽しめる場所が新しく設置されていました!(写真:筆者撮影)

公務員からワイナリーのオーナーに

「Terras Gauda (テーラス・ガウダ)」は、会社名でもあり、会社を代表するワインの名前でもあります。この会社を約30年前に設立したホセ・マリア・フォンセカ氏は、もともとは日本でいう職業訓練校などで様々な講習などを企画するような仕事をされていた公務員だったそうです。仕事柄、地元の農家や企業等とも交流があり、ご本人がワイン好きということもあり、友人を募ってワイナリーを作ることにしたという、異色の人物。スペインでは、今も昔も安定している職業の一つである公務員は人気があり、公務員試験にパスするのもかなりの競争率をくぐり抜けなければならず、その公務員の仕事を捨てて未知の世界に飛び込むという勇気ある行動、そして現在、スペインの中で有名なワイナリーとして成功を修めているその経営力、自分達が求めるワインを追求し、質の高いワインを作り出しているその感性と情熱に、強い感銘を受け魅かれました。現在も、オーナーとして様々な企画を提案し、ご活躍中です。今回のワイナリー見学ではお会いする機会に恵まれませんでしたが、お父様の意思を受け継いでセールス部門で活躍されている息子さんのアントン・フォンセカ氏とはお話する機会がありました。アントン氏もワイン好き、料理好きで、和食も大好きだとか。今では、日本でも「Terras Gauda (テーラス・ガウダ)」のワインが販売されているので是非試してみてくださいね!

粒の揃ったブドウの実(写真:アルベルト・F・メダルデ撮影)

ブドウの収穫真っ盛り

さて、3種類のブドウを栽培するブドウ畑を見て回り、丁度、今年のブドウ収穫真っ盛りということもあり、ブドウの収穫をしている様子も見せていただきました。地元の学生や失業中の方なども含め200人の人たちが、会社が所有する160ヘクタールのブドウ畑のブドウ収穫に勤しんでいました。山を切り開いて作られているぶどう畑は急勾配(20%)で、収穫作業はかなりの重労働です。その斜面に広がるブドウを一つ一つ丁寧に手作業にて箱に入れる姿は印象的でした。箱には、ブドウを8㎏までしか入れず、ブドウの実が重みでつぶれないよう細心の注意をもって摘み取られていました。今年は、暑い日が多かったせいか、例年より早く熟しているので、私が訪れた9月18日は最終日だったようです。例年ならば、10月の頭まで終わらない収穫らしいので、かなり早い収穫です。オーナーの娘さんカルメンさんが、「今週は、天気予報では強風を伴う雨だったので心配していたけれど、何とかお天気にも恵まれ無事に全部を収穫できそうだ。雨に打たれず品質の良いワインが造れそうだ。」と、ほっとした表情で話してくれました。今年のワインが出来上がるのが楽しみです!クリスマスシーズンには、今年のワインがリリースされるので、今年は「テーラス・ガウダ(Terras Gauda )」の白ワインでクリスマス・ディナーを楽しめますね!

ブドウの房一つ一つを丁寧に収穫していく(写真:筆者撮影)

固有種カイーニョ・ブランコ種(Caiño Blanco)の復活と新しいワイン作りへの挑戦-研究開発(I+D)-

その後、再びバンに乗って出発地点まで戻りました。その間にも、ベゴーニャが説明をしてくれます。その中で特に印象深かったのが、カイーニョ・ブランコ種(Caiño Blanco)の話でした。前述したように、このカイーニョ・ブランコ種(Caiño Blanco)はデリケートで収穫量が少ないという理由で、この地方固有のブドウでありながらも忘れられていた種類のブドウでした。ワイナリー設立者であるホセ・マリア・フォンセカ氏は、それぞれのその土地が持つ特異な気質を柱として育っていく固有種の復活、その固有種から作り出されるその土地のワイン、それも質の高いワイン造りを目標に掲げ、今から訳20年前から自社の畑にカイーニョ・ブランコ種(Caiño Blanco)を栽培し続けています。

政府機関であるCSIC(Consejo Superior de Investigaciones Científicas「科学研究高等評議会」)と共同にて、I+D(Investigación y Desarrollo「研究開発」)の企画の一つとして研究を始めました。そして、長い研究開発の末、前述した「La Mar」というカイーニョ・ブランコ種(Caiño Blanco)のワインを造りだしたのです。今では、「La Mar」は「Terras Gauda 」と並ぶ代表ワインとなっています。このI+D(Investigación y Desarrollo「研究開発」)は現在も様々な企画で行われており、ブドウの木の肥料について、ブドウ畑の土壌について等を、アルゼンチンのワイナリーと共同研究中とのことです。

ワイナリーの中を見学して驚くことは、34のタンクの説明です。これは、ガリシア地方固有のブドウそのものの素晴らしさを追求していくことを会社理念としていたホセ・マリア・フォンセカ氏の情熱が形となっているものです。ワイン造りを始めようと決心したホセ・マリア・フォンセカ氏は、まず研究のために試験場を作り、全ガリシア地方のから115のアルバリーニョ種(Albariño)の株を集め、その中から厳選して34株に絞り、それぞれの成長や品質に合わせてワインを造ってみました。その34株から造られたワインがこのタンクに入っているとのことです。現在ではこのワインのモデルは、I+D(Investigación y Desarrollo「研究開発」)に使用されているそうです。そして、最終的には、「Terras Gauda (テーラス・ガウダ)」の土壌に適した、「Terras Gauda (テーラス・ガウダ)」が求めるワインに理想的な5つの株を選び抜き、実際に栽培始めたとのことです。

研究用にガリシア地方全土から集められたブドウの木34株から造られたワインのタンク(写真:筆者撮影)

地道な努力、科学に裏打ちされた研究、そして決して消えることの無いワイン造り情熱がこのワイナリーのワインに凝縮されています。

収穫されてきたブドウは除梗破砕機(実と茎を分ける機械)へ。ワイナリー内ではブドウの香りが広がっています。(写真:アルベルト・F・メダルデ撮影)

試飲

いよいよ楽しみにしていた試飲です!ワイナリーの工場から出て、お店の横にテイスティング・スペースが設けられていました。

スペイン美人ベゴーニャ(写真:アルベルト・F・メダルデ撮影)

まずは、アルバリーニョ種(Albariño)100%のアバディア・デ・サン・カンピオ(Abadía de San Campio)。口に含むとフルーティで爽やかな甘みが広がってきました。次は、「テーラス・ガウダ(Terras Gauda)」の顔とでもいうべきテーラス・ガウダ(Terras Gauda)。アルバリーニョ種(Albariño)70%、カイーニョ・ブランコ種(Caiño Blanco)22%、ロウレイラ種(Loureira)8%のこのワインは、アバディア・デ・サン・カンピオに比べると濃厚で複雑な味。柑橘系の香りがして、しっかりとした味わいがあります。次は、黒ラベルテーラス・ガウダ(Terras Gauda Etiqueta Negra)。テーラス・ガウダをフランス産オークの樽に5ヶ月寝かしている熟成ワインで、普通のテーラス・ガウダに比べると、こくがあります。一般的に白ワインは次の年の白ワインが出るまでに飲んでしまう方が良いと言われていますが、この黒ラベルテーラス・ガウダは15年位までなら寝かして飲んでも味に深みが加わり美味しく飲めるとのことでした。そして、最後にカイーニョ・ブランコ種(Caiño Blanco)97%と残りの3%は、ロウレイラ種(Loureira)とアルバリーニョ種(Albariño)で造られているラ・マール(La Mar)。こちらのワインは、全く口当たりの異なるワインです。果物の柿やリーチを彷彿させる香りと、成熟感やコクも兼ね備えたこのワインは、1年程寝かせた後にリリースするとのこと。研究と情熱をもって造り上げた新しいテーラス・ガウダの代表ワインへと成長しています。

黒ラベル テーラス・ガウダ(Terras Gauda Etiqueta Negra) が寝かされているオーク樽(写真:筆者撮影)

