スペインでバードウォッチング!-種類別 スペインの野鳥 日本語名(コオノトリ科)

ここでは、スペインに生息する野鳥の名前を、種類別に集めてみました。スペイン語名をクリックしてもらうと、スペイン鳥学会のホームページに飛びます。残念ながら日本語版はありませんが、英語での鳥の名前は出ています。スペインで野鳥観察されるとき、またはスペインの旅の途中で見かけた鳥のスペイン語名を知りたいときに、少しでもお役に立てれば幸いです。

Cigüeñas = コオノトリ科

スペイン語日本語ラテン語//常駐/偶然
Cigüeña comúnシュバシコウCiconia ciconia常駐
Cigüeña negraナベコオCiconia nigra常駐
ナベコウ(Cigüeña negra)(写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

ちょっとスペイン語-13-野菜の名前集合!

ここでは、ちょっとしたスペイン語の言い回しや、ことわざ、話し言葉など、辞書には載っていない単語も含めて紹介していきます。スペイン語を勉強している方には言葉の幅が広がるお手伝いができればいいなと、スペイン語には興味ないという方には雑学として楽しんでいただければいいなと思っています。

スパニッシュオムレツに欠かせない野菜は何?(写真:筆者撮影)

今回は、スペイン語を勉強している皆さんに質問です。次の野菜の名前でご存知でしょうか?いずれもスペインの食卓でよくお目にかかる野菜ばかりです。幾つ名前を知っているかチャレンジしてみてください。

  1. Cebolla
  2. Zanahoria
  3. Patata
  4. Puerro
  5. Tomate
  6. Acelga
  7. Espinaca
  8. Repollo
  9. Aguacate
  10. Lechuga
  11. Brécol
  12. Coliflor
  13. Apio
  14. Espárrago
  15. Alcachofa
  16. Calabacín
  17. Berenjena
  18. Pepino
  19. Pimiento
  20. Calabaza
ズッキーニの花と実(写真:筆者撮影)

さて、正解は-

  1. Cebolla 玉葱
  2. Zanahoria   人参
  3. Patata    ジャガイモ
  4. Puerro    長ネギ
  5. Tomate    トマト
  6. Acelga ふだん草
  7. Espinaca ほうれん草
  8. Repollo キャベツ
  9. Aguacate アボカド
  10. Lechuga レタス
  11. Brécol     ブロッコリー
  12. Coliflor カリフラワー
  13. Apio     セロリ
  14. Espárrago   アスパラガス
  15. Alcachofa アンティーチョーク
  16. Calabacín   ズッキーニ
  17. Berenjena   ナス
  18. Pepino    キュウリ
  19. Pimiento   ピーマン、パプリカ
  20. Calabaza   かぼちゃ
スペインのピーマンは肉厚で大きいサイズが多いが、この写真のは日本サイズの黄ピーマン(写真:筆者撮影)

さて、幾つご存知でしたか?もし、10個以上の名前を知っていたら、かなりスペイン語の野菜の名前に詳しい方ですね!

スペイン旅行の際には、是非スペインの野菜たちを見に市場(Mercado)に寄ってみてください。日本と同じ種類の野菜も、スペインのものはちょっと大振りなものが多いと思います。ビックリするほど大きな赤ピーマンは、最初見たときはさすがに感心してしまったほどです。(笑)

ゴヤを探して-リリア宮殿(Palacio de Liria)&サン・アントニオ・デ・ラ・フロリダ礼拝堂(Ermita de San Antonio de la Florida)

サン・アントニオ・デ・ラ・フロリダ礼拝堂の前にあるゴヤの像 (写真:筆者撮影)

 

リリア宮殿(Palacio de Liria)

スペインでコロナが始まる半年ほど前、2019年9月19日にこのリリア宮殿(Palacio de Liria)の一般公開が始まりました。この宮殿の所有者であるアルバ公爵へのインタビューラジオを偶然聴いていた私は、是非この宮殿を訪ねてみたいと思い、チケット購入のためにインターネットにアクセスしてみたのですが、既に翌年2020年2月一杯まで予約は一杯でした。その後、コロナがスペインでも猛威を振るい、ロックダウンを経てワクチン接種も受け、今回やっとマドリードまで行って訪ねる機会に恵まれました!

リリア宮殿(写真:筆者撮影)

アルバ公爵とは?

アルバ公爵について簡単に説明すると、初代アルバ公ガルシア・アルバレス・デ・トレド(Garía Álvares de Toledo)はカスティージャ王国の貴族でアルバ・デ・トルメスという伯爵領を持つアルバ伯爵でしたが、1472年にカスティージャ王エンリケ4世からアルバ公爵へと昇格されます。ちなみに、このアルバ・デ・トルメスという名前の街は今もあり、実は私が住むサラマンカ市から20km程離れたところにあります。その息子ファブリケ・アルバレス・デ・トレド・イ・エンリケス(Fadrique Álvarez de Toledo y Enríquez )は1492年の有名なグラナダ陥落で活躍し、初代アルバ公の孫にあたるフェルナンド・アルバレス・デ・トレド・イ・ピメンテル(Fernando Álvarez de Toledo y Pimentel)はスペイン王カルロス1世(神聖ローマ皇帝カール5世)やその息子フェリッペ2世に重用され、後世の歴史家からスペイン史の中でも第一級の軍師だと言われているほどです。

18世紀に下ると、マリア・デル・ピラール・テレサ・カジェターナ・デ・シルバ・イ・アルバレス・デ・トレド(María del Pilar Teresa Cayetana de Silva y Álvarez de Toledo)が、自身の権利-アルバ公位の継承者であることを意味する公爵夫人-として、13代アルバ公爵夫人(Duquesa de Alba)となりました。あまりに長い名前なので、一般的にはマリア・テレサ・デ・シルバ(María Teresa de Silva)と略されていますが、彼女は、1776年に14歳でアルバ家の爵位を継いでから1802年に亡くなるまで、なんと56もの爵位を受け次ぎました。スペインの中で一番多くの爵位を持っている公爵夫人だったのです。しかし、彼女には跡継ぎの子供がいなかったので、親戚であるカルロス・ミゲル・フィッツ・ジェームズ・スチュアート・イ・シルバ(Carlos Miguel Fitz-James Stuart y Silva)が跡を継ぐことになり、名前からもわかるように英国人との共同での家になりました。と同時に、スペイン国内だけの爵位だけではなく、英国の爵位もアルバ家は相続していくことになり、ヨーロッパの中でも最も多くの爵位を保持する家となったのです。

そして、アルバ家は今もスペインに残る名門です。スペイン各地に所有する宮廷や土地も数多く、代々芸術に造詣深い一族は、数々の美術作品を所蔵しています。ただ、膨大な歴史的遺産を所有するアルバ家が毎年支払わなければならない税金もかなりの額で、アルバ家は所有する建物を一般公開することで維持を図っています。今回訪れたリリア宮殿以外にも、私が住むサラマンカ市のモンテレイ宮殿(Palacio de Monterrey)、セビージャ市にあるラス・ドゥエニャス宮殿(Palacio de Las Dueñas)が現在一般公開されています。

サラマンカ市内にあるモンテレイ宮殿(写真:筆者撮影)

リリア宮殿(Palacio de Liria)見学

なんといっても、この宮殿は今現在もアルバ公爵一家が住む住居でもあることに驚かされます。2019年9月に一般公開が始まりましたが、一般公開部分は宮殿のほんの一角で12室訪れることができます。ちなみに200室以上の部屋があるとのこと!!!

