ピリ辛!煮込み鶏肉料理 (Pollo cabreado)

家計に優しい鶏肉は普段料理で活躍してくれる主婦の味方です。私が住むサラマンカのレストランでは地元のイベリコ豚を使った豚肉料理が多いのですが、一般家庭では鶏肉料理もよく食べられています。今回の鶏肉の煮込み料理は、知人の神父様から頂いたオリジナルレシピです。辛いスペイン料理は珍しいのですが、スペインでは辛くするために辛いパプリカや唐辛子、ピパーラ(Piparra)と呼ばれるバスク地方名産の唐辛子等を使った料理が一般的です。今回の料理は唐辛子が使われています。

ピリ辛!煮込み鶏肉料理 (Pollo cabreado)

材料:4人分

・鶏ぶつ切り肉     600~800g

・玉葱         1個

・ニンニク       2~3片(お好みで)

・唐辛子        1~2本(お好みで)

・白ワイン       100ml    

・塩          適宜

・オリーブ油      大さじ4杯(できればエキストラ・バージンオリーブ油)

作り方

1.ニンニクを切りすり鉢で軽く擦る。

私はニンニクたっぷり味が好きなので表示分量より少し多めに入れています。(写真: 筆者撮影)

2.1のニンニクにオリーブ油大さじ2杯と白ワインを100ml程入れて、更に軽く擦り混ぜる。

エキストラバージンオリーブオイルを使うとこんな感じの色になります。(写真: 筆者撮影)

3.鍋にオリーブ油大さじ2杯を敷き、熱くなったら鶏ぶつ切り肉を入れて中強火で焦げ目をつけていく。その後火力を弱中火に下げ、やや大きめに切った玉ねぎを鍋に入れて鶏ぶつ切り肉と一緒に炒める。

玉ねぎは俎板の上で切るのではなく、直接鍋の上でペティナイフを使いながら適当に切っていくのがスペイン風。(写真: 筆者撮影)

4.玉ねぎが少しクタッとなってきたら、予め種を取り除き適当にちぎった唐辛子をいれ更に炒める。

唐辛子はお好みで。(写真: 筆者撮影)

5.2の擦ったニンニク・エクストラバージンオリーブ・白ワインを4の鍋に入れて、鶏ぶつ切り肉に絡ませる。塩もお好みで入れる。鶏肉が柔らかくなるまで煮込む。水分が足りなくなったら、途中で水を差す。最後に味を見て塩味が足りなければ塩を足して出来上がり。

ソースをたっぷりかけてパンに付けながら食べると更に美味!(写真: 筆者撮影)

神父様が教えて下さった「祝福された」ピリ辛の鶏肉の煮込み料理です。ちなみにスペイン語の名前はポージョ・カブレアード(Pollo cabreado)ですが、直訳すると「怒っている鶏肉」という意味で、ピリッと辛い味を「怒っている」と表現しているスペイン人の感覚が面白いですね。この名前も神父様ご自身が名付けられたものです。

日本でも手軽に材料調達できて至ってシンプルな料理ですので、是非ご家庭で試されてくださいね。

修道院のシスターが作る「SUSHI」が大人気!!

スペイン各地にある修道院のシスター達が作って販売する食べ物は、お菓子類やリキュール類、ジャム類やチョコレートなど色々ありますが、今回は、なんとお寿司のテイクアウトを始めたグラナダの跣足(せんそく)カルメル修道院(Carmelitas descalzos)を紹介します。

修道院生活を維持するために

日本でも北海道にあるトラピスト修道院で作られているトラピストバターやクッキーなどは有名ですが、ソフトクリームも売っていて人気だとか。添加物やトランス脂肪酸等が入っていない安心・安全材料を使って作られているお菓子や食べ物っていうイメージが強いですよね。

こちらスペインでも、修道院のシスター達が作るお菓子は昔から自然素材の材料や修道院の中で栽培している果物などを使ってありとても人気があります。観光などで訪れた修道院に売店があると私もつい覗いてお土産や自宅用に買っています。スペイン観光にいらして各地の修道院のお菓子をお土産に買われた経験がある方もいらっしゃることでしょう。