試飲は、まずはワインのみでそれぞれを味わい、ベゴーニャとアントンの説明があり、その後、チーズとドライフルーツのおつまみが出てきて、おつまみを食べた後に再びワインを飲んでみました。不思議なことには、ワインのみで飲んだ時と、おつまみを食べた後に飲んだ時では、微妙に感じる味が変わったことです。個人的には、最初にワインのみを飲み比べたときは、テーラス・ガウダが一番気に入ったのですが、チーズと一緒に飲み始めると、ラ・マールもチーズとよく合い、甲乙付け難くなってしまいました。

白ワインだけではなく、個性的な新しいワインを求めて

最後に、ご子息のアントン・フォンセカ氏に今後の会社の抱負をお聞きしました。「テーラス・ガウダ(Terras Gauda)グループ」として、白ワインだけではなく、スペイン中にある新しいブドウの原産地を開拓していき、高品質で個性的なワインを造っていくことだそうです。実際、ビエルソ地方のメンシア種(mencía)100%のピタクン・アウレア(Pittacum Aurea)という赤ワインや、有機栽培・自然栽培の一種であるバイオダイナミック農法によるブドウ栽培と持続可能な環境のパイオニアであるキンタ・サルドニア(Quinta Sardonia)というワイナリーや、スペインの赤ワインを代表するリオハ地方の赤ワインのエラクリオ・アルファロ(Heraclio Alfaro)という赤ワインも、この「テーラス・ガウダ(Terras Gauda)グループ」が手掛けています。多様性とそれぞれの土地が持つ特異な気質を柱として、経験と知識を共有かつ利用しながら、個性的で高品質なワインを追求していく、それが、「テーラス・ガウダ(Terras Gauda)グループ」の設立から変わらぬワイン造りに対する姿勢です。

笑顔が素敵なアントン・フォンセカ氏(写真:アルベルト・F・メダルデ撮影)

おすすめ!ワイナリー見学

ブドウ畑から収穫、ワイナリー内の見学、そしてそれぞれのワインの飲み比べなど、本当に楽しく充実したひと時を過ごせました。何気なく飲んでいたワインも、造り手の思いや情熱、そして研究・開発などを知ったうえでもう一度飲んでみると、そのワインに対する愛着がグッと湧き、一緒に飲むお友達にもそのワインの物語を話すことによって会話が盛り上がります。スペインにいらっしゃる際は、是非、ワイナリー見学をお薦めします!

また、テイスティング・スペースの隣にはお店もあり、お土産用のワインを購入できますよ。 「テーラス・ガウダ(Terras Gauda )グループ」では、ワインだけではなく、ハーブの蒸留酒やこの地方でとれる野菜や果物の保存食品(缶詰や瓶詰)も販売しています。日本への美味しいお土産がここで見つかるかもしれませんね

ここ「テーラス・ガウダ(Terras Gauda)」では、幾つかのコースがありますが、おすすめのコースは、「Terras Gauda para 2(二人のためのテーラス・ガウダ)」です。このコースには、アルバリーニョ種(Albariño)100%のアバディア・デ・サン・カンピオ(Aabadía de San Campio)、テーラス・ガウダ(Terras Gauda)、カイーニョ・ブランコ種(Caiño Blanco)97%のラ・マール(La Mar)の3種類のワインを試飲できます。カイーニョ・ブランコ種(Caiño Blanco)の白ワインはここのワイナリーでしか造っていないので、カイーニョ・ブランコ種(Caiño Blanco)とアルバリーニョ種(Albariño)の味の違いを是非とも味わってほしいものです。

もしお子様連れの家族でワイナリー見学をされる方の場合は、お薦めコースは、「Plan familiar(ファミリー・プラン)」です。年齢別に2つのワークショップが用意されています。10歳までの子供たちには、創造的なワイン・ワールドを体験するワークショップ、11歳以上のの子供たちには、ストップ・モーション技法を使いワイナリーで見学したことをストーリーとして作成するワークショップがあります。きっと子供たちにとってもスペインのワイナリー見学は、忘れがたい旅の思い出になること間違いなしです。

大人も子供も楽しめる「テーラス・ガウダ(Terras Gauda)」のワイナリー見学。是非スペイン旅行のコースに入れてみてはいかがでしょうか。

Terras Gauda (テーラス・ガウダ)が造っているワイン。左からアバディア・デ・サン・カンピオ、テーラス・ガウダ、黒ラベルテーラス・ガウダ、ラ・マール。(写真:アルベルト・F・メダルデ撮影)

参考

・「テーラス・ガウダ(Terras Gauda)グループ」の公式サイト。個人でワイナリー見学を予約される方はこちらからどうぞ。:https://www.terrasgauda.com/ 

・残念ながら「テーラス・ガウダ(Terras Gauda)」のワイナリーは紹介されていませんが、ガリシア州リアス・バイシャスのワイナリー見学ルートが紹介されています。スペイン観光公式サイト:https://www.spain.info/ja/waingaku/wain-ruto-riasu-baishasu/

・日本人向けにワイナリーツアーを企画している会社(スペインワインのプロフェッショナルである、バルセロナのOFFICE SATAKEと、バリャドリッドのBUDO YAを中心にスペイン各地のプロフェッショナルが、ワイナリーを本格的に案内)。「テーラス・ガウダ(Terras Gauda)」も訪問可能ですよ!:http://enoturismo.jp/?page_id=703

・ガリシア州公式観光サイト。ガリシア州の素晴らしい魅力を発見できるサイト。日本語版があるのも嬉しいですね!:https://www.turismo.gal/homu/kanko-hissu-supotto?langId=ja_JP

マドリード観光-カルロス3世なしにはマドリードは語れない!

スペインの首都マドリッド。欧州の首都にふさわしく堂々たる建物や大きな通りがあり、ぶらぶら散歩するだけでも楽しい街。美術館あり、噴水あり、並木道あり、カフェテリアあり、エンブレム的な建物ありと、マドリッドの街の風景はとても魅力的です。18世紀のスペイン王カルロス3世は、「マドリッド最良の市長」(El mejor alcalde de Madrid)と言われています。それは、現在のマドリッドの街の風景を彼がつくったからです。

1750年 アルカラ通りから見たマドリード / Wikipedia Public Domain

カルロス3世、ナポリからマドリードへ

カルロス3世は、1716年1月20日スペイン国王フェリッペ5世の三男としてマドリードで生まれました。その後しばらくスペイン南部の街セビリアに暮らしていた時期もありましたが、15歳の時スペインを去ってナポリ王となり、その後シチリア王として24年間シチリアを統治していました。三男という立場から、スペイン国王としては生まれなかったカルロス3世は、シチリア王としてイタリアに生涯暮らすつもりでいたようです。

ところが、子がないまま二人の兄達が死に、思いがけずスペイン国王になることに。本人は、スペイン国王になる気はさらさらなかったようで、病床に付す兄の回復を毎日祈っていたとか。そんなカルロス3世の祈りも神には届かず、1759年12月9日にスペイン国王としてマドリードに戻ることになります。

カルロス3世、マドリードの街を見て嘆く

カルロス3世はマドリードに着いたとき、マドリードの街のあまりの汚さ、不衛生で美しさのない街並みを見て嘆いたと言われています。

その頃のマドリードの街には下水の処理システムなどなく、マドリード市民は各家庭で出る汚水(尿から便に至るまで)をバケツに溜め、家の窓から汚物を投げ捨てる(!!!)習慣がありました。今では考えられないことですが、頭の上から汚物が降ってきたり、歩く道には汚物が悪臭を伴いそこかしこにまかれていて、のんびり通りを歩くこともできないような状況でした。汚物を窓から捨てるときは、「水がいくよ!」「あぶないよ!」という意味で 「¡Agua Va! (アグア・バ!)」と注意を促していたとか。この習慣から、「予告なしに突然」「出し抜けに」などという意味で使われる「Sin decir agua va 」という表現も生まれました。

また、家畜なども我が物顔に通りを歩いていたらしく、彼らもまた所構わず用を足していたので、その当時イタリアからきた旅人たちによる、「なんて臭くて汚い街だ!」という文書が残されているくらいです。