18世紀に造られたこの宮殿は、スペイン市民戦争の際に火災が起き、かなりの被害を受けました。しかし、その後、莫大な私財を投資して元の通りに再建して今も住居として使われています。ここが住居であることを思い出させるものとして、各部屋に思い出の写真等が飾ってありました。

スペイン屈指のプライベートアートコレクションは、アルバ家の歴史と共に500年以上にわたって収集されてきたもので、絵画のみならず、彫刻、タペストリー、家具、書籍等、多岐にわたる芸術作品におよびます。特に、フランドル地方(今のオランダ・ベルギー)のバロック絵画の巨匠ルーベンスが描いた神聖ローマ帝国の皇帝カール5世(スペイン国王カルロス1世)やスペイン国王フェリッペ4世の絵は素晴らしいものです。また、「スペインの間(Salón de España)」には、まるでプラド美術館のようにベラスケス、エル・グレコ、スルバラン、リベラ、ムリーリョ等が所狭しと壁にかけてあり圧巻です。「イタリアの間(Salón de Italia)」には、ティツィアーノの「最後の晩餐」等があり、必見の価値大です。この「イタリアの間」にも家具の上にもさりげなく写真立てが置いてありましたが、私の目を引いたのは、その中にまだ天皇に即位されていらっしゃった頃の上皇さま、上皇后さまがこのリリア宮殿をご訪問された際の記念の写真立てが飾られてあったことです!

その他、「ゴヤの間(Salón de Goya)」、「踊りの間 (Salón de Baile)」「皇后の間(Salón de Emperatriz)」、「ダイニングルーム(Salón de comedor)」、「図書室(Biblioteca)」等があります。残念ながら、宮殿の中の写真撮影は禁止されていて、写真を撮影することはできませんでした。

ラジオで聞いたアルバ公爵のインタビューでは、小さい頃はかくれんぼをしたりして遊んだというエピソードを紹介されていました。こんなに広くて値段が付けられないような超豪華なコレクションが所狭しとある宮殿でも、アルバ公爵にとっては、子供のころは自分の祖先の肖像画を見たり、かくれんぼをしたりして楽しい思い出が詰まった「我が家」だったそうです。うーん、何千万とする花瓶をひっくり返して壊したり、様々な巨匠の絵を傷つけたりしたりしたら、それこそ取り返しのつかないことで、さぞかしスリルあるかくれんぼ遊びだったんだろうな……なんて想像してしまいました。(笑)

ベラスケスが描いたマルガリータ王女もリリア宮殿にいました!(Wikipedia Public Domain)

ゴヤの間(Salón de Goya)

リリア宮殿ではゴヤの絵が幾つか見れると思って期待していましたが、この「ゴヤの間(Salón de Goya)」は期待を裏切らない素晴らしいものでした。

ゴヤの絵で一番最初に思い浮かべるものは何でしょうか? やはり「着衣のマハ」と「裸のマハ」ではないでしょうか。「マハ(maja)」とは、人の名前ではなく、「小粋な女」という意味のスペイン語です。このモデルは前述したあの長い名前の13代アルバ公爵夫人マリア・デル・ピラール・テレサ・カジェターナ・デ・シルバ・イ・アルバレス・デ・トレド(María del Pilar Teresa Cayetana de Silva y Álvarez de Toledo)だったのではないかと言われています。このマリア・テレサとその夫はゴヤのパトロンであり、彼女とゴヤは親密な交際があったとの推測が絶えないようです。実際にゴヤは彼女から様々な絵の依頼を受けて彼女のために絵を描いています。

この「ゴヤの間」には、アルバ家の人々の肖像画が多く飾られていましたが、中でも一際目を引くのが18世紀ファッションの先端を行く白いドレスに身を包んだアルバ公爵夫人マリア・テレサの肖像画です。赤い帯、赤いリボン、赤い髪飾り、赤いネックレスで、赤と白のコントラストが印象的です。白い子犬の足に赤いリボンをつけているのは、「お揃い」って感じでほほえましくなりました。

ゴヤが描いた白いドレスを着たアルバ公爵夫人(Wikipedia Public Domain)

図書室

図書室には書籍だけではなく、手紙や歴史的文書等が展示してあります。その数1万8,000冊もの蔵書があるとのこと!その中でも、1605年に出版されたセルバンテス著「ドン・キホーテ」の初版や、1422年~1431年のヘブライ語からスペイン語に訳された聖書,フェルナンド王の遺言書、クリストファー・コロンブスの第1回目の新大陸への旅の直筆の手紙の数々は必見です。

この聖書は、「アルバ家の聖書」とも呼ばれ、最初にスペイン語に訳された聖書の一つです。興味深いのは、ラテン語からの翻訳ではなくヘブライ語からスペイン語への翻訳本でした。フェルナンド王はグラナダ陥落でレコンキスタを成し遂げたアラゴン王ですが、この遺言書は死の前日に遺言されたもので、1516年1月22日の日付がありました。この遺言で後継者を後の神聖ローマ帝国の皇帝カール5世(スペイン国王カルロス1世)に定めています。本来ならば、娘のフアナが後継者になるところでしたが、気がふれて幽閉されていたフアナにはせっかくレコンキスタを成し遂げた後の国を治めることは無理とみなしたフェルナンド王は、フアナの息子、自分の孫にあたるカルロスに位を譲ることをこの遺言書の中で明確に示したものでした。この遺言書は、スペインの歴史文書の中でもかなり重要なものです。コロンブスが書いた手紙は結構な数があります。その中には、コロンブスが自分で描いた島の輪郭を示す絵がありますが、これがコロンブスが「イスパニョーラ島(La Española)」と命名した島で現在のハイチとドミニカ共和国に当たることろです。

それにしても、スペイン500年の歴史絵巻を見ているような錯覚に陥るアルバ家の図書室でした。ただ、あまりに歴史的史料価値の高い資料や書籍が多いだけに、実際に蔵書を手に取って手軽に読書を楽しむという感じではないですね。(笑)

サン・アントニオ・デ・ラ・フロリダ礼拝堂(Ermita de San Antonio de la Florida)

美術館の中に飾ってある絵画鑑賞も悪くないのですが、特に宗教画に関してはやはり宗教的な場所-教会・修道院等-で観賞すると、見る印象が随分変わります。画家が宗教的な建物のどの位置にどのような宗教的な場面を配置するかは、識字率が低かった時代においてはとても大切なことでした。現代のように視覚的な物があふれている世界に住んでいなかった当時の人々にとって、「絵画」はとても心に響き、そして宗教の持つ意味を理解する助けでもありました。

このサン・アントニオ・デ・ラ・フロリダ礼拝堂内を装飾するフレスコ画はゴヤが描いたものです。美術館以外にあるゴヤのオリジナルの絵が見れる数少ない場所の一つですが、マドリード観光でも訪れる人が少ない穴場的な場所でもあります。ここには、ゴヤが埋葬されていて、「ゴヤのパンテオン」とも呼ばれています。

