スペインのワイナリー見学-エラクリオ・アルファロ(Heraclio Alfaro)

スペインいろいろ

スペインでは、ワイナリーを見学してワインを試飲するエノツーリズム(ワインツーリズム)と呼ばれるワイン観光に人気があります。ワイナリー見学&試飲だけでなく、ブドウ畑を馬で周ったり、散策したり、昔ながらのブドウ踏みをする等々体験型のエノツーリズムもあります。また、家族でも楽しめるようにワインではなく、未成年には「モスト」と呼ばれるグレープジュースを出してくれたり、子供用にブドウやワインに関することを学ぶ体験を提供してくれる様々なエノツーリズムがあって、子供やワインに興味のない大人をも巻き込んだ観光が魅力です。今回は、スペインの赤ワインの代表「リオハ」にあるちょっと変わったワイナリー見学を報告します。

スペインのワインと言えば「リオハ、「リオハ」のワインと言えば「テンプラニーリョ種」 (写真:筆者撮影)

「エラクリオ・アルファロ(Heraclio Alfaro)」ワイナリーの歴史

近年、有名ワイナリーのなかで、有名建築家による奇抜なワイナリーが色々と出ていますが、ここのワイナリー程ユニークなワイナリーはそんなにないのではないでしょうか。

現在ワイナリーがあるこの場所は、スペインでは歴史的な場所として知られています。1919年に飛行場がここに作られました。発着場として使われていた土地は、今では見渡す限りのブドウ畑になっています。今使われているワイナリーは飛行機の格納庫として作られた建物を改装したもので、格納庫としての構造は今も残っています。

発酵温度をコントロール「タンク室」 (写真:筆者撮影)

1970年代に、最初のワインを造り始め、2000年には別のファミリーがこのワイナリーを受け継ぎ、近代化して「エゴメイ」という名前で新しいラインのワインを造りました。そして、2018年にテーラス・ガウダ・グループがこのワインに新しい風を吹き込み、2015年に最初のワイン「エラクリオ・アルファロ・クリアンサ」がヴィンテージされました

テーラス・ガウダ・グループは、ガリシア州にある白ワインのワイナリーから発展したグループで、ガリシア州の白ワインワイナリーが赤ワインの代表地ともいえるリオハ州のワイナリーに進出するのはスペインでは初めてのことで、テーラス・ガウダ・グループはその意味でのパイオニアです

スペインのワイナリー見学-テーラス・ガウダ(Terras Gauda) | おいでよ!スペイン (shiroyshishi.com) テーラス・ガウダ・グループについてはこちらもどうぞ。

「木樽熟成庫」木樽はフランス・オーク(写真:筆者撮影)

エラクリオ・アルファロ とは?

さて、このワイナリーの名前「エラクリオ・アルファロ(Heraclio Alfaro)」は、スペインの飛行機パイロット、飛行機製作者としてのパイオニアであるエラクリオ・アルファロ氏に敬意を表して、その名前を冠したものです。

エラクリオ・アルファロ氏は、20世紀初頭において、国境を越えて活躍したまさしく「グローバル」な人物でした。1914年、パイロット資格を取り、世界でも最も若いパイロットの一人で、なんと21歳という若さでした。そして彼は飛行機を操縦するだけではなく、スペインで初めて一から最初の飛行機を作り上げたのです。その後、アメリカに渡り、航空学においていくつも賞を受け、ボストンにあるマサチューセッツ工科大学で教鞭をとり、同時に飛行機設計を続け、多くの特許をアメリカやカナダで取りました。グローバルでパイオニア、自分の夢を追求した人物といえるでしょう。

彼のようにグローバルでパイオニア、そしてこのワイナリーで働く人たちのワイン造りに対する熱い思い、そして夢を追求するという意味を重ね合わせ、ワイナリーの名前、そして最初のワインの名前も彼の名前が付けられました

1914年 自身作成の「アルファロ1号」に乗るエラクリオ・アルファロ氏 (Wikipedia Public Domain)