マドリードの街のあまりの悲惨な状態を嘆いたカルロス3世は、マドリードをヨーロッパの首都にふさわしい美しく近代的かつ衛生的な街に整備するため様々な法律や建築計画等を打ち出していきます。

カルロス3世、マドリード大改造

フランチェスコ・サバティーニ / Wikipedia Public Domain

早速、シシリアからフランチェスコ・サバティーニという建築家を呼び寄せ、下水道網の敷設に取り掛かります。また、新しく敷石を敷き、通りの清掃についての計画を次々に実行していきます。その内容は、馬車道には敷石を敷き、歩道を舗装し、家庭から出る汚水は腐敗槽や汚水溜めに誘導し、ごみ収集を行うという画期的な内容でした。これによって、窓から汚水を投げ捨てることも禁じられ、マドリードの街から「アグア・バ!(¡Agua va!)」の声が聞こえなくなりました。ちなみに、この腐敗槽や汚水溜めの汚物は、夜のうちに街の外に運ばれていました。

数年後には、マドリード市民に、自分の家の前の道を朝一番に清掃することや5月から10月までは打ち水をすることを義務付ける命令まで出すという徹底したものでした。また、街の中を勝手に歩き回っていた家畜たちも取り締まりの対象になりました。

その他、カルロス3世は、マドリードの夜の街に街灯をともしました。その数4000本以上あったというから驚きです。また、通りを広くし、広場や噴水などを作り、マドリードの市民が気持ち良く散歩できる環境を作っていきました。通りの代表的なものには、プラド通り (Paseo del Prado)デリシアス通り (Paseo de Delicias)カステジャーナ通り (Paseo de la Castellana) があります。さらに、墓地を街の外れに作ったり、通りや広場に木や植物を大量に植えたりしました。

18世紀のヨーロッパは、聖書や神学など今までの権威から離れて、理性による知によって世界を把握しようとする啓蒙思想が主流となっていた啓蒙時代でした。この啓蒙思想の波はスペインにも押し寄せていて、カルロス3世もこれに従い、歴史学院(Academia de Historia)、言語学院(Academia de Lengua)、法学院(Academia de la Jurispurdencia)、芸術学院(Academia de Bellas Artes)等を次々に開設します。

マドリードにあるカルロス3世ゆかりの建物や通り

カルロス3世が造ったプラド通り (Paseo del Prado) は、マドリードを訪れたら絶対に外せない観光ルートの一つです。この通りは幅広く、並木道で、夏の日差しが強いマドリードでも気持ちよく散歩できる絶好の通りです。そして、マドリード観光お目当てのプラド美術館やティッセン・ボルネミッサ美術館もこのプラド通りにあります

プラド通り (Paseo del Prado) / 筆者撮影

このプラド通りには、カルロス3世が手掛けた建物があります。まず代表的なものは、プラド美術館 (Museo del Prado) です。本来は、自然科学博物館としてカルロス3世が建築家フアン・デ・ビジャヌエバに造らせたものです。そのため、同時に自然科学博物館の隣にマドリード王立植物園 (Real Jardín Botánico) も造らせました。

更に、このプラド通りが始まる場所にシベーレスの噴水 (Fuente de Cibeles) があり、通りを歩いていく途中にアポロの噴水 (Fuente de Apolo) または四季の噴水 (Fuente de las Cuatro Estaciones) があります。ちなみに、シベーレスの噴水があるシベーレス広場は、スペインサッカーチームのレアル・マドリードが勝利した際にパレードが行われる場所で有名です。スペインサッカーファンには見逃せない場所でしょう。さらに歩いていくとホテルリッツ前にネプチューンの噴水 (Fuente de Nepturno) があります。これらの噴水もカルロス3世が造らせたものです。カルロス3世がマドリードの街を美しく、魅力的で、マドリード市民だけではなくマドリード以外から訪れる人たちをも魅了する街にしようという心意気が伝わってくるのが、このプラド通りといえるでしょう。

Archivo:Cibeles con Palacio de Linares closeup.jpg
シベーレスの噴水 (Fuente de Cibeles) / Wikipedia Public Domain

また、マドリードの代名詞ともいえるソル広場 (Puerta del Sol) にもカルロス3世が造ったエンブレム的建物があります。それは、ソル広場の中では最も古い建物で時計台がある王立郵便局 (Real Casa de Correos) です。毎年、大晦日の夜、多くの市民がこの時計台の前に集まります。というのも、年が替わる12時の鐘の音に合わせて、ブドウを12個食べるためです。もし、鐘の音が終わるまでに12個のブドウを食べてしまったら、新年は良い年になるといわれています。もし大晦日の日にマドリードに滞在する機会があれば、あなたも是非12個のブドウ持参で王立郵便局前でスペイン式に新年をお祝いしてみてはいかがでしょうか。きっと忘れられない一生の楽しい思い出になること間違いなしです!

王立郵便局 (Real Casa de Correos) / 大晦日の夜には、12個のブドウ持参の人たちで賑わう / 筆者撮影

その他にカルロス3世の建造物としては、アルカラの門 (Puerta de Alcalá)サン・アントニオ・デ・ラ・フロリダ礼拝堂 (La iglesia de San Antonio de la Florida)カバジェロ・デ・グラシア王立礼拝堂 (Real Oratorio de Caballero de Gracia) などが挙げられます。サン・アントニオ・デ・ラ・フロリダ礼拝堂 は、通称ゴヤのパンテオン (Panteón de Goya) と呼ばれ、スペインの偉大なる宮廷画家ゴヤはこの教会に眠っています。この教会にある天井のフレスコ画「聖アントニオの奇跡」はほかでもないゴヤの作品で、一見の価値がありお薦めです。

サン・アントニオ・デ・ラ・フロリダ礼拝堂 (La iglesia de San Antonio de la Florida) / ゴヤが描いた天井のフレスコ画「聖アントニオの奇跡」/ Wikipedia Public Domain

サン・アントニオ・デ・ラ・フロリダ礼拝堂についてはこちらもどうぞ。

マドリード市民の反応

さて、1760年から精力的にマドリードの改造を推し進めてきたカルロス3世ですが、改造当初はマドリード市民にはあまり受けが良くなかったとのこと。自宅前の道の清掃や打ち水の義務まで課せられた市民は、しぶしぶ実行していたのでしょう。そのことを側近が報告すると、カルロス3世は「わが市民は、体を洗うと泣く子供のようだな。( Mis vasallos son como los niños: lloran cuando se les lava.)」と答えたといいます。言い得て妙とはこのことですね。

この時代、カフェテリアや劇場が現れ、闘牛、ダンス、コンサート等、マドリード庶民の新しい楽しみや習慣が生まれていきましたが、それも皆カルロス3世のお陰です。マドリード市民は、プラド通りなどを散歩し、カフェテリアに入ってその頃人気だった飲むチョコレートとスポンジケーキ(bizcocho)を楽しんだのです。日本の庶民が楽しんだ江戸文化に近いものがあったかもしれません。

そしてついには、1797年にマドリードにやってきたフランス外交官に、「ヨーロッパの中で最も清潔な街の一つだ」と言わしめるほど、カルロス3世が改造したマドリードは、衛生的かつ近代的な街へと変貌を遂げ、21世紀の現在でも魅力的な街となりました

カルロス3世に会いに行こう!

プエルタ・デル・ソル広場 (Puerta del Sol) にある騎馬像は18世紀のスペイン王カルロス3世です。1994年、マドリードの都市改造、近代化を行った「マドリッド最良の市長」(El mejor alcalde de Madrid)」であるカルロス3世の偉業を讃えこの騎馬像が建てられました。カルロス3世は、スペイン国の王であり「市長」ではなかったのですが、、、。300年経った現在、カルロス3世はマドリード市民、ひいてはスペイン人から最も好意を持たれている王の一人です。

狩猟をこよなく愛していたというカルロス3世。別名「狩猟家 (El Cazador)」とも呼ばれています。馬にまたがる姿は一番彼らしい姿かもしれません。プラド美術館には、ゴヤが描いた「カルロス3世、狩猟家 (Carlos III, Cazador)」という作品があります。残念ながら馬上姿ではありませんが。

ゴヤ 「カルロス3世、狩猟家」/ プラド美術館

また、チョコレートが大好きだったようで、毎日同じカップに入れて飲んでいたとか。

カルロス3世が造ったプラド通りを散歩し、プラド美術館や様々な建造物、威厳のある噴水などを鑑賞したら、カフェテリアに入って彼の時代に流行っていた、そして今も多くのスペイン人が大好きな、飲むチョコレートとスポンジケーキ(bizcocho)を楽しんで18世紀のカルロス3世時代に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。300年以上経った今も、カルロス3世が望んだ美しく、近代的で魅力的なマドリードをあなたも実際に堪能してみてください。

マドリード 情報

・マドリードの観光ガイドはこちらにお任せ!