サン・アントニオ・デ・ラ・フロリダ礼拝堂(写真:筆者撮影)

「聖アントニオの奇跡」

礼拝堂の天井を飾るフレスコ画のモチーフとなったのは「聖アントニオの奇跡」です。これは、聖アントニオの父が殺人の罪に問われ、ポルトガルのリスボンで死刑になることを知った聖アントニオは、裁判官の前に殺された被害者の遺体を運んでくるように頼みます。そして、運ばれてきた遺体に向かって殺した犯人は自分の父かどうかを尋ねると、死人は一時的に蘇りはっきりした声で「あなたの父ではありません」と答えました。そうして、聖アントニオは父の無実を晴らしたと伝えられている奇跡です。

ゴヤが描いた「聖アントニオの奇跡」(Wikipedia Public Domain)

ゴヤの斬新さ

このゴヤのフレスコ画を見て面白いなと思ったのが、描かれている人達でした。私が今までよく目にしていた教会や礼拝堂の中にある宗教画とは異なり、聖アントニオ以外は、偉い司教や聖人、その時代の王や有力貴族、12使徒や聖書に登場する人々ではなく、無名の庶民-村の男や女たち、乞食、野次馬たち、遊んでいる子供たち-それもその当時のマドリードの庶民の姿が生き生きと描かれていることです。マドリードの人たちはこの絵が描かれた当時から「聖アントニオ」に親しみを感じている人が多かったらしく、数ある聖人の中でも人気がありました(聖人の中で人気者とそうでないものがあるのは面白いことですが、日本の布袋尊のようなものでしょうか)。ゴヤはその民衆の心を代表してこの絵を描いたんじゃないかなと思いました。この礼拝堂を訪れるマドリードの人たちは、自分の姿をこのフレスコ画の中に見つけ出し、親近感を抱き、聖人との距離ひいては神との距離がグッと近くなったんじゃないかと感じながらこのフレスコ画を見ました。

もう一つ興味深かったことは、描かれている天使たちです。「天使」のことをスペイン語では「Ángel(アンヘル)」と言います。全ての名詞に性があるスペイン語では「天使」-「Ángel(アンヘル)」-は男性名詞です。スペインのゴシック様式やバロック様式の教会などでは、まるで中性的な子供のような顔つきの「天使」たちであふれています。でも、このゴヤの描く「天使」たちは、マドリードの若い女性たちの顔を持つ「天使」-「Ángela(アンヘラ)」(女性名詞形)-たちなのです。そして、その「天使」-「Ángela(アンヘラ)」たちがドームの下部分や側面部分にも描かれていて、その点でも新しいゴヤの試みが見えてきます。

ゴヤの自由な筆づかい、グレース技巧、透明感のある絵は豊かな色調を生み出し、ゴヤの絵の特徴でもある「魔法的な雰囲気」を醸し出しています。

礼拝堂の内部の写真が撮れなかったので、この「Ángela(アンヘラ)」たちをこのブログで紹介できず残念です。マドリードに行く機会がある方は、是非この女性の天使「Ángela(アンヘラ)」たちに会いに行ってみてくださいね!

美術館の外にあるゴヤの絵に会いに行こう!

ゴヤの絵-美術館の中にはない、絵の依頼者とゴヤ自身とゴヤの絵が直接つながっていることを感じられるような絵-に会いに行きたい方は是非このリリア宮殿とサン・アントニオ・デ・ラ・フロリダ礼拝堂まで足を延ばしてみることをお薦めします。

リリア宮殿もサン・アントニオ・デ・ラ・フロリダ礼拝堂もマドリード観光では定番のコースには入っていない所ですが、どちらも一見の価値は大いにありますよ。

リリア宮殿 開館情報

住所:プリンセサ通り 20番地( C. de la Princesa, 20)

電話番号:(+34) 915 90 84 54 (対応時間:9:00~20:00)

ウエブサイト:https://www.palaciodeliria.com/
最寄り駅:スペイン広場(Plaza de España 2号線 赤色/3号線・黄色/10号線・紺色) 、

     ベントゥーラ・ロドリゲス(Ventura Rodríguez 3号線・黄色)      
開館時間:リリア宮殿 (Palacio de Liria) | マドリード観光 (esmadrid.com) 参照 

休館日:1月1日、1月5日、1月6日、12月24日、12月25日、12月31日      

入場料:一般-15€ (スペイン語・英語・フランス語・ドイツ語・イタリア語の音声ガイド付き、)

    割引料金-13€(6歳~12歳、失業者、25歳以下の学生、65歳以上、身分を証明する書類提示)

    公式ガイド付き-35€(10人~15人)

    無料-6歳未満、祭日ではない月曜日 9:15 a.m. & 9:45 a.m. (一週間前にオンライン販売のみ)

サン・アントニオ・デ・ラ・フロリダ礼拝堂 開館情報

住所:サン・アントニオ・デ・ラ・フロリダ ロータリー 5番地( Gta. San Antonio de la Florida, 5)

電話番号:(+34) 915 420 722

ウエブサイト:http://www.madrid.es/ermita
最寄り駅:プリンシペ・ピオ(Príncipe Pío 6号線 灰色/10号線・紺色/R線) 、

     ベントゥーラ・ロドリゲス(Ventura Rodríguez 3号線・黄色)      
開館時間:火曜日~日曜日 9:30~20:00 (最終入館時間 19:40) サン・アントニオ・デ・ラ・フロリダ礼拝堂(Ermita de San Antonio de la Florida) | マドリード観光 (esmadrid.com) 参照 

休館日:月曜日(祝日も含む)1月1日、1月5日、1月6日、12月24日、12月25日、12月31日      入場料:無料

リリア宮殿&サン・アントニオ・デ・ラ・フロリダ礼拝堂 情報

・リリア宮殿オフィシャルサイト。スペイン語。

Información (palaciodeliria.com)

・マドリード観光オフィシャルサイト。日本語もあります。youtubeでは宮殿の内部を垣間見れます。

リリア宮殿 (Palacio de Liria) | マドリード観光 (esmadrid.com)

・スペイン観光公式サイト。日本語もあります。

リリア宮殿のMadrid | spain.info 日本語

・リリア宮殿の内部は写真撮影が禁止されているますが、スペインの新聞に宮殿内部の写真が出ていました。

Fotos: El interior del Palacio de Liria, en imágenes | Cultura | EL PAÍS (elpais.com)

・スペイン観光公式サイト。日本語もあります。

サン・アントニオ・デ・ラ・フロリダ礼拝堂のMadrid | spain.info 日本語

・マドリード観光オフィシャルサイト。日本語もあります。

サン・アントニオ・デ・ラ・フロリダ礼拝堂(Ermita de San Antonio de la Florida) | マドリード観光 (esmadrid.com)

スペインでバードウォッチング!-種類別 スペインの野鳥 日本語名(サギ科)

コサギ(Garceta común): (写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

ここでは、スペインに生息する野鳥の名前を、種類別に集めてみました。スペイン語名をクリックしてもらうと、スペイン鳥学会のホームページに飛びます。残念ながら日本語版はありませんが、英語での鳥の名前は出ています。スペインで野鳥観察されるとき、またはスペインの旅の途中で見かけた鳥のスペイン語名を知りたいときに、少しでもお役に立てれば幸いです。

Garzas = サギ科

スペイン語日本語ラテン語//常駐/偶然
Avetoro comúnサンカノゴイBotaurus stellaris常駐
Avetoro lentiginosoアメリカサンカノゴイBotaurus lentiginasus偶然
Avetorillo comúnヒメヨシゴイIxobrychus minutus常駐
Martinete comúnゴイサギNycticorax nycticorax
Garcilla bueyeraアマサギBubulcus ibis常駐
Garcilla cangrejeraカンムリサギArdeola ralloides常駐
Garceta comúnコサギEgretta garzetta常駐
Garceta dimorfaアフリカクロサギEgretta gularis偶然
Garceta grandeダイサギCasmerodius albus常駐
Garza realアオサギArdea cinérea常駐
Garza imperialムラサキサギArdea purupurea
ヒメヨシゴイ(Avetorillo común): (写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

スペインの臓器移植ドナー数、世界でトップ!

