第267代ローマ教皇レオ14世
去る5月8日に、キリスト教カトリック教会の新しいトップがコンクラーベ(Cónclave)によって選出され第267代のローマ教皇となりました。初めてのアメリカ合衆国出身の教皇で、ペルーの国籍も持っているとのこと。司教になる前から宣教師として長年、ペルーで活動したため、南米の信者たちからも慕われているようです。実際、スペイン語でのスピーチもあり、長年寄り添ってきたペルーのチクラヨの人達へのメッセージもありました。
スペインでの反応
スペインでは、新教皇が選出されるとすぐニュースとなり、アメリカ合衆国出身でレオ14世の親がスペイン系にルーツを持っているということも強調されていました。
5月8日のスペインの新聞「ABC」では、「ロベール・プレヴォスト氏とはどんな人物か。スペインとの関係、両親と年齢(Quién es Robert Prevost, el nuevo Papa León XIV: su relación con España, sus padres y su edad)(筆者訳)」という見出しで、レオ14世の母方の祖先がスペイン人だったと記載されていました。(参照: https://www.abc.es/sociedad/robert-prevost-misionero-chicago-opciones-elegido-papa-20250508111416-nt.html?ref=https%3A%2F%2Fwww.google.com%2F)
教皇制は、キリスト教の勃興と共に誕生し、様々な局面を迎えながらも2000年以上にも亘り存在し続けているヨーロッパで最も古い制度で、世界でも最も古い制度の一つです。世界中の隅々にまで教会があり、その信者数たるや13億人を数えるので、中国やインドの人口がそれぞれ約14億人ということを鑑みると、キリスト教カトリックを「一つの国」と考えるとかなり大きな国になるということです。そのトップの選出に世界中が注目したのも納得ですよね。日本でも教皇の選出方法コンクラーベ(Cónclave)についての報道等も多くみられました。
連日のニュース
さて、新教皇誕生から1週間近く経ちますが、スペインでは連日新教皇のニュースが聴かれます。
昨日(5月12日)のスペインの新聞「20 minutos」では、「新教皇レオ14世、バチカンから生中継。教皇はバチカンのメディアに「平和のためのコミュニケーションの道」を選ぶよう呼びかける(Nuevo Papa León XIV, en directo | El Papa pide a los medios en el Vaticano que elijan “el camino de la comunicación a favor de la paz”)(筆者訳)」という見出しの記事を掲載して、刻一刻と新教皇の行動を伝えています。(参照: https://www.20minutos.es/internacional/directo-robert-prevost-nuevo-papa-leon-xiv-ultima-hora-vaticano-5708614/)
本日(5月13日)のスペイン新聞「El País」には、「レオ14世、トランプ大統領の大量強制送還作戦に立ち向かうローマ法王(León XIV, un papa para hacer frente a la campaña de deportaciones masivas de Trump)(筆者訳)」という見出しで、社会問題に取り組んだレオ13世から「レオ」という名前を選んだことに言及したうえで、「レオ14世は、社会正義へのコミットメントを明らかにした」と締めくくられていました。(参照: https://elpais.com/us/migracion/2025-05-13/leon-xiv-un-papa-para-hacer-frente-a-la-campana-de-deportaciones-masivas-de-trump.html)
教皇レオ13世は、19世紀に、歴史的な回勅『レールム・ノヴァールム(Rerum novarum)』と呼ばれる新教皇の手紙によって、全世界のカトリック教会の司教にむけて、第一次産業革命後に問題となっていた貧富の差や経済・福祉における国家の役割について説き、社会問題に取り組んだ画期的な教皇でした。そのため、教皇レオ14世の母国アメリカ合衆国の大統領が何千人もの移民を犯罪者にし、拘留し、追放していることに対して、この新しい教皇が傍観しているはずはないだろうということです。
他にも本日のスペイン新聞「El Mundo」には、「ローマ法王は「真実を伝えたために投獄されたジャーナリスト」の自由を求める(El Papa pide la libertad para “los periodistas encarcelados por contar la verdad”)(筆者訳)」と題する見出しで、「公正で適切な判断を下すことができるのは、十分な情報に基づいた国民だけです」と教皇は強調していることを取り上げています。(参照: ttps://www.elmundo.es/internacional/2025/05/12/6821c689e4d4d8a06c8b45ae.html)
このように、連日新教皇の行動や、政治的意見等がスペインの新聞には載せられていて、つくづくキリスト教カトリックのトップであるローマ法王の影響力の強さを感じさせられます。と同時に、世界中で戦争や紛争が起きている現在、特にヨーロッパ内でウクライナ戦争が勃発し、多くの人達が犠牲になっていることで一日でも早く停戦が実現されることを願い、また、スペインが一国としてパレスチナを国と認めると宣言したことからも、スペインの人々がガザ地区の非人道的行為に対して、心の底から一刻も早い停戦を願い、その平和の願いを世界的にも影響力のある新ローマ法王に託していることを思い知らされます。