  -マドリード観光オフィシャルサイト(日本語)   https://www.esmadrid.com/ja

・上記サイトの中にお得なマドリードの美術館、博物館カード情報があります。ちなみに、「美術館通りカード (Abono Paseo del Arte)」は、人気のプラド美術館・ティッセン・ボルネミッサ美術館・ソフィア王妃美術館の3つの美術館が対象のお得なパス。30,40ユーロで通常よリ20%お得ですよ。「国立美術館・博物館年間カード (Tarjeta anual de Museos Estatales」は、かなりお得な36,06ユーロ。「国立考古学博物館 (Museo Arqueológico Nacional)」、「ソロージャ美術館 (Museo Sorolla)」等多くの美術館・博物館が含まれている欲張りなカードです。ただ、ティッセン・ボルネミッサ美術館は含まれていないのでご注意を!

  -マドリード観光オフィシャルサイト(日本語)/観光カード     https://www.esmadrid.com/ja/kanko-card

・マドリードの歴史に興味がある方は、是非「マドリード歴史博物館」へ!サーモンピンクの建物で、バロック様式のファサードも一見の価値ありです。

-マドリード歴史博物館 (Museo de Historia de Madrid) 住所:フエンカラル通り 78番 マドリード (C/ Fuencarral, 78 Madrid) 最寄りのメトロ:トリブナル (Tribunal 1号線 水色ライン、10号線 紺色ライン) 電話番号:91-701 18 63  Fax:91-701 16 86  開館時間:火~土 10:00~20:00 / 日・祝 10:00~20:00 *月曜日・1月1日・5月1日・12月25日は休館  入場料:無料

圧巻!スペインのアマポーラ畑-アマポーラの海

5月も終わり6月も半ばです。2020年の約半分が過ぎていこうとしています。世界中で感染が広がった新型肺炎コロナウイルスに翻弄された2020年前半、後半は「新しい生活様式(スペインでは”Nueva normaldad”です)」と呼ばれる窮屈な生活、「古い生活様式」(Vieja normalidad)が恋しくなる生活が始まることになりそうです。特効薬やワクチンがない以上、まだまだ気を抜かず手洗い励行、距離を置く、なるべく家に居る、というような感染対策が続きます。

さて、去年のブログにも5月はアマポーラの季節だと書きましたが、今年は4月に雨が多く、更に丁度外出禁止令が出ていて踏み荒らされることもなく、各地で素晴らしいアマポーラ畑が広がっています。今日は、友人から送られてきたカスティーリャ・イ・レオン州、サモーラの街のアマポーラ畑の写真を紹介します。

真っ赤な絨毯を敷き詰めたような美しさで、深い赤と石造りの建物がマッチしています。高さは約1メートルほどにもなり、まるでアマポーラの海のよう。

今年のアマポーラの季節はそろそろ終わりを迎えます。コロナウイルスも終わりを迎え、来年にはここスペインの美しいアマポーラ畑を見に来ていただきたいなと心から願っています。

スペインの春を呼ぶ花アーモンド

パッと見は桜と見間違う

今年のスペインは記録的な暖冬で、ここサラマンカではしばらく20度近い気温が続いていました。その暖かな気候に誘われて、一気にアーモンドの花があちこちで咲き誇っています。

20年以上前に初めてここスペインにやってきて、サラマンカでスペイン語を勉強し始めたのも丁度2月の寒い時期でした。あの頃は、もっと寒くてかなり雪が降ったりして、もっと温暖なスペインの冬を想像していた私は、あまりの寒さに毎日震えていたのを思い出します。そして、3月に入りサラマンカからちょっと田舎に足を延ばしたら、なだらかな丘に桜の花が咲いているのが見え、「えー!サラマンカでも桜が咲くんだ!でもまだ3月の頭なのに、まだまだ寒いのに・・・?」と不思議に思い友人のスペイン人に尋ねると、「あれはアーモンドの花だよ。」と教えてくれました。「へー、アーモンドの花って桜の花そっくり!」と驚いたことを今も鮮明に覚えています。

アーモンドの花と桜の花の見分け方

アーモンドの花と桜の花がよく似ているのもそのはず。アーモンドは、バラ科さくら属の落葉樹です。桜とは従妹同士のようなもの。似ているはずです。我が家のお向いさんの庭にも立派なアーモンドの木があり、花を楽しんだ後はアーモンドの実も楽しめる、”花も団子も楽しめる”楽しみの多い木です。アーモンドの花は、桜と同じように花弁が5枚あり、花弁の先が少し割れています。色も白っぽいものからピンクのものまでありますが、我が家付近のアーモンドの花は、日本の桜の花より薄いピンク色のものが多いようです。本当に、パッと見ただけまたは遠目に見ただけではアーモンドと桜の花の違いを見分けるのは難しいでしょう。では、どうやって見分けたらよいのでしょうか。桜の花はご存知の通り、枝から花柄(かへい)が出てその先に花が咲きます。しかし、アーモンドには花柄がないか極端に短く、枝から直接花が咲いています。一般的に、アーモンドのほうが桜より1か月以上前に花が咲き始めるので、今の時期に桜そっくりの花をスペインで見かけたら、アーモンドの花に間違いないです。

花弁がなく直接枝に花が咲いている

アーモンド栽培

アーモンドの木がスペインで栽培されるようになったのは、なんと2000年以上も前から。東から交易などできた人-フェニキア人-によって、中央アジア原産のアーモンドがペルシャやメソポタミアを通って西の果てスペインまでもたらされたらしい。その後は、ローマ人がさらに広めていったとのこと。

2018年のデータでは、スペインは米国に次ぐ世界第2位のアーモンド生産国です。それだけに、もしこのアーモンドの花の時期にスペインを訪れる機会がある方は、きっと色んな所でこの桜によく似たアーモンドの花を見ることができますよ。

色々なアーモンド製品

お菓子に飲み物、肌のクリームなど、スペインでは色んなアーモンド製品を見ることができます。クリスマスの時期に必ずスペイン中の家庭で食べられるお菓子トゥロン(Turrón)。アーモンドの実から作るこのトゥロンは、アーモンドの実が丸ごとたっぷり入っているハードタイプと、アーモンドの実をすりつぶしてペースト状にし、油を加えて柔らかでかつチョット粘り気のあるソフトタイプの2種類があります。個人的には、ハードタイプのものが大好きですね。他には、やはりクリスマスによく食べられるマジパン(Mazapan)。巡礼の街サンティアゴ・デ・コンポステーラのお菓子タルタ・デ・サンティアゴ(Tarta de Santiago)は、アーモンドを粉状にしたアーモンド・プードルで作られていて、しっとりとした口触りが何とも言えず美味!是非、サンティアゴ・デ・コンポステーラに行く方は試食していただきたいお薦めのお菓子です。日持ちも良いので、お土産にも喜ばれますよ。

飲み物では、アーモンドのオルチャータ(Horchata de almendra)と呼ばれるアイスドリンクも夏場にはお薦め。また、アーモンドオイルもシャワー後に全身に塗ると保湿効果抜群、低刺激なので赤ちゃんに塗っている人も多いですね。日本ではあまり見られないかもしれませんが、アーモンドオイル入りのシャンプーなども多いです。アーモンドオイル物をお土産にするのもいいかもしれません。