今年も世界一!

意外だと思われる方も多いと思いますが、スペインは世界でもトップクラスの臓器移植大国です。そして、この臓器移植手術を支えているのが、臓器を提供してくれるドナーの存在。2021年8月の政府公式発表によると、100万人当たりのドナー数が29年連続でスペインは世界一

2022年1月末の発表では、100万人当たりドナー数がスペインは40,2人で、EU諸国平均が18,4人なのでスペインのドナー数は2倍以上、ドイツと比べてみても4倍の比率です。ちなみに日本は残念ながら臓器移植に関しては後進国と言え、2019年の資料で0,99人です(参照:「臓器移植対策の現状について」臓器移植委員会4月21日に作成)。日本は少ないとは知っていましたが、まさか100万人当たり1人にも達していない事実にはショックでした。

2021年の臓器移植手術は約5,000件!

2021年に行われた臓器移植手術は、腎臓移植 2,950件、肝臓移植 1078件、肺移植 362件、心臓移植 302件、膵臓並びに7つの大腸部分*移植 82件です。そして、子供への臓器移植手術は159件ありました。なんと、その合計数は4,933件にも上ります。そしてそのうち、死亡した人から受けたドナー1905人による臓器移植手術件数は4,457件ありました。

*7つの大腸部分(Siete intestinales):盲腸・虫垂・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・肛門 (Ciego/Apéndice vermiforme/Colon ascendente/Colon transverso/Colon descendente/Colon sigmoideo/Ano)

スペインの臓器移植の現状

スペインは、臓器移植に関する法律に定めるように、ドナー拒否の意思表示をしていない限り、全てのスペイン人はドナーの対象だとみなされています。そして、実際ドナーとしての必要条件を満たしていると医療チームが判断したら、ドナーできるような仕組みになっています。私の周りでも自分に何かあった場合は、是非臓器ドナーをして少しでも助かる命を助けてほしいと言っている人がほとんどです。

また、スペインでは2021年3月に「安楽死法」が成立し、安楽死が法的に認められたので、安楽死を求める人からのドナーも今後は出てくると予想されています。

スペインでは、公的国民保険に加入していれば公的医療機関は無料です。日本のように、全国どこででも病院にかかることができるのではなく、基本的には居住している地域の公的医療機関にかからなければなりません。もし、私立の病院にかかる場合は100%自己負担です。(私立の医療保険制度に加入して、毎月定まった金額を支払うことで私立の病院代をカバーすることは可能です。実際、公的医療保険以外に私的医療保険にも加入している人も多々います。)そして、公的医療機関で臓器移植手術を受ける場合は、手術代金は無料です。

スペイン人と結婚し、サラマンカ市内に居住していてスペインの公的国民保険に加入してる日本人が、10年位前に骨髄移植をしなければならなくなりました。手術はやはり日本の方がいいかもと考え、一旦東京に帰って有名な病院を当たってみましたが、日本ではその当時骨髄移植手術自体珍しいうえ、ドナーが少ないことと費用がかなり掛かることを告げられました。でも、色々調べてみると、スペインは移植手術先進国で、その上、サラマンカ大学病院は特に有名だということが判明し、スペインに戻って骨髄移植手術をしてもらうように手続きを始めました。結局は、スペインの移植をする際の国際ネットワークの力で、ハワイの日系のドナーから骨髄提供があり、サラマンカ市民ということも手伝い、地元優先で思ったより早く手術を受けることができました。その上、その日本人は公的国民保険加入者であったので、手術代金、入院費等全て無料でした。その時初めて私もスペインの医療機関、医療システムの素晴らしさを実感しました。

これだけ臓器移植手術先進国のスペインですが、スペイン国立移植医療機関(Organización Nacional de Transplantes)によると、毎年約10%の人がドナー提供を待っている間に死亡しているという悲しい事実も現実にはあります。

コロナ下でのドナー

さて、そんなスペインの臓器移植事情も、今回のコロナ下では厳しいものがありました。コロナ以前の2019年は100万人当たりドナー数がスペインは49,6人だったのが、2020年にはドナー数が23%、臓器移植手術も19%減少しました。それだけに、2021年は2020年に比べると臓器移植手術が8%増加し、少しずつ回復の兆しが見えてきているようです。

参考

・スペイン国立移植医療機関(Organización Nacional de Transplantes)がドナーや臓器移植について分かり易く説明しています。

Donación (ont.es)

・日本の臓器移植の現状に興味のある方はこちらをどうぞ。臓器移植委員会が4月21日に作成した「臓器移植対策の現状について」のPDF版です。

難病法における難病の定義 (mhlw.go.jp)

・具体的な数字等を今回参照したスペインの全国紙「エル・パイス(El País)」2022年1月21日付の記事です。

Los trasplantes de órganos en España superan el bache de la covid y aumentan un 8% en 2021 | Sociedad | EL PAÍS (elpais.com)

・スペイン政府公式サイト、ラ・モンクロア(La Moncloa)にも、スペインがドナーや臓器移植手術のリーダーであることを述べています。

La Moncloa. 16/08/2021. España mantiene su liderazgo mundial en donación de órganos en 2020, a pesar de la pandemia [Prensa/Actualidad/Sanidad]

ちょっとスペイン語-12-(Llevarse como el perro y el gato)犬猿の仲

庭に勝手に入ってくる野良猫(写真:筆者撮影)

                     

ここでは、ちょっとしたスペイン語の言い回しや、ことわざ、話し言葉など、辞書には載っていない単語も含めて紹介していきます。スペイン語を勉強している方には言葉の幅が広がるお手伝いができればいいなと、スペイン語には興味ないという方には雑学として楽しんでいただければいいなと思っています。

Llevarse como el perro y el gato- 犬猿の仲

スペインにも、「犬猿の仲」という諺があります。でも、こちらは犬と猿ではなく、犬と猫です。スペインには猿はいないので当然ですが・・・。

Carlos y Jorge estaban discutiendo de nuevo ayer. Es que se llevan como el perro y el gato.