スペインの修道院で作られる食べ物は主にお菓子類ですが、スペインでは11月1日の諸聖人の日(Día de Todos los Santos)頃からクリスマス、2月のカーニバル、そして3月から4月にかかるイースターの頃まで約半年間はそれぞれの祝日に合わせたお菓子を食べる習慣があります。その他の時期は確かにクッキーなどを食べる機会はグッと減ってしまいます。夏の間はやはりアイスクリームをよく食べますし、毎週末に家族で集まってお昼ご飯を食べた後のデザートには、小さなニミケーキを買ってきて食べることが多いようです。

今回話題になっているグラナダの修道院は500年という長い歴史があり、その間シスター達はその土地の伝統的なお菓子を作ってきました。ところが修道院生活を維持するために伝統的なお菓子の販売だけでは経済的にままならなくなってきていたため、ここ数年スペインで大人気の日本の「寿司」をテイクアウトで販売するようになったとのことです。時代の要請にこたえる形で伝統を守るだけではなく柔軟に時代への適応を図っている点は素晴らしいことです。スペインの新聞でも、グラナダの修道院で隠遁生活を送る修道女が作る「祝福された」寿司を食べることができますよ、と記事になって紹介されています。

修道院内に吹く新しい風

現在7名のシスターが修道院内に暮らしていますが、そのうち5人はフィリピンから来た比較的若いシスターです。そのフィリピンの若いシスター達が修道院存続のため、知恵を出し合って伝統的なお菓子だけではなく新しい味を提供することにしました。

跣足カルメル修道院は、修道院の中から出ず禁域生活を送っているシスター達の修道院です。500年間そして今も修道院のお菓子を買いたいグラナダの人達が修道院の入口へ来てベルを鳴らし、格子窓の向こうにいるシスターが「Ave María Purísima(アベ・マリア・プリッシマ=至聖なるマリア様)」と問いかけ「Sin pecado concebida(シン・ぺカード・コンセビーダ=無原罪)」と訪問者が答えると格子窓が少し開くようになっています。これは、罪なくして宿られた最も清らかなマリア様という意味のスペイン語を二つに区切って合言葉の一種として使われているもので、スペイン中の修道院で共通な合言葉です。

ところが、今回はテイクアウトができるように電話応対という現代的な方法も加えたところ、注文の電話が殺到したそうです。お陰で、今では何とか修道院生活を維持することができるようになったとのこと。スペインの修道院に若くて新しい風が吹いたと言えそうです。

Sushi だけじゃない!

フィリピンから来たシスター達は、最初はフィリピン料理の麺類やソータンホン(=sotanghon)、スパイシーなスープ、エキゾチックなマンゴーとパッションフルーツのスムージーなどを作っていましたが、お寿司も加えることにしたそうです。すると、このお寿司が爆発的な人気となったというわけです。

驚くことに30種類ものメニューがあり、まるでレストランのように修道院の売店の入口には写真入りのメニューが張り出してあります。残念ながら私はグラナダには住んでいないので直接見たことはありませんが、下の記事の中の動画で見ることができますのでご覧ください。

https://www.ideal.es/granada/sushi-famoso-espana-monjas-carmelitas-granada-20231030111748-nt.html

それにしても、昨今の和食-特に寿司-の人気には驚かされます。そして、日本では見たこともないようなカラフルな巻き寿司や日本では使わないような食材を使ったヌーベルキュイジーヌ (=新しい料理)がスペインで花開いている感じです。逆に本場日本で一般的な巻き寿司を食べたら、地味で種類が少ないと感じてしまうスペイン人も多いんじゃないかと心配してしまうほどです。(笑)

遠く離れたスペインで500年も続いている修道院の財政再建に一役買っている「SUSHI」、考えてみれば面白いですね。

写真: ウィキペディアドメイン

参考

・今回の内容は、スペインの様々なメディアが取り上げているニュースを基に書いたものです。興味のある方はスペイン語ですがこちらの記事も読まれてください。写真や動画もあるので分かりやすいと思います。

こちらは、修道院長へのインタビューやシスター達がお寿司を作るビデオを見ることができます。

https://www.ideal.es/granada/sushi-famoso-espana-monjas-carmelitas-granada-20231030111748-nt.html

4番目に大きな通信社であるスペインのEFE通信社のデジタル新聞でも取り上げられています。

https://www.elperiodico.com/es/cata-mayor/actualidad-gastronomica/20231102/monjas-clausura-carmelitas-granada-sushi-94037639

https://www.granadahoy.com/granada/monjas-clausura-Granada-encargo-receta-celestial_0_1843617036.html

https://www.lavanguardia.com/comer/al-dia/20231031/9340437/monjas-clausura-sushi-encargo-receta-celestial-agenciaslv20231030.html