チョコレートのトゥロン、丸ごとアーモンドが使われています

美術におけるアーモンド

キリスト教の国スペインを旅していると、度々Mandorla(マンドルラ)と呼ばれるアーモンド形の光輪を見ます。もともとイタリア語でアーモンドという意味だとか。ロマネスク様式やビザンチン様式の美術品によくみられ、特に復活したキリストを表現する際にこのマンドルラが使われています。また、聖母マリアや聖人にも使われています。下の写真でも、アーモンド形のマンドルラの中にキリストが座っています。このような彫刻、絵画はロマネスク様式が多く存在するスペイン北部ではよくみられるので、注意して見てくださいね。

モアルべス・デ・オヘダの聖ヨハネ教会(パレンシア県)

アーモンドのお花見

至る所にアーモンドの木があり、花真っ盛り(ラ・フラヘネーダ(La Frageneda)

ここサラマンカ県にあるラ・フラヘネーダ(La Frageneda)という村には村の人口の何倍ものアーモンドの木が栽培されています。ポルトガルとの国境をなすドゥエロ川とアゲダ川の合流点にあるこの村は、2月末から3月頭はアーモンドの花盛りです。アーモンドのお花見に行くにはもってこい。お弁当ならぬスペインのボカディージョ(フランスパンで作ったスペイン式サンドイッチ)を持って、是非ラ・フラヘネーダ(La Frageneda)までお花見をしにぶらぶら散策しませんか。きっと、お決まりの観光コースだけでは味わえない、ディープな旅が楽しめること間違いなしです!

スペインの古代ローマ遺跡 - 大邸宅 ラ・オルメダ(La Olmeda)

遺跡はすっぽりと建物に覆われて劣化から守られてる(筆者撮影)

スペインにも古代ローマ時代の遺跡が残っていますが、やはり一番有名なのはセゴビアにある水道橋でしょうか。それともタラゴナの古代劇場でしょうか。セゴビアと同じカスティージャ・イ・レオン州にあるパレンシア県のラ・オルメダと呼ばれる古代ローマ時代の大邸宅は、日本人の観光客がほとんどいない穴場的存在で一見の価値が十分にあります。特にここで発掘されたモザイク画は、ヨーロッパの中でも最も保存状態の良いものの一つです。今日は、日本では知られていない古代ローマ時代の大邸宅ラ・オルメダを紹介します。

ラ・オルメダについて

紀元4世紀、このラ・オルメダと呼ばれる大邸宅は造られました。この大邸宅は当時の大地主が所有し、生活の場として奴隷や使用人達も暮らすあたかも村の縮図といえるようなところだったようです。建物自体の面積が4,400㎡にもおよび、中央には中庭が設けられ、その周りには精緻なモザイク画が施された4つの部屋がありました。部屋が35部屋もあり、そのうちの12部屋には古代ローマの床下暖房の設備が整っていました。また、その35部屋のうちの26部屋には多色装飾されたモザイク画がありそのモザイク画の占める面積は1,450㎡もありました。大邸宅には4つの塔があり、2つは四角形、残りの2つは八角形でした。

ローマ時代の大邸宅ラ・オルメダの見取図(筆者撮影)

このラ・オルメダで是非見て頂きたいモザイク画は、1,500年という時の経過を感じさせないような当時の色が残る美しいものです。人物画には顔の陰影までモザイク画とは思えないほど緻密に表現され、当時の技術の高さがうかがえます。技術の高さといえば、床下暖房設備には驚かされます。ここカスティーリャ・イ・レオン州の冬は長く厳しいものです。当時、寒い冬の間もこれらの部屋で快適な時間を過ごすことができたことは容易に想像できます。もっと時代が下がり中世のお城を訪れると、暖を取るための暖炉は部屋にありますが、どう考えてもローマ時代の床下暖房設備のほうが断然暖かかったろうなと思うと、つくづく古代ローマの技術の高さに舌を巻きます。

ラ・オルメダの遺跡では、古代ローマの共同浴場や墓地も見れます。また、ローマ時代の様々な道具や屋根瓦なども展示してあり、当時の生活の様子がうかがわれ興味深いです。

ラ・オルメダの発見

1968年、この遺跡は偶然に発見されました。ラ・オルメダ遺跡が1500年以上もの長い年月、誰の目に留まることなく静かに地下で眠っていたその眠りを破られ、発掘によりその姿を現すようになったのは、ハビエル・コルテス氏のひとかたならぬ情熱によるものでした。

ハビエル・コルテス氏は、ラ・オルメダの遺跡が眠る土地の所有者で農業を営んでいました。ある場所で何度もトラクターが引っかかることに疑問を抱き、土を調べると小さな同じ大きさの石のようなものが沢山含まれていることに気づきました。そして、それがモザイク画のモザイクではないかと思い、コルテス氏は独自で発掘を始めたのです。それから何と12年間発掘を自費で続けました。その間、大変保存状態の良いモザイク画や数々の生活用品、ローマ時代の硬貨などが発掘されました。1970年から1984年までは自宅の2部屋を展示室として出土してきた様々な物を展示して一般に公開していました。そして、1980年にパレンシア県に土地・遺跡共々寄贈したのです。

このラ・オルメダ遺跡は、ハビエル・コルテス氏の並々ならぬ遺跡に対する情熱から見つかったといっても過言ではないでしょう。

ラ・オルメダ遺跡(筆者撮影)

モザイク画

1,450㎡も占めていたというモザイク画。中でも大広間にあるモザイク画は、オデュッセウスとアキレウスの神話を表しています。下の写真でもわかりますが、保存状態の良い多色装飾のモザイク画が生き生きと描かれています。動きがあり、緻密な陰影によってより立体的なものに仕上がっているうえ、その大きさにも圧倒されます。当時、モザイク画は専門家が作成していました。おそらくこのモザイク画もどこからか専門家を連れてきて作成したものだと考えられています。

このモザイク画のモチーフとしては、スキーロス島のアキレウス、狩猟の様子、イベリア半島の動物、楕円形をしたメダイヨン、肖像画などが描かれています。周りに施された模様も複雑で丁寧に仕上げられています。

中央上にはスキーロス島のアキレウスが。(筆者撮影)
端正なギリシア風の顔立ち。水鳥とイルカの模様も。(筆者撮影)

当時、色鮮やかで美しいモザイク画がこの大邸宅の住人たちの目を楽しませ、訪れる客人たちを驚嘆させたことでしょう。またカスティーリャ・イ・レオン州の長くて暗い寒い冬にあっても気持ちを明るくさせる役割を果たしていたに違いありません。そして、永い眠りから目覚めさせられ、ハビエル・コルテス氏らの目の前にその姿を現した時の彼らが受けた衝撃的な感動を想像するだけで、こちらまでドキドキさせられます。

大広間とは別の部屋に施された8つの花弁がある花模様。(筆者撮影)

浴場

浴場は、温かいお湯の浴場と冷たい水の浴場の二種類があったとのこと。また、浴槽はかなり大きなもので湯船の中で座る場所も設けられ、四角形の四隅は丸くなっていて快適そうです。また、浴場の隣にはお手洗いもあり、驚いたことには、便座は木製でできていて座り心地も計算されていたようです。そして、浴場からの水を使っての水洗トイレ形式でした!