昨日、カルロスとホルヘがまた言い争ってたよ。ほんと、犬猿の仲だよね、あの二人。

我が家の庭を素通りする野良猫たち、その度に庭を挟んだお隣の犬3匹が一斉に吠え立てています。この光景を見ると、やっぱり犬と猫って仲が悪いんだなって納得しています。(笑)

 

ロマネスクへのいざない (5)- カスティーリャ・イ・レオン州-ブルゴス県 (2)- サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院 (Monasterio de Santo Domingo de Silos)

楽しみにしていたサント・ドミンゴ・デ・シロス修道院 (Monasterio de Santo Domingo de Silos) へ向かった。サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院は、ヨーロッパ最古の音楽と言われる「グレゴリオ聖歌」を今も修道士たちがミサや祈りの時間の中で歌い続けていることで有名だ。日本でもCDが売られているので聴いたことがある人も多いと思う。

この修道院は、21世紀の今日まで活動し続けているカトリック教会最古のベネディクト修道会の修道院だ。そして、 サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院自体は954年に設立されたことが、当院の文献資料として残っている。まさしく、この修道院設立時期はロマネスク建築がヨーロッパで始まった頃と重なる。サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院にあるロマネスク建築の回廊は素晴らしく、スペイン人の中で知らない人はいないほど。ロマネスク回廊の傑作と言われている。回廊は2階建てで、1階部分の東側と北側は11世紀半ばに造られ、西側と南側は12世紀のものだ。長方形の回廊は、北側と南側には16のアーチが、東側と西側には14のアーチがあり、柱頭は64本ある。そして回廊の2階部分は、12世紀末に造られた。

サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院 (Monasterio de Santo Domingo de Silos) の回廊(写真:アルベルト・F・メダルデ)

回廊1階部分の控え壁にある8つの浅彫き彫りは一つ一つが素晴らしいロマネスクの傑作。簡単に紹介していくことにする。

受胎告知と聖母戴冠(La Anunciación y La Coronación de la Virgen)

受胎告知と聖母戴冠(Anunciación y Coronación de la Virgen)(写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

「神の母」である聖母マリアが大天使ガブリエルのお告げによって神の子「イエス」を身ごもることを知る瞬間の場面と「天の女王」である聖母マリアが神から冠を授けられる場面を同じ構図の中に描かれている。

サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院の建設期間は約200年かかったが、この「受胎告知と聖母戴冠(Anunciación y Coronación de la Virgen)」は建設完了時期12世紀末に造られたものだ。 12世紀末といえばゴシック様式初期に当たり、この浅浮き彫りにもゴシック様式である自然的で人間的な表現の萌芽が見られる。大天使ガブリエルと聖母マリアの二人のまなざしはまるで知り合い同士のようで、心なしか口元にはかすかに笑みを浮かべているように見える。と同時に、聖母マリアの堂々として自然な雰囲気が漂っている。聖母マリアの左手に持っている布は何か意味があるのか気になるところ。

エッサイの木 (EL ÁRBOL DE JESÉ

エッサイの木(El Árbol de Jesé )(写真:筆者撮影)

「エッサイの木」はイエスの家系図とも言われ、統一イスラエル王国(イスラエルとユダ連合王国)の王で、ユダヤ教を確立したダビデの父エッサイから幹が伸び、ダビデ家より生ずべき未来の救世主(イエス・キリスト)を生んだ聖母マリア、イエス、そして精霊を示す鳩が描かれていることが多い。これは、旧約聖書のイザヤ書11の言葉をもとにしてロマネスク時代に始まった表現である。その言葉とは、「エッサイの株から一つの芽が萌えいで、その根からひとつの若枝が育ち、その上に主の霊がとどまる。(参照:イザヤ書 11 | 新共同訳 聖書 | YouVersion (bible.com))」である。

サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院の浅浮き彫りには、横になって右手で頭を支えているエッサイの横腹から2本の枝が交差しながら力強くそして躍動感に満ちながら上に上に伸びている。その2本の枝は二つのマンドルラ(アーモンド形の光輪)を形作り、更に、周りの6人の人物を包み込むようにまるで生きているかの如き動きを表現している。最初のマンドルラには聖母マリアが描かれ、その上のマンドルラには幼子イエスを膝の上に乗せた神が描かれ、その更に上には精霊を示す鳩が描かれている。浅浮き彫り独特の立体感と躍動感は、一度見たら忘れられないものだった。ちなみに、イエスを膝の上に載せ父である神という形で表現されている神の姿は、ロマネスク美術には珍しいものだったらしい

周りにいる人物は、偉大な予言者であるイザヤ、エレミヤ、エゼキエル、ダニエルの4人とヘブライ人の王ダビデ王とサロモン王である。

イエスの死と降架(Muerte en cruz del Señor y descendimiento

イエスの死と降架(Muerte en cruz del Señor y descendimiento) (写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

あばら骨がリアルに表現され、キリストの顔は苦しみの後に解放された静かな表情だ。興味深いのは、十字架の木の節が見られること。今まで、この十字架のようにはっきりと木の節が描かれている十字架を見たことはなかったと思う。

音声ガイドの説明では、アダムとイブのアダムがそのゴルゴダの丘(キリストが十字架に磔にされた丘)に葬られたという伝説から、キリストの足元には、キリストによって原罪から救済されたアダムが墓から這い上がっている姿が表されている、ということだった。(私には、アダムの姿を認識することはできなかったが・・・。)また、十字架は香炉を振る天使が天上と地上とを結び付けており、全体の構成に調和がとれている。

左側の女性は聖母マリア、キリストを十字架から降ろしているのは2人の弟子、そして右側の手に紙とペン(?)を持つのが福音書を書いた「イエスの愛する弟子」だ。淡々と死んだキリストを十字架から降ろす弟子たち、息絶えた我が子の手に顔を押し付ける聖母マリア、ロマネスク様式の特徴でもあるが、宗教的伝統によって形式が決まっているヒエラティックなものが返って彼らの深い悲しみを痛いほどまっすぐに伝えているドラマチックな場面である。

聖母マリアや弟子たちの足の下にある波のような形が、何を意味しているのか気になった。

墓とイエスの復活(Sepultura y resurrección del Señor

墓とイエスの復活(Sepultura y resurrección del Señor) (写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

キリストの復活は、キリスト教の教理の根本にかかわることなので、絵や彫刻など様々な方法で視覚的に表現されている。

サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院の浅浮き彫りには、十字架にかけられ死したキリストの遺体が丁寧に二人の弟子により埋葬される「墓」の場面と、上部には、過越(すぎこし)の祭りの朝にマグダラのマリアをはじめとする3人のマリアが墓を訪ねると、墓石の蓋が取り除かれたその上に美しいプリーツのある服を着た天使が座っていて、キリストが復活したことを告げる場面が同じ空間の中に描かれている。

開いた墓石の蓋が斜めに走り、その下に横たわるキリストの構図が素晴らしい。また、3人のマリアや天使の折りひだが細かに表現され、動きもありとても美しい。天使の足の動きも自然な感じだ。

キリストが横たわる墓の下には、7人の兵士の姿が見える。これは、キリストの復活に対してひどく恐れている様子が描かれたものらしい。また、宗教画などでもよくあることだが、ここでもキリストが死んだローマ時代の兵士の服装ではなく、この浅浮き彫りが造られた中世ヨーロッパ時代の兵士の服装で描かれている。