多様な畑と挑戦

現在、115ヘクタールの畑を所有しており、リオハ地方特有の黒ブドウの3つの品種に割り当て、テンプラニーリョ種、グラシア―ノ種、マスエロ種を栽培しています。ブドウの木は70年代に植えられたもので、樹齢45年ほどです。また、この地方で最も高い地域(海抜750m)にあるブドウ畑もあり、そこではガルナッシュ/ガルナッチャ種を栽培しています。 この品種を加えることで、フレッシュな果実と酸味のある、より調和のとれたワインを造ることができます。

リオハ地方では、この土地のブドウであるテンプラニーリョ種とガルナッシュ/ガルナッチャ種が多く栽培されていましたが、このガルナッシュ/ガルナッチャ種はテンプラニーリョ種と比べ繊細な種類で、花が咲く時期に花が散ってしまうことが多くみられるそうです。そのため、ブドウの房にびっちり実が生らないのでどうしても収穫量が減り、栽培を嫌厭される傾向になり、どんどん地元のブドウであるガルナッシュ/ガルナッチャ種の栽培が減少していたとのこと。しかしこのワイナリーでは、ガルナッシュ/ガルナッチャ種にも力を入れて栽培し、ガルナッシュ/ガルナッチャ種を多く含むワインを造ることにチャレンジしています

調和のとれたワインに仕上げるには欠かせない「ガルナッシュ/ガルナッチャ種」  (写真:筆者撮影)

このワイナリーの特徴の一つとしては、 ブドウ畑だけではなく果樹園とオリーブ畑もあるところでしょうか。12ヘクタールは、果実園とオリーブ畑として割り当てられています。ブドウだけではなく、リオハ州という果実や野菜などにも適した気候・土地を生かし、リンゴやオリーブも栽培しています。

緑色のオリーブの実がたわわに実っていました (写真:筆者撮影)
リンゴの種類はなんと日本の「ふじ」! スペインでも人気のりんごです(写真:筆者撮影)

ここで取れたオリーブの実はエクストラ・バージン・オリーブオイル用に使われていますが、今年リオハ州が主催するコンクールで、エコ栽培を対象にした「オリーブの実」カテゴリーで2位を受賞しました! スペインで栽培されているオリーブの品種は、なんと200種類以上ありますが、ここで栽培されているものはアルベキ―ナ(arbequina)という種類で、苦みや辛みのないサッパリとした口当たりで、オリーブの果実特有のフルーティな香りがするとても美味しいエクストラ・バージン・オリーブオイルです。オリーブオイルになじみのない方にも癖のないすんなりと味あえる種類のオリーブオイルでお薦めです。

ラベルも素敵な「エラクリオ・アルファロ」のエクストラ・バージン・オリーブオイル(写真:筆者撮影)

試飲

一通りワイナリー内を見て回り、説明も聞いた後、試飲です。お店の後ろにテイスティング・スペースが設けられていました。大きなガラス張り窓から見えるザクロの木には赤い実がなっていて、まるで額縁の中の絵のような美しさを感じました。

ザクロの木 (写真:筆者撮影)

色々と説明してくれたホルヘ(Jorge)とイドージャ(Idoya)。本当にワイン造りに対する熱い思いを語ってくれました。リオハ州の赤ワインの代名詞のようなテンプラニーリョ種の ブドウは、荒々しくもがっちりとした味わいが魅力。そこに女性的な繊細でフレッシュなガルナッシュ/ガルナッチャ種を加えることでハーモニーが生まれ、口当たりの良いワインになるとのこと。そしてフランス・オークの木樽で熟成させることにより、バニラのようなちょっと甘い風味になるとのこと。

イドージャは、このワイナリーのワイン造りを直接担当しているエノロゴ(醸造家)で、私が訪れた日も茎がついたままでワインを醸造する「全房発酵」と茎を取る「除梗」を行ってワインを醸造する実験用のワインの準備を忙しく行っていましたが、日々、自分たちの求めるワインを造るために色んな試行錯誤を繰り返していると熱く語ってくれました。

ワイナリーのアルムデナ、ホルヘ、カルメン、イドージャ(写真:筆者撮影)