手前が浴場部分で、角は丸く、段差があるのは座るため。奥がトイレになっていて、木製の便座が。(筆者撮影)

博物館 – 聖ペドロ教会(サルダーニャ)

2020年1月現在は、ラ・オルメダから出土した様々な物は近郊の村サルダーニャの聖ペドロ教会に移され展示されています。訪れた時の説明によると、様々な物が出土され、当時の生活の様子を窺い知ることができます。例えば、ラ・オルメダがあるパレンシア県には海がありません。海がある北に位置するアストゥリアス地方まで行くには200キロ以上の道のりですが、ラ・オルメダ遺跡では大量のカキ(貝)が掘り出されているとか。往復400キロ以上もの道のりも美味しいものを求めてなんのその!何か特別なお祝い事がある毎に、アストゥリアス地方の海岸までカキを採りに行っていたようです。また、出土している装飾品に用いられている石-スペイン語ではアサバッチェ(azabache)と呼ばれる黒石(ジェット/jet)-は、スペインではアストゥリアス地方でしか採れない石です。ここの主人はかなり裕福な生活を送っていたようです。私の目を引いた展示物のひとつに、子供用の靴がありました。皮で作られたものですが、とても1500年以上も昔の靴とは思えない機能的かつ可愛いデザインでした。

子供用の皮のブーツ(筆者撮影)

さいごに

ラ・オルメダは単にローマ時代の遺跡を見れるだけではなく、その発見者であるハビエル・コルテス氏の発掘の歴史を知ることも面白いです。また、この遺跡を覆うように建てられた建物自体も、建築という観点から一見の価値があります。今回ご紹介しませんでしたが、ラ・オルメダ遺跡の近くに別のローマ時代のラ・テハーダ遺跡もありますので、併せて見学されることもできます。

その他、ラ・オルメダ遺跡の出土品が展示してある聖ペドロ教会のあるサルダーニャという村は5kmほどの距離にあり、車だと5分程度で行ける村です。今回、村の広場はあいにく工事中で見れませんでしたが、小さいながらも可愛い村です。ぜひ足を延ばしてみてください。

サルダーニャの村の入口(筆者撮影)
サルダーニャ村にあるねじれた家(筆者撮影)

ラ・オルメダ遺跡 開館情報

住所:ペドロサ・デ・ラ・ベガ、パレンシア(Pedrosa de la Vega, 34116 – Palencia)
GPS検索:G.P.S. Latitud Norte: 42° 28’ 50’’ / Longitud Oeste: 4° 44’ 11’’
開館時間:火~土 10:30~18:30(最終入館 18:15)  
*月曜日(祭日に当たる日は開館している場合もあるのでウエッブページでご確認を)・1月1日・1月6日・12月24日・12月25日・12月31日は休館                    1. 入場料(ラ・オルメダ遺跡と聖ペドロ教会の博物館 共通券):               一般;5ユーロ/1人・割引料金; 3ユーロ/1人・特別料金;1,5ユーロ/1人          *12歳までは無料                                   *国際学生証を提示すれば割引料金適用。英語で書かれた教師証明書などがあれば割引の可能性あり。                                           *5月18日と毎週火曜日15:00以降は無料。但し、火曜日はガイドツアー無し。         2. 入場料(ラ・オルメダ遺跡・聖ペドロ教会の博物館・ラ・テハーダ遺跡 共通券):      一般; 6ユーロ//1人 ・割引料金; 4ユーロ/1人・特別料金;2ユーロ/1人          *12歳までは無料                                   *国際学生証を提示すれば割引料金適用。英語で書かれた教師証明書などがあれば割引の可能性あり。                                           *5月18日と毎週火曜日15:00以降は無料。但し、火曜日はガイドツアー無し。 

ラ・オルメダ 情報

ラ・オルメダ遺跡の公式サイト(英語・スペイン語・フランス語)            https://www.villaromanalaolmeda.com/

当時の様子を再現した3Dの映像がYouTubeで見れます。    https://www.youtube.com/watch?v=MRPaXpr7qU8

サルダーニャ村の公式サイト(スペイン語)                        http://saldana.es/index.php/turismo/

ラ・テハーダ遺跡の公式サイト(英語・スペイン語・フランス語)              https://www.villaromanalaolmeda.com/villa/tejada/presentacion

ナショナルジオグラフィックが選んだスペインのローマ時代の遺跡10選(残念ながらラ・オルメダ遺跡は選ばれていませんでした。)興味のある方はどうぞ。               https://historia.nationalgeographic.com.es/a/10-fantasticos-restos-romanos-espana_11129/2

レオン(León)へいこう!(1)

ここスペインでは、11月1日は諸聖人の日(Día de Todos los Santos)と呼ばれ、祝日となっています。そして翌日11月2日は死者の日(万霊節)です。今年は、1日が金曜日で3連休となったので久しぶりにレオン市(León)に行ってきました。

聖マルコス教会(Iglesia de San Marcos)(筆者撮影)

この日は、スペインの多くの人たちが実家に帰り家族と一緒に過ごします。そして、花を持って年に一回のお墓参りにいきます。最近では、こういう伝統的な過ごし方をする人は少なくなってきましたが、それでもまだまだ健在です。

聖フランシスコ公園(Parque San Francisco)の紅葉(筆者撮影)

レオンの魅力

レオン市は、スペイン、カスティーリャ・イ・レオン州にあり、高度837m、夏は涼しく冬は寒さが厳しい街です。かつてのレオン王国の首都で、その歴史は2,000年にもさかのぼります。レオンの魅力は、レオン市内を歩いて回ると感じることのできる居心地の良い空間、川に沿って伸びる緑地遊歩道を家族連れやお年寄り、カップルがのんびりとおしゃべりしながら散歩するそのゆったりと流れる時間、ロマネスク様式のサン・イシドロ教会(11~12世紀)、ゴシック様式の大聖堂(13世紀)、ルネッサンス様式のサン・マルコス教会(16~17世紀)、モデルニスモでガウディ建築のカサ・ボティネス(19世紀)に代表される各時代の建物が物語る歴史にあると言えるでしょう。

パパラギンダ通り(Paseo de Paparaguinda)を散歩する人たち(筆者撮影)
鳥居の除幕式(筆者撮影)

巡礼道にある街レオン

キリスト教の三大巡礼地に挙げられるサンティアゴ・デ・コンポステーラは、聖ヤコブ(スペイン語では聖サンティアゴ)の遺骸があるとされています。その巡礼地サンティアゴ・デ・コンポステーラへヨーロッパ各国から巡礼者が訪れていました。最盛期の12世紀には年間50万人を超えたというから驚きます。

今も、ユネスコの世界遺産に登録されている「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」は、年間約30万人の巡礼者が訪れていて、過去25年間で毎年その数が増えている人気のルートです。

そして、この「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」の主要道はレオンの街を通っています。この「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」と和歌山の「熊野古道」は、1998年に姉妹道となりました。

そして、ここ巡礼路の主要地であるレオン市内には、レオン市と日本の姉妹交流、協力と歓迎の意味を込めてモニュメントも作られています。それは、「Ruta del Conocimiento(知の道)」と呼ばれ、巡礼者や日本人観光客のためにレオン市が作ったルートで、「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」にも重なっているものです。

ちょっと中心地から離れたレオン市入口にあるプエンテ・カストロ地区の公園内に、朱塗りの鳥居が建てられ、桜の木も植えられています。また、ルート内に5つの道標が設置してあり、それぞれの道標にはスペイン語と日本語のメッセージが書かれています。

日本から1万km以上離れた異国の地スペインで、レオン市が日本人観光客を歓迎し、思いがけなく日本の文化を感じる鳥居に出会うという不思議な体験ができます。旅の思い出に立ち寄って見てみるのも一興でしょう。春には、桜の花も見ることができますよ。

コルトとピリッと辛いムール貝のピンチョス   (筆者撮影)

バリオ・ウメド(Barrio Húmedo)VS バリオ・ロマンティコ(Barrio Romántico)

レオンに来て絶対行かなきゃいけないところ!旅の醍醐味は観光のみではありません。地元の人たちが行く気さくなバルやカフェに立ち寄り、まるで自分も地元の一人になった気分になれるようなところ、地元の人たちの素顔を垣間見ることができるところでのんびり過ごすことも旅の楽しみのひとつでしょう。

バリオ・ウメド(Barrio Húmedo)と呼ばれる地区は、昼も夜もとても賑やかなところです。数々のバルやレストランがひしめき合い、通りには冬でも外にテーブルが出て賑わっています。レオンのバルは、それぞれのバルのおつまみがあり、ピリッと辛めの揚げたてポテトチップスが食べたければここ、色んな種類のコロッケが食べたかったらここ、ムール貝だったらここ、という風に、食べたいおつまみで行く店を決めるのがここレオン風です。

最近は、バリオ・ロマンティコ(Barrio Romántico)と呼ばれる地区もとても人気があります。こちらは、バリオ・ウメドに比べるともう少し落ち着いた感じでしょうか。こちらの方が家族ずれが多いようです。サント・ドミンゴ広場からレオン大聖堂に向かって伸びるルア通りを挟んで両方の地区が広がっているので、ぶらぶら歩きながら3~4軒ほどバルに立ち寄りワインまたはビールなどと一緒にピンチョスをつまんでみてはいかがでしょうか。

数件バル巡りをしたい方にお勧めの注文方法は、「コルト(corto)」と呼ばれる小さいコップのサイズのビールとピンチョス。あまりお酒に強くない方は、「コルト・デ・クララ(corto de clara)」がいいかも。これは、小さいコップにソーダ水で割ったビールがでてきます。これだと飲みやすいので、数件はまわれますよ!この小さいサイズの「コルト(corto)」はマドリッドなどではないサイズのビールで、マドリッドで「ウン・コルト・ポルファボール(Un corto, por favor)」と注文しても、きょとんとした顔でウエイターから見られるのでご注意を!