エマオへの道(Camino de Emaús

エマオへの道(Camino de Emaús)(写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

イエスは復活後エマオに行く途中の道で、話しながら歩いている弟子のクレオパに近づいて、彼らと語りながら一緒に歩いた。そして、イエスは食事の招待を受けて感謝してパンを裂いた時に、クレオパたちはその人がイエスだと分かったが、その時イエスは見えなくなった。このエマオへの道の途中の場面。

感情を押し隠し、豊かな表情に欠けると言われるロマネスク様式の中で、「エマオへの道(Camino de Emaús)」の場面の3人の表情はとても豊かだ。歩きながら話す3人の動きも見て取れる。3人で信仰の話等に花が咲き、イエスとは気づかない弟子たちがこの”見知らぬイエス”との道中を楽しんでいる様子がうかがえる。

ここでもイエスは高位の人であることを表現するために弟子よりも背が高く、アーチの外に頭が出ている。面白いのは、イエスの右足の不自然さ。思わず私自身でもこんな足の格好ができるかどうか試してみたくらいだ。(笑)

他の浅浮き彫りにはみられなかったが、この3人の眼は深めに彫ってあり、黒玉(こくぎょく)が目にはめ込まれていたらしく、確かに左側の弟子の眼には黒玉(こくぎょく)が今もはめ込まれていた。

イエスの肩から下げられた皮袋には、この浅浮き彫りが造られた11世紀末には盛んであったサンティアゴ巡礼のシンボルであるホタテ貝が見られる。これは、この修道院を通る巡礼者たちへの配慮であり、多くの巡礼者たちがそこに自分を映していたに違いない。

復活とトマス(El resucitado y Tomás

復活とトマス(El resucitado y Tomás) (写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

イエスの復活を聞いて「手に釘の跡を見てそこに指を入れてみなければ信じない」と言ったことから、「不信トマス」と呼ばれているイエズスの弟子の一人であるトマス。そのトマスにイエズスは自分の傷口に指を入れさせ、「あなたは、わたしを見たので信じた。しかし見なくても信じる人々は幸いである」と言ったその場面である。この浅浮き彫りは12世紀初頭の作品。

大きさの違いによって場面の中での重要性を表現していて、一番背の高いキリスト、次に背が高いのがトマスである。枠の中で13人の人物が描かれているが、キリストとトマスの他には、他の10人の弟子たちと、弟子ではなかったが新約聖書の著者の一人であるパウロが描かれている。鍵を持っている聖ペトロの左側に居る額が禿げ上がっている人物がパウロ。

キリストの右側に描かれている弟子たちが心持ち左側に傾いていることによって、トマスがイエズスの傷口に指を入れる場面に緊張感が漂ってくる。見ている私たちも思わずトマスの指に視線を向ける。ロマネスク様式の人物像の顔にはあまり表情がないものがその特徴の一つでもあるが、このキリストの顔には信仰についての重要なメッセージが込められている。

アーチ型の外側には、この重要な場面を祝う音楽家たちの姿が見える。また、建物も見えるので「天上のエルサレム」を表現しているとも言われている。

この「復活とトマス(El resucitado y Tomás)」 の場面は、修道院の修道士たちに信仰について熟考するこを促す役目を果たしていた。 「あなたは、わたしを見たので信じた。しかし見なくても信じる人々は幸いである」 というイエズスの言葉を思い出させ、自分の信仰について反省する修道士たちも多かったと思われる。

キリストの昇天(Ascensión del Señor

キリストの昇天(Ascensión del Señor) (写真:Arte magistral より)

復活したキリストは、エマオへの道で弟子と信仰について語ったり、復活を信じないトマスに傷口を触らせたり、自分が生きていることを数多くの証拠をもって多くの弟子たちに示したり、神の国について語ったりした。復活から40日目に、弟子たちの目の前で天に上げられ雲に覆われて見えなくなったが、それがキリストの昇天である。

キリストを頂点とするピラミッド型構図で、キリストの体の部分は「教会」を表している。その「教会」の代表者として描かれた聖母マリアと聖ヨセフ、そして「天の国の鍵」を持つ聖ペトロと3人の弟子たちの姿が見える。残りの7人の弟子たちは下段に配置され、皆一様に天に昇っていくキリストを見上げている。それは私たちも同様に彼らの視線をたどって天に昇るキリストを見上げることを誘い出す構図だ。

聖母マリアの隣にいる聖ヨセフが、そっとマリアを支えているところに聖ヨセフの愛情が感じられる。

ペンテコステ(聖霊降臨)(Pentecostes)

ペンテコステ(聖霊降臨)(Pentecostes) (写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

イエスの復活・昇天後、集まって祈っていた120人の信徒たちの上に、神からの聖霊が降ったという出来事である「ペンテコステ(聖霊降臨)(Pentecostes )」の場面。

キリストの昇天(Ascensión del Señor)と同様にピラミッド型構図で、下から6人の弟子、その上に別の6人の弟子、そして頭一個分上にマリアが描かれ、更にその上には左右に天使、そして頂点に神の手が雲から出てきている。皆、神の手である精霊を見上げる劇的な構図である。尚、 キリストの昇天(Ascensión del Señor)と異なりマリアが使徒たちよりちょっと上に描かれているのは、神と人との仲介者としてのマリアという意味付けで中間に位置しているものである。

エッサイの木の中で描かれたような伝統的な図像である鳩や火の舌ではなく、神の手、神の指で精霊を表していることは注目に値する。また、上段の弟子6人の中に天の国の鍵を持ったペトロが見える。

サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院のこれらの浅浮き彫りに共通する素足のポーズがとても気になった。全体的には内股で、不自然なポーズも見られ、何か意味が込められていたのだろうかとも思ったりした。手については、基本的に手を広げているポーズでは手のひらを私たちの方に見せている格好だ。 キリストの昇天(Ascensión del Señor) でみられる聖母マリアの両手を開いた格好は、オランスと呼ばれるこの当時(11世紀)に始まった紙を讃える祈りのポーズである。(参照:「キリスト教美術を楽しむ 新約聖書編 受胎告知1」金沢百枝著 )

ねじれた柱(Columnas torsas

ねじれた柱(Columnas torsas)(写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院の回廊を歩いていてすぐに目に留まるのがこのねじれた柱(Columnas torsas)だ。4本の柱をを束ねてねじったような形の柱は、整然と柱が連なり美しくもあるが単調でもある回廊のアクセントになっている。

どうしてこの柱だけねじれて造られたのかは、今でも様々な想像力を働かせる原動力ともなっているようだ。一般的には、時代によって石工が代わっていたので、新しい石工の登場を後世につたえようとしてものだ、というものや、柱頭に彫られている内容が、他の柱頭のそれに比べて重要な内容だったので、見る人の注意を引くようにこのような奇抜なものにした、というもの、そして、単純に回廊の中央に4本を組み合わせた柱を据えることで、技術的な問題を解決するものだったというものが言われている。