*アイキャッチの写真はウィキペディアドメイン写真です。

ロマネスクへのいざない (15)- アストゥリアス州 (3)– バルデディオスのサン・サルバドール教会 (Iglesia de San Salvador de Valdediós)

秋雨の降る中、訪れたサン・サルバドール教会は周りの風景ともピッタリ溶け合っていた。(写真: アルベルト・F・メダルデ)

神の谷」に佇むアストゥリアス文化(プレロマネスク様式)の教会

サン・サルバドール教会(Iglesia de San Salvador)は、バルディオス(Valdediós)という場所にあるが、日本語に訳すと「神の谷」という意味である。その名にふさわしく人里から離れた神聖な場所にこの教会はひっそりと、しかし存在感をもって威風堂々と佇んでいた。「神の谷」全体が平安、調和、そしてその長い歴史や様々な記憶を喚起させるもので覆われていると感じさせられる、そんな場所である。

アストゥリアス王家の教会

アストゥリアス王国は718年から924年まで約200年間栄えた王国であるが、バルデディオス(Valdediós)のサン・サルバドール教会 (Iglesia de San Salvador)は、このアストゥリアス王国の王家の教会として最後の王アルフォンソ3世(Alfonso III)によって893年に献堂された。アルフォンソ3世(Alfonso III)の祖父ラミロ1世(Ramiro I)は、現在のアストゥリアス州の州都であるオビエド(Oviedo)近郊のモンテ・ナランコにサンタ・マリア・デル・ナランコ宮殿(Palacio de Santa María del Naranco)、そしてより大きな複合施設の一部として宮殿から100m程離れた場所にサン・ミゲル・デ・リージョ教会(Iglesia de San Miguel de Lillo)を建設したが、今回訪れたバルデディオス(Valdediós)のサン・サルバドール教会(Iglesia de San Salvador)は、これらの夏の宮殿群の神殿である。

当時イスラム教勢力がイベリア半島の大部分を征服していたが、アストゥリアス王国最後の王アルフォンソ3世(Alfonso III)は、イスラム教から解放されキリスト教勢力への奪回を目指すレコンキスタ(国土回復運動)を精力的に推進した王で良く知られている。しかし、晩年には3人の息子たちと対立するようになり、このバルデディオス(Valdediós)のサン・サルバドール教会 (Iglesia de San Salvador)がある修道院に幽閉される身となった。

アストゥリアス王家の教会を示すものとして、教会の入口の上に「勝利の十字架(Cruz de la Victoria)」が刻まれていることでもわかる。この「勝利の十字架(Cruz de la Victoria)」は、レコンキスタの出発点となったコバドンガの戦いでアストゥリアス王国の建国者ペラヨが掲げた木の十字架のことで、アルフォンソ3世はこれを王国の紋章としていた。

キリスト教の中で最も頻繁に用いられる十字架の形「ラテン十字(Cruz latina)」。万物の最初と最後を意味し、永遠の存在者である神とイエスを示す「アルファ(A)」と「オメガ(ω)」が刻まれているが、アストゥリアス王国の紋章「勝利の十字架(Cruz de la Victoria)」では、写真でお分かりいただけるようにオメガは「Ω」ではなく「ω」で表されている。 (写真: アルベルト・F・メダルデ)

昔もリサイクル活用!

この教会にはローマ時代の遺跡のリサイクルがなされていて興味深い。まず、入口の2本の柱は斑岩(はんがん-Pórfido)でできているが、この石はアストゥリアス地方にはない岩で、ローマ時代に使われていた物をリサイクル活用されているとのことだった。そして、この斑岩(Pórfido)という赤い石は、花崗岩よりも硬くどんな気候条件にも永久的に耐える事ができ、ローマ時代には大きな権威と真の品位の象徴であった。サン・サルバドール教会 (Iglesia de San Salvador)では、王家の教会の入口の柱に使われていることは注目に値するだろう。

石の色が赤いローマ時代の物をリサイクルした2本の柱は、他の部分に使われている石の種類とは異なっていることが一目瞭然。 (写真: アルベルト・F・メダルデ)