週末はゆっくりバルでおしゃべり(筆者撮影)

レオンの食べ物とワイン

レオンで是非試していただきたい食べ物は、モルシージャとセシーナ、そして子羊料理でしょう。ワインはビエルソ地方のワインがお薦めです。また、レオンは地ビールも種類豊富なので、是非試してくださいね。マラガト地方の郷土料理「コシード」も一度は食べてみたい料理です。マドリッドの「コシード」とは異なり、最後にスープがでてきます。ワインの美味しいビエルソに合う郷土料理は「ボティン」です。また、レオンはジビエ料理も美味しいですよ。また、ビエルソ地方の焼き赤ピーマンは絶品です。お肉の添えやサラダにしても美味しいこの焼き赤ピーマン、是非お試しください。お土産に買って帰るのもいいですね。

マラガト地方のカストリ―ジョ・デ・ロス・ポルバサーレス(Castrillo de los Porvasales)
コシードを食べるなら是非この村で!(筆者撮影)

レオンのお薦めのお土産

まずは、チョコレート。レオンからバスで1時間のアストルガにはチョコレート博物館があり、これは、ヨーロッパで初めてチョコレートが生産されたところがアストルガだからです。カカオ90%というチョコレートや、モルシージャ味のチョコレートなど他ではお目にかかれない不思議な味のチョコレートもあります。

次に、同じアストルガのお菓子「アストルガのパイ(Hojaldres de Astorga)」と「アストルガのマンテカード(Mantecados de Astorga)」もお薦め。マンテカードは、小麦粉、砂糖、卵、バターを材料とするパウンドケーキやマドレーヌに似たお菓子です。

また、「テクラス(Teclas de Hojaldre)」と呼ばれるお菓子や「聖ギジェルモのリボン(Lazos de San Guillermo)」は、私も大好きなお菓子です。是非ご賞味あれ!

ビエルソ地方のワインもお薦めです。ビエルソ地方の特産品赤ピーマンの瓶詰も美味しいですよ。

食べ物以外には、大聖堂の前のお土産屋さんにあるサン・イシドロ教会の暦プレートや手作りのバインダーなどが買える紙のお店屋さん(Abadía)も私のお気に入りのお店です。

聖イシドロ教会バシリカの農業カレンダー

ぜひ、レオン市内、レオン県内の街を散策しながら、あなたのお気に入りを見つけてくださいね。

アストルガの大聖堂(筆者撮影)

レオン観光 情報

http://www.leon.es/leon_turismo/

アストルガのチョコレート博物館 情報

住所:アストルガ市 アベニーダ・デ・ラ・エスタシオン16番地(Avd. de la Estación 16 )
TEL:(34)987 616 220
開館時間:火~土 10:30~14:00、16:30~19:00(最終入館 13:30、18:30)          日・祝 10:30~14:00(最終入館 13:30)  
*月曜日・1月1日・1月5日・1月6日・5月22日・12月24日・12月25日・12月31日は休館    入場料:2,50€                                      ウエッブサイト: http://www.aytoastorga.es/turismo-y-ocio/MUCHA/index.html

レオンお土産・お店 情報

レオンの地元のお菓子はこれ!  http://lazosdesanguillermo.es/es/

「La Rosaleda]-レオン大聖堂の近くにあるレオンの伝統的な食べ物-セシーナ、お菓子、瓶詰の保存食、チーズ、ワイン等-が売ってあります。是非のぞいて見てください!   http://www.despensalarosaleda.com/

「Abadía 」-本当に、素敵な紙が豊富に揃っていて、紙が好きな私はあれもこれも欲しくなってしまうお店です。ウメド地区にあります。  http://encuadernacionabadia.blogspot.com/

新世界発見ニュース第一報をもたらされた町バイヨーナ(Baiona)

ガリシア州のポンテべドラ県にあるバイヨーナは、大西洋に面する港町。この町は人口1万2千人(2018年統計)ほどですが、夏にはスペイン国中から避暑に来る人達でにぎわいます。海辺の散歩道を歩くと、魚介類満載のレストランやバル、観光客用のお店、お洒落なマリンウエアのお店などが並んでいて、ぶらぶら散歩するだけでも楽しい町です。

海沿いのこじんまりとした町バイヨーナ

この町は、現在パラドール(国立ホテル/4つ星)として使われているモンテレアル城またはバイヨーナ城で有名です。この大西洋に突き出したモンテレアル半島に、12世紀から16世紀にかけて要塞として建設されました。16世紀から17世紀にかけて作られた周囲約2㎞にわたる城壁に沿って遊歩道が作られていて、外洋からの風に当たりながら散歩するのはとても気持ちいいものです。特に私が訪ねた2019年9月上旬は、まだ夏のバカンスを楽しむ人たちがいるものの、7月8月に比べグッと観光客も減り落ち着いた雰囲気。それに日差しも真夏のようには強くなく、でも海風は心地よい、という丁度良い季節です。

ここからパラドールへ

このバイヨーナ、実は歴史的には重要な町で、欧州の中で一番最初に新大陸発見ニュースがもたらされた町なのです。1493年3月1日、コロンブス第1回目航海の際、マルティン・アロンソ・ピンソンに率いられたピンタ号がスペインへの帰還で最初に寄港した港、それがバイヨーナ港でした。

その歴史的出来事を記念し、毎年3月1日には「ラ・アリバーダ」(La Arribada/入港・到着という意味)と呼ばれる中世のお祭りが催されるとか。

www.baiona.org より

ちなみに、バイヨーナとアンダルシア地方ウエルバ県にある町パロス・デ・ラ・フロンテーラ(Palos de la Frontera)は姉妹都市ですが、これは、パロス・デ・ラ・フロンテーラがコロンブス第1回目航海の際、1492年8月3日にスペインを出港した時の町だったからです。

さて、バイヨーナは魚介類料理がおいしいことで有名なので、地元の人がお薦めのレストランに行きました。「カサ・リタ」(Casa Rita)というレストラン。決して安いレストランではないけれど、キビキビとしたプロのウエイターとそのサービスは確かなものでした。そして2時間以上かけてのんびりと食事をするこの至福の時間は、今どきの日本の食べ物屋さんで2時間限定です、などど時間を気にしながら食べるところでは味わえない、充実した食事の時間となりました。

サンブリーニャ(Zamburiña)と呼ばれるホタテ貝に似た二枚貝のこの貝、今まで白っぽい色のサンブリーニャ貝しか食べたことがなかったけれど、ここ「カサ・リタ」で出たのはこの辺り特産のサンブリーニャで、黒っぽい貝でした。普通のに比べて一回り位大きく、身がしまって弾力があって食べ応えがあり、味も濃厚でとても美味しかったです。オリーブオイルを好みでかけても美味しく、貝独自の味を消すことなく貝そのものの味を引き立てるのに相性の良いアルベキーナ(arbequina)というオリーブの種類のオイルを選んであったのも納得でした。

サンブリーニャ貝(Zamburiña)

もちろん食事と一緒に飲むのは地元ガリシア州の白ワイン、リアス・バイシャス(Rías Baixas)のワイナリー、テラス・ガウダ(Terras Gauda)。その上質な果実味の飲みやすいワインは私もお気に入りのひとつ。日本で地産地消を奨励していますが、ここガリシアに来たら地元でとれた魚介類と地元で作る白ワインのコンビネーションに勝るものはないでしょう