柱頭の彫はかなり傷んでいるが、「エルサレム入城」、「洗足式」、「最後の晩餐」キリストの事跡が描かれている。ちなみに「エルサレム入城」は、キリストが復活する前の週にキリストがエルサレムに入城したこと。「洗足式」は、最後の晩餐のとき、イエズスが自ら弟子たちの足を洗ったこと。そして、「最後の晩餐」は、イエズスが処刑される前夜に12人の弟子たちと摂った夕食のこと。ここでもまた、修道士たちや訪れる者たちにキリストの事跡を通してキリストの教えを胸に刻ませるという役目を担っている

その他にもこの柱が造られた理由について、単なる石工の芸術的気まぐれであるとか、呪術的なおまじないの意味があるとか、石工たちの斬新な新しい技術への挑戦であるとか、様々な想像がなされている。

私が調べた限りでは、スペイン国内に現存するロマネスク様式のねじれた柱は5例あった。

  • サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院(Santo Domingo de Silos)、ブルゴス県(Burgos)
  • サンタ・マリア・デ・ラ・ビッド修道院(Monasterio de Sta. Maria de La Vid)、ブルゴス県(Burgos)
  • アスンシォン・デ・エル・ブルゴ・デ・オスマ聖堂(Catedral de la Asuncion Burgo de Osma)、ソリア県(Soria)
  • サン・ペドロ・デ・カラセナ教会(San Pedro de Caracena)、ソリア県(Soria)
  • サン・ペドロ・デ・ラ・ルア(San Pedro de la Rua)、ナバーラ州エステ―ジャ(Estella)

    理由はどうあれ、あれこれと想像を膨らませてロマネスク様式の芸術を見ていくことは楽しいものだ。これも、ロマネスクを見る際の醍醐味の一つだろう。

糸杉(Ciprés

中庭にある糸杉(写真:筆者撮影)

30メートルもあるこの糸杉は、樹齢130年を超える。サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院のシンボルともいえる。昔、天と地をつなげるものとして糸杉は捉えられていた。そして、天に向かって伸びる糸杉とまるで地球の中心と繋がるように地下深く掘られている井戸は、ロマネスク様式の中では世界軸(Axis mundi)を構成するものとして位置づけられ、天上の世界を希求する象徴的なものだった。(参照:「Iconografía y Simbolismo Románico」Devid de la Garma Ramírez著)また、永遠かつ超越した神の愛のシンボルでもある。天を目指してまっすぐに伸びていく糸杉に、修道士たちの信仰や希望を感じた。

最後に

以上、これら8つの場面は、まるで聖書の蒔絵でも見ているかのような錯覚を私に与えた。様々な回廊をこれまでも見たことがあるが、これほど印象的で視覚に訴えてくる回廊は初めて出会ったと思う。

サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院の回廊の細部を詳細に見ていくにつれて、芸術や建築ががいかに人間の心の琴線に触れることのできるものなのかを、実際に体験できる。ロマネスク様式における回廊が持つ象徴的な意味は、「地上の楽園」である。それは、神と接近し、神を迎え入れる特別な場所であった(参照:「Iconografía y Simbolismo Románico」Devid de la Garma Ramírez著)。修道士や巡礼者たちは、この静かな空間の中で祈り、神と出会い、信仰を深めていったのだろう。

参考

ここで紹介した サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院 (Monasterio de Santo Domingo de Silos)は、ブルゴス県のロマネスクを訪ねたルートの中の一つです。こちらのルートを知りたい方はこちらを参考にして下さい。

・スペイン観光公式サイト。日本語があるのはうれしい限り。

サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院のSanto Domingo de Silos | spain.info 日本語

・サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院の公式サイト。スペイン語のみ。

https://www.abadiadesilos.es/

・キリストの昇天(Ascensión del Señor)の写真はこちらのブログのもの。

Arte magistral: Relieves del claustro de Santo Domingo de Silos

・サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院の音声ガイド。スペイン語の他に、英語、フランス語、ポルトガル語でも聞ける。

Museo de la Asociación Retógenes (qrednomenclator.net)

・美術や歴史の本を出版するグループで、ロマネスク様式を詳しく説明しているウエッブサイト。

Monasterio Santo Domingo Silos (arteguias.com)

・ロマネスクのシンボルや図像の意味を解説している本。スペイン語。

「Iconografía y Simbolismo Románico」 Devid de la Garma Ramírez 著

スペインでバードウォッチング!-種類別 スペインの野鳥 日本語名(ウ科)

ここでは、スペインに生息する野鳥の名前を、種類別に集めてみました。スペイン語名をクリックしてもらうと、スペイン鳥学会のホームページに飛びます。残念ながら日本語版はありませんが、英語での鳥の名前は出ています。スペインで野鳥観察されるとき、またはスペインの旅の途中で見かけた鳥のスペイン語名を知りたいときに、少しでもお役に立てれば幸いです。

Cormoranes = ウ科

スペイン語日本語ラテン語//常駐/偶然
Cormorán grandeカワウPhalacrocorax carbo常駐
Cormorán moñudoヨーロッパヒメウPhalacrocorax aristotelis常駐
Cormorán pigmeoコビトウPhalacrocorax pygmeus偶然
  カワウ 幼鳥 (写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

スペインでバードウォッチング!-種類別 スペインの野鳥 日本語名( カツオドリ科 & アホウドリ科)

ここでは、スペインに生息する野鳥の名前を、種類別に集めてみました。スペイン語名をクリックしてもらうと、スペイン鳥学会のホームページに飛びます。残念ながら日本語版はありませんが、英語での鳥の名前は出ています。スペインで野鳥観察されるとき、またはスペインの旅の途中で見かけた鳥のスペイン語名を知りたいときに、少しでもお役に立てれば幸いです。

Alcatraces y albatros = カツオドリ科 と アホウドリ科

スペイン語日本語ラテン語//常駐/偶然
Alcatraz atlánticoシロカツオドリMorus bassanus
Piquero pardoカツオドリSula leucogaster偶然
Albatros orejosoマユグロアホウドリThalassarche melanophris偶然
シロカツオドリ (写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

ロマネスクへのいざない (4)- もうすぐクリスマス!ロマネスクにみるキリスト誕生

12月に入りました。今年もCOVID-19の影響で一体どんなクリスマスとなるのか。スペインではワクチン接種が進み(接種率約80%)、皆楽しみにしていたクリスマス。オミクロン株のせいで今年もいつものような楽しいクリスマスが過ごせないのではないかと気をもんでいます。

スペインの人たちにとってはクリスマスは特別な時期です。家族や遠く離れた友人が地元に里帰りしてきて再会したり、子供たちはサンタクロースや三賢王(マギ)に頼むプレゼントのリストを手紙にして送ったりと、本当に賑やかな時期です。

スペインのクリスマスを、「マラソン・クリスマス」と私は呼んでいます。というのも、12月24日のクリスマス・イブから1月6日の東方三賢王の日まで、2週間くらいずーとクリスマスの行事が続くからです。12月24日イブの夜の夕食会、25日の昼食会、12月31日大晦日の夕食会とパーティー、1月1日のお正月の昼食会、1月6日の朝には三賢王のプレゼントを開け、その後昼食会や夕食会があります。とにかく、家族や友人同士で集まる機会がやたらと多く、そのたびに飲んだり食べたりと、胃腸にとってもかなりハードな時期になります。