祭壇に使われている柱は大理石(mármol)で、こちらもローマ時代の物をリサイクル活用したもの。柱頭は時代が下りロマネスク時代のもので、大きなシダの葉の模様が見られる。

教会内の祭壇部分の上部には、3つの十字架が描かれている。(写真: アルベルト・F・メダルデ)

上の写真を見ていただくと分かるが、3つの十字架が描かれている。これは、キリスト教の原点と言われるキリストが磔刑に処せられたゴルゴダの丘に立った十字架を表している。キリストの左右には犯罪者が磔刑に処せられていて3つの十字架が立っていたのである。

そして、真ん中のキリストの十字架には、上の写真ではよく見えないが、万物の最初と最後を意味し永遠の存在者である神とイエスを示す「アルファ(A)」と「オメガ(Ω)」が描かれている。

また、祭壇の後部が窓になっており光が差し込む造りになっているが、光は神を意味し神を体現化していたのである。これら、キリスト教におけるシンボルがちりばめられていることは、非常に重要かつ興味深いものである。

教会の内部

バルデディオスのサン・サルバドール教会 (Iglesia de San Salvador de Valdediós)は、アストゥリアス文化(プレロマネスク様式)建築の好例であり、半円アーチ型天井で覆われた3つの身廊、東向きの3つの礼拝堂、同じくアーチ型天井の3部の玄関の上に位置するトリビューン(教会内の解放された二階部分で、階上廊とも呼ばれる)から成るバシリカ間取りである。

祭壇部分とは丁度反対側、教会入口の二階部分のトリビューンには王と王妃がミサに出席するための特別な場所が設けられていた。これは王家の教会だったことを思い出させてくれる。今も二人のために椅子が2客用意されていて、1000年もの昔、二人揃ってミサに出席していた姿を想像すると微笑ましい。

教会の正面玄関の真上にトリビューンがある。この窓の上にも3つの十字架が見える。今も椅子が2客置かれているのは心憎い演出。(写真: アルベルト・F・メダルデ)

上の写真でもわかるように、身廊は半円アーチで区切られ、中央身廊の高い壁を支えている。これらのアーチは四角い柱の上にあり、スペイン式典礼に必要とされた扉が取り付けられた窪みが見られる。

側廊(El pórtico lateral)

教会のやや後方、南壁の横に建てられた側廊(El pórtico lateral)は非常に興味深い。

南壁の側廊は、透かし窓のある大きな切り石建築の建物。(写真: アルベルト・F・メダルデ)

ガイドの説明によると、葬儀用又は典礼用に使われていたものと考えられている。この教会より後世に建てられたロマネスク様式の教会ではよく見られるようになり、集会所など他の目的にも機能性は拡張されていったとのことだった。

内部は思ったより大きく、透かし窓が美しい。(写真: アルベルト・F・メダルデ)

この側廊(El pórtico lateral)の高さは、主身廊( La nave principal)、南側通路( La lateral sur)、そしてこの側廊(El pórtico lateral)から減少していく量感のバランスの取れた相互作用を生み出すために完璧に計算されていた。(arteguia参照)確かに、外から見た教会の全体像が見れる上の写真でよくわかるように、三層の高さの異なる建築により安定感や躍動感を見る人に与えてくれる。

多様な文化の融合

前述の側廊(El pórtico lateral)に施された透かし彫りの窓は、私たちの目を引かずにはいられない。

1000年以上、風雪に耐え忍んでなお美しい彫刻装飾に感動させられる。(写真: アルベルト・F・メダルデ)

透かし彫りで彫られたこの窓は、スペインが当時イスラム支配に置かれていたこともあり(アストゥリアス地方は別)、イスラム文化やモサラベ文化、そして地元のアストゥリアス文化と、多様な文化の融合を垣間見ることができる貴重な証人だ。

「モサラべ文化」という名前を聞いたことがない方も多いだろう。これは、中世キリスト教美術・建築で用いられた様式の一つであるが、8世紀初頭以来イスラム統治下のスペインはイスラム教徒の治下に混在してキリスト教徒たちが暮らしていたが、イスラム文化の影響を受けながら独自の文化を形成したキリスト教徒(モサラべ)の文化が「モサラべ文化」であり、スペイン特有の文化である。