さて、バイヨーナから約5,5㎞ほど海沿いの遊歩道に沿って歩いていくと、1時間ちょっとでアメリカ海岸(Playa América)と呼ばれるビーチに着きます。アメリカ大陸で一旗揚げて帰ってきたスペイン人の人たちが多く住み始めたことがその名の由来とか。私が最初に訪れた25年前は、本当に真夏でもビーチにいる人は少なかったのですが、今では、場所を探すのにも苦労するほど人気のビーチになっています。大西洋は地中海とは比べ物にならないほど海水が冷たいにもかかわらず、9月だというのにかなりの人が泳いでいました。

サンダルを脱いで、チョットひんやりする海水に足を入れながらビーチが終わるパンション(Panxon)の町まで散歩してみるのも一興。私以外にはアジア人に出会うこともなく、海に夕日が沈む時間(ちょうど9時ぐらいでした)までゆっくり過ごしました。パンションに着いて、海に面したバルに立ち寄り、ちょっと白ワインとマテ貝(navajas)をたのみバルにいる他のスペインの人たちを見ると、みなそれぞれが楽しそうに友人や恋人、または家族とおしゃべりしながらビールやワインを飲んでいます。ああ、これがスペイン的な人生の楽しみ方だなと実感しました。

アメリカ海岸から見えた夕日

どこへ行っても観光客だらけ、特にスペイン人以外の観光客が多いマドリッドやバルセロナに比べ、ここバイヨーナやパンションの町はほとんどが地元の人かスペイン人観光客という町なので、遠い異国に来たという気分に浸れるかも。なにより、スペイン的な人生の楽しみ方をあなたも味わえることでしょう。

バイヨーナのパラドール 情報(英語・スペイン語・フランス語等)

https://www.parador.es/es/paradores/parador-de-baiona?gclid=EAIaIQobChMI1PaH3cXH5AIVSUHTCh0KwQGMEAAYASAAEgJ-NfD_BwE&gclsrc=aw.ds

バイヨーナ 観光情報(英語・スペイン語・フランス語等)

http://www.baiona.org/web/turismo/inicio

スペインを車でまわる!レンタカーでスペインを周る方、必見!

日本の約1,3倍の国土面積を持つスペイン。でも、高速道路は南北東西に延びていてとても便利です。車での移動は時間の節約にもなり、また公共交通機関では訪ねることができない小さい村などにも立ち寄ることができ、スペイン観光にお薦めの交通手段です。

そこで、スペインを車で観光するために事前に知っておいた方が良い情報を提供します。

1. 運転に当たっての注意点

交通安全規則

禁止事項運転中の携帯電話の使用。ただし、ハンズフリーの電話に関しては使用しても大丈夫です。                                          義務付け事項シートベルトの着用。これは、運転者のみではなく、乗車している全員のシートベルト着用が義務付けられています。                            黄色の反射ベストの着用。高速道路に限らず、車道や路肩に車を止めて車の外に出る場合は、黄色の反射ベストの着用が義務付けられています。                       三角停止板(三角表示板)の設置。一定の時間車を車道や路肩に止める必要がある場合は、三角停止板(三角表示板)の設置が義務付けられています。

制限速度に注意

制限速度は日本より早く、高速道路の制限速度は時速120キロ。また、細かく道路の広さなどにより制限速度が異なります。一般的な制限速度は次の通りですが、通りの右側にある制限速度標識に注意しながら運転した方が無難です。実際、同じ道でも、学校の前などに差し掛かるといきなり時速50キロ制限から30キロ制限となったりして、慌ててブレーキをかけ速度を落とさなければならない場面も。

  • 高速道路:120 Km/h
  • 国道:100 Km/h (片側2車線以上の道路、および緊急自動車用の専用車線または幅広車線を有する道路)
  • 一般道路:90 Km/h 
  • 市街地:50 Km/h (スクールゾーンでは、30 Km/h)

街中は一方通行が多い

スペインの街中、特に歴史のある街では一方通行が多いことにも注意が必要です。日本のように超狭い道路の離合に悩まされることは少ないという利点はありますが。また、目的地に着くのに結構時間がかかるので、時間には余裕をもったほうがよいでしょう。

信号機ついて

街中では、もし車用の信号が青でもそれなりに注意する必要があります。というのも、歩行者が赤信号でも平気で渡っているからです。どうかすると、大通りで車の量が多いところでも平気で横断しています。お年寄りで走ったりできないにもかかわらず、強引に点滅信号で横断歩道を渡ろうとする人や、小さな子供連れで手を引きながら走ってわたる親子も多々見かけます。ただ田舎に行くとほとんど信号機はなく、ラウンドアバウト(ロータリーのような円形交差点)が多いです。このラウンドアバウトでは左優先ということをお忘れなく。また村の入口に赤信号があるときは、車の速度を落とすと黄色の点滅に代わりそのまま通り抜けることができます。

速度レーダー

スペイン国内では速度レーダーが数多く設置されています。そして、かなり厳しく取り締まりが行われているので、制限速度10キロ未満のオーバーでも罰金の対象になります。この速度レーダーのカメラによって写真を撮られ、スペイン旅行から帰ってしばらくしたら日本にまで罰金支払い請求書が送ってきた!という事例もあるようなので、スピード違反には十分気を付けた方が良いよいでしょう。

2. 駐車について

スペインの路上有料駐車は、青色区、緑色区、オレンジ色区の色分けがしてあります。各都市により多少の違いはありますが、一般的には次のような決まりがあります。

  • 青色区(Zona Azul)-有料駐車場で、その近辺に自動券売機があります。駐車制限時間は、都市により異なり2時間から4時間くらいです。
  • 緑色区(Zona Verde)-住民のための制限時間のない有料駐車場で、住民ではない人が駐車する場合は、各都市によって2時間ほどの時間制限があります。また、この区の特徴としては、住民でない人の駐車料金が割高になっていることです。
  • オレンジ色区 (Zona Naranja)-各都市によって異なり(オレンジ色区が無い街も多いです)、住民のみが駐車できる街もあれば、住民以外も駐車できる街もあり、注意が必要です。

この路上有料駐車場を利用する場合は、有料駐車場近辺に自動券売機があるので、停める時間分だけお金を投入し、レシートが出てきたらそのレシートを外から見えるようにダッシュボードの上に置いてから車を出ます。駐車違反を取り締まる人が一日中チェックしてまわっていて、レシートのない車や、時間超過の車には罰金の切符を切っているので、くれぐれも時間超過などには気を付けて下さい。

その他、白色や黄色の線が引いてあるところもありますが、白色は無料駐車可能区で、誰でも時間制限無しで駐車できます黄色は駐車禁止区です。黄色で車線やバッテンが書かれていることが多いのでわかりやすいでしょう。

3. チャイルドシート

基本的に、136cm以下の子供は、認証されたチャイルドシートが必要です。また、チャイルドシートを使用していても、前方の座席に136㎝以下の子供を載せることは禁じられています。また、赤ちゃんを抱っこして載せることも禁じられています。赤ちゃん用の認証されたチャイルドシートが必要となります。

4. 注意事項

もし、車内に荷物を残していく場合は、路上駐車場ではなくいわゆる管理人のいる駐車場(Parking)を利用した方が賢明でしょう。というのも、窓から見えるところに荷物を残すと窓ガラスを割られて盗難に遭う危険性が高いからです。カーステレオやナビなどもダッシュボードの中に収納して下さい。後ろのトランクに荷物を入れておく場合は、駐車場に着いた時点でのトランクの開け閉めも避けた方が安全です。

5. レンタカー

スペインでレンタカーを借りるには、年齢が21歳以上でなければいけません。また、ほとんどのレンタカー会社にて、運転者は運転歴1~2年以上を求められます。レンタカーを借りるにはクレジットカードが必要なので、なので、この点も注意が必要です。

6. 情報

スペイン観光公式サイト

https://www.spain.info/ja/informacion-practica/consejos-viaje/consejos-practicos/conducir_en_espana/