去年のクリスマスは、移動制限、人数制限などもあり、寂しいクリスマスでしたが、今年は無事に皆でお祝いできることを祈りながら、今回は、クリスマス、キリスト誕生にちなむロマネスクの装飾を紹介していきます。

受胎告知(La Anunciación )

「受胎告知」とは、新約聖書に書かれているエピソードの1つで、処女マリアに天使ガブリエルが訪れ、マリアが聖霊によってイエスを懐妊したことを知らせる場面です。そして、マリアがその神の意志を受け入れることを告げる出来事です

フラ・アンジェリコやレオナルド・ダ・ビンチ等が描いた「受胎告知」の絵は有名ですね。

「PINTURA ROMANICA PANTEON REAL DE SAN ISIDORO」ANTONIO VIÑAYO GONZALES Y MANUEL VIÑAYO GONZALEZ (Fotogragía) Edición de 1971, CATEDRA DE SAN ISIDORO Y EDITORIAL EVERESTO より

これは、レオン市にあるサン・イシドロ王立参事会教会(11世紀)の天井画にある「受胎告知」の場面です。

まるで驚きためらうマリアに対し、天使ガブリエルは笑みをたたえ明るい表情で未来の救世主の懐妊を告げるこの天井画は、二人の対照的でとても人間的な豊かな心情の表現に惹かれます。まるで、マリアは告げられた内容があまりのことに怖気づいて逃げ腰になっているようです。マリアは、両手を大きく広げ驚いたような仕草に見えますが、これは、11世紀から見られるようになった神を讃える祈りのポーズで、オランス(ORANS)というそうです。(「キリスト教美術を楽しむ 新約聖書編 受胎告知1」金沢百枝 より)

受胎告知と聖母戴冠(Anunciación y Coronación de la Virgen)(写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

こちらは、「受胎告知」と「天の女王」である聖母マリアが神から冠を授けられた「聖母戴冠」を同じ場面の中に描いています。 ブルゴス県にあるサント・ドミンゴ・デ・シロス修道院の回廊にある浅浮き彫りの一つです。

ロマネスク美術の中でもゴシック様式初期に当たる12世紀末に造られたものですが、こちらは天使ガブリエルが跪いてマリアに告げ知らせるというポーズになっています。「聖母戴冠」の場面も兼ねているせいか、マリアは堂々としていて、ちょっと上から視線に見えるのは、私の気のせいでしょうか。

羊飼いへのお告げ (El Anuncio a los Pastores)

救い主イエスが誕生したことを真っ先に知らされたのがこの羊飼いたちでした。ベツレヘムの町で救い主が生まれたと告げられ、幼子イエスを探しに行き、マリア、ホセ、そしてイエスを探し出します。

「PINTURA ROMANICA PANTEON REAL DE SAN ISIDORO」ANTONIO VIÑAYO GONZALES Y MANUEL VIÑAYO GONZALEZ (Fotogragía) Edición de 1971, CATEDRA DE SAN ISIDORO Y EDITORIAL EVERESTO より

この絵は、 レオン市にあるサン・イシドロ王立参事会教会(11世紀)の天井画にある「羊飼いへのお告げ」の場面です。

パンフルートのような笛を吹いている羊飼い、角笛を吹く羊飼い、レオン・マスティフ犬に水を与える羊飼い、誕生を告げる天使、羊、山羊、牛などの動物、そして植物が描かれています。パンフルートのような笛を吹く羊飼いと、天使の服の襞、そしてカーブした草がこの天井画全体に動きを感じさせ、動物たちの姿が生き生きと描かれ、その表情はそれぞれ異なっています。上部に描かれている3頭の牛たちのちょっとキョトンとした顔つきが笑いを誘います。そして何よりも、牧歌的でのんびりとした雰囲気が伝わってきます。

キリスト誕生(El nacimiento de Jesus)と東方三賢王の礼拝(La adoración de los Tres Reyes Magos)

幼子イエスが生まれると、東方でユダヤ人の王として生まれたイエスの星を見た3人の賢王がヘロデ王のもとに行き、幼子がどこにいるのか尋ねました。ヘロデ王は祭司長や律法学者を集めてそのユダヤ人の王となる子がどこで生またかを問いただします。そして彼らはベツレヘムでその子供が生まれたと答えました。そこで3人の賢王たちが幼子イエスを探しに出かけると、星が彼らを導き、イエスの居る場所で星が止まりました。賢王たちはイエスが生まれた馬小屋に入り、幼子イエスを拝み、捧げものを送りました。その場面が「東方三賢王の礼拝」と呼ばれるものです。

アエド・デ・ブトロン村にある聖母の被昇天教会(Iglesia de Nuestra Señora de Asunción) (写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

こちらは、ブルゴス県のアエド・デ・ブトロン村にある聖母の被昇天教会(12世紀)の入口のタンパンに彫られている「東方三賢王の礼拝」場面です。

マリアの膝に座るイエスは、東方三賢王の一人とまるで何か話しているよう。マリアは誇らしげに堂々としますが、面白いのがヨゼフ。ヨゼフは肘を膝についてまるで居眠りしているようです。素晴らしいのは、東方三賢王の礼拝に花を添える楽士たち。一人一人の楽器を眺めていると、まるで幼子イエスを讃える宗教音楽が聞こえてきそうです。

アエド・デ・ブトロン村にある聖母の被昇天教会(Iglesia de Nuestra Señora de Asunción) (写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

幼子イエスのいないキリスト誕生場面 エル・サルバドール教会 (Iglesia de El Salvador) (写真:アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

最後に、ロマネスク美術ではないのですが、珍しいキリスト誕生の場面があったので紹介します。

この珍しいキリスト誕生場面は、パレンシア県ポサンコス村のロマネスク様式の教会エル・サルバドール教会の中にあったものですが、なんと、主役である幼子イエス不在!!のキリスト誕生場面なのです。説明してくださったガイドさんによると、幼子イエスが長い歳月の中で失われてしまった可能性もあるけれど、幼子イエスがいたであろう場所の破損等がないことから、もしかしたら最初から幼子イエスは不在だった可能性もありますとのこと。

左上には幼子イエスを寝かせるベットを天使が運んできています。中央上にはあの幼児虐殺で有名なヘロデ王がイエスの誕生を盗み見しています。ヘロデ王が出るキリスト誕生場面も珍しいものです。

日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、スペインではクリスマスをモチーフにした美術品は多数あります。今回はロマネスク様式のものを紹介しましたが、時代が変わると同じモチーフでも少々異なるものもあり、その違いを見分けたりするのは楽しみの一つです。自分の美術の楽しみ方を見つけてることも旅の喜びの一つでしょう。

参考

・金沢百枝氏が綴る「キリスト教美術を楽しむ 新約聖書編」というブログ。とても興味深いブログです。興味のある方は、是非一読されることをお薦めします。

https://www.kogei-seika.jp/blog/kanazawa/001.html

・同じ金沢百枝氏著書に、『ロマネスク美術革命』(新潮社)があります。これもお薦めの本です。

・スペインロマネスク美術のキリスト誕生場面にまつわるビデオ。

EL NACIMIENTO DE JESÚS DE NAZARET. EL CICLO DE LA NAVIDAD ROMÁNICA – YouTube