スペイン語では Celosía(セロシーア=格子窓)と呼ばれるこの透かし彫り入りの窓は、明かり取りや通気性のためにガラスをはめないタイプのものだ。

下の写真で見える屋根の上に凸型の突起のようなものがあり、これは、スペイン語では Almena(アルメナ=のこぎり壁、鋸壁(きょへき))と呼ばれるものだとのこと。そして、これはイスラム文化が華咲いていたスペイン南コルドバのメスキータにも見られるものだということだった。

主身廊( La nave principal)部分の屋根の上にはAlmena(アルメナ=のこぎり壁、鋸壁(きょへき))がみえる。(写真: アルベルト・F・メダルデ)

比べてみると確かに共通点があるようだ。

メスキータの建物の中でも最も古いものの一つ、サン・エステバン門。凸型の突起のようなAlmena(アルメナ=のこぎり壁、鋸壁(きょへき))が見られる。(写真: ウィキペディアドメイン)

そして、バルデディオスのサン・サルバドール教会 (Iglesia de San Salvador de Valdediós)の透かし窓、鋸壁等の彫刻装飾は、モサラべの巨匠によるものだろうということだった。

教会の建築物自体は前述の如くアストゥリアス文化(プレロマネスク様式)建築の好例であり、その細部の彫刻装飾にモサラべ文化を取り入れたハイブリッドなものになっており、その当時のスペインで定着していた多様な文化の融合を目の当たりにできる教会でもある

最新の研究

今回の訪問でとても興味深かったものの一つに、ガイドが説明してくれた最新の研究の説明があげられる。様々な研究が進み、建築当時の内部の想像図を再現したものをタブレットで見せてもらった。

基本的に、ロマネスク時代の教会内部は美しい色で装飾されていたものが多かったが、現在までその装飾が鮮明な形で保存されている例は数少ない。バルデディオスのサン・サルバドール教会 (Iglesia de San Salvador de Valdediós)も他のスペイン各地の教会・大聖堂等と同様に、ペスト時代に教会内部を石灰(Cal)で覆われた。それは、石灰は消毒剤の効果があると考えられていたからである。

しかしテクノロジーの進化に伴い失われた当時の姿を再現することができるようになっているのは、現代に生きる私たちの特権だなと感じた。

建築当時の教会内部装飾の想像図。赤褐色を基調とする幾何学模様が施されていたと考えられている。(写真: 筆者撮影)

現在の教会内部の写真と比べてみたいところだが、手元によく映っている写真がないので、こちらのサイトにある教会内部の写真を参考にして頂きたい。正面に見えるアーチの左側部分は現在も少し残っている装飾が見える。

https://www.arteguias.com/iglesia/sansalvadorvaldedios.htm

現在の教会内部とはかなり異なり賑やかな装飾に溢れていたようだ。

最後に

バルデディオスのサン・サルバドール教会 (Iglesia de San Salvador de Valdediós)の敷地内には、シトー会修道士達によるサンタ・マリア修道院(Monasterio de Santa María)が建っている。この修道院には、2020年までは少数の修道士たちが居たが、今は完全に観光のみとなり、ガイド案内が行われている。今後は、巡礼者のためのゲストハウスとして開かれることが考えられているそうだ。

サン・サルバドール教会 (Iglesia de San Salvado)から見えるサンタ・マリア修道院(Monasterio de Santa María) (写真: アルベルト・F・メダルデ)

バルデディオスのサン・サルバドール教会 (Iglesia de San Salvador de Valdediós)並びにサンタ・マリア修道院(Monasterio de Santa María)がある「神の谷」と呼ばれるバルディオス(Valdediós)渓谷は、1000年を超えるオークや栗の木が生い茂り、川のせせらぎと鳥のさえずりが私たちの聴覚を刺激し、この世俗から離れた神聖な場所に1000年以上時が止まったがごとく建つ建物は、私たちの五感に特別な何かを感じさせてくれる。

参考

・サン・サルバドール教会の横にあるサンタ・マリア修道院の公式ウエブサイトは次の通り。サン・サルバドール教会とサンタ・マリア修道院の両方を見学できるが、このサイトから時間帯等を確認及び予約できる。

https://monasteriovaldedios.com/en/home-english

・ここで紹介したバルデディオスのサン・サルバドール教会 (Iglesia de San Salvador de Valdediós)は、アストゥリアス州のロマネスクを訪ねたルートの中の一つだ。このルートを知りたい方はこちらを参考にしてほしい。