試飲のワインは、ここのワイナリーで造られている2種類のワイン「エラクリオ・アルファロ」と「エラクリオ・アルファロ・フィンカ・エスタリホ」。この2種類の赤ワインは、両方ともテンプラニーリョ種、 グラシア―ノ種、マスエロ種、ガルナッシュ/ガルナッチャ種の4種類のブドウから造られていますが、割合の違いでかなり口当たりの異なるワインになっています。試飲で、同じ種類のブドウのワインでも割合によって味だけではなく香さえも異なるワインができるということが実感でき、素人の私にとっては驚きの体験でした。

「エラクリオ・アルファロ」は、赤ワインのクリアンサ。フランス・オークの木樽で12ヶ月熟成し、12ヶ月以上貯蔵したもので、テンプラニーリョ種が40%、グラシア―ノ種5%、マスエロ種5%、ガルナッシュ/ガルナッチャ種が50%。このワイナリーが力を入れているガルナッシュ/ガルナッチャ種を多く用いて新しい「リオハワイン」を造りだしています。

「エラクリオ・アルファロ・フィンカ・エスタリホ」赤ワインのクリアンサ。こちらは、フランス・オークの木樽と700Lのフードル(大樽)で16か月熟成した後、12ヶ月以上貯蔵したものです。テンプラニーリョ種が30%、 グラシア―ノ種30%、マスエロ種10%、 ガルナッシュ/ガルナッチャ種が30%。 こちらは「エラクリオ・アルファロ」に比べてヴィンテージ数も少なくリミテッドエディションだそうです。

左がテンプラニーリョ種 右がガルナッシュ/ガルナッチャ種(写真:筆者撮影)

また、丁度収穫前に訪れたので、テンプラニーリョ種とガルナッシュ/ガルナッチャ種のブドウの実を食べ比べさせていただきました。イドージャの説明のように、確かにテンプラニーリョ種はそもままブドウとして食べるにはちょっと大味でイマイチ。でもガルナッシュ/ガルナッチャ種の方はそのまま食べても十分美味しく洗練された味で、なるほどこれらを組み合わせて調和のとれたワインを造っていく難しさと醍醐味を実感できました。

左が「 エラクリオ・アルファロ・フィンカ・エスタリホ 」右が「 エラクリオ・アルファロ 」(写真:筆者撮影)
ワインの箱のデザインも素敵なのでお土産にピッタリ!(写真:筆者撮影)

スペイン初のパイロット兼航空学者であるエラクリオ・アルファロ氏についての歴史や、そのパイオニア精神をワイン造りに引き継いでいこうという心意気にも深く感銘を受け、ワインを通して知ることのできる様々な物語を楽しむことができました。

またワインだけではなく、オリーブやリンゴを栽培している多様な土地柄を目の当たりにして、涼しく比較的乾燥しているこの土地の特性も知ることができました。

試飲の後で (写真:筆者撮影)

おすすめ!ワイナリー見学

「エノツーリズム(ワインツーリズム)では、ワイナリーのワインを味わうだけではなく、ワインを造っている人達の情熱、思想、哲学までも垣間見ることができ、そしてワインを造るブドウを育んだ土地への愛着、その土地特有の文化や自然に対する深い理解も実感できます。

ここのワイナリーのガイドをしてくれるホルヘは英語でのガイドもOKとのこと。是非、スペインにいらっしゃる際は、「エラクリオ・アルファロ」ワイナリーのエノツーリズム(ワインツーリズム)を旅行計画に入れてみてはいかがでしょうか。

参考

・「テーラス・ガウダ(Terras Gauda)グループ」の公式サイト。「Enoturismo」をクリックして「Heraclio Alfaro」を見てください。:https://www.terrasgauda.com/ 

・ スペイン観光公式サイトがエノツーリズムについて紹介しています。日本語です。 リオハ・オリエンタルのワインルート。。エノツーリズム | spain.info 日本語

・日本人向けにワイナリーツアーを企画している会社(スペインワインのプロフェッショナルである、バルセロナのOFFICE SATAKEと、バリャドリッドのBUDO YAを中心にスペイン各地のプロフェッショナルが、ワイナリーを本格的に案内)。http://enoturismo.jp/?page_id=703

・ラ・リオハ州公式観光サイト。ラ・リオハ州のエノツーリズムについてのサイト。Enoturismo – La Rioja Turismo

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