ガリシア州の南の街バイヨーナを訪れるたびに、モンテレアル城(バイヨーナ城とも呼ばれています)から見える歴史的な船のレプリカがマリーナに浮かんでいて、気になりながらも船の中まで入ったことがなかったので、今回訪れてみました。

カラベラ船ピンタ博物館(Museo la Carabela Pinta)とは

学校の教科書でも必ず登場するクリストファー・コロンブスは、地球は丸いということを確信して、西廻り航路によってアジアへ航海することを決めて1492年にスペイン南部のパロス・デ・ラ・フロンテーラ(Palos de la Frontera)から出航しました。そして、現在のハバナ諸島に到着して翌年スペインに戻ってきました。

コロンブスは3隻の船で航海に乗り出しましたが、その中で最も速度が速く陸地を最初に発見した船が、カラベラ船ピンタ号(La Pinta)でした。因みに、コロンブスが乗船していた司令船はサンタ・マリア号(Santa María)、そしてコロンブスのお気に入りの船ニーニャ号(La Niña)が他の2隻でした。

カラベラ船ピンタ号博物館(Museo la Carabela Pinta)は、1493年3月1日にヨーロッパ人にとってのアメリカ大陸発見の知らせを携えてこの港に到着した、歴史的な船舶の完全なレプリカを船体とした、水上博物館です。

500周年(1993年)を記念してカラベラ船ピンタ号(La Pinta)のレプリカが建造され、港の埠頭に水上博物館として訪問者が見学できるよう係留されていました(写真: 筆者撮影)

カラベラ船ラ・ピンタ号の内部

早速中に入ってみましょう。

最初の感想は、大航海をした船はもっと大きなものだと思っていたせいか、想像していた以上に船の中は狭いなと感じました。甲板はまだそれなりの広さがあるのですが、船長が居た場所はかなり狭いなと。船内の説明板に、「乗組員の正確な人数は不明であるが、大工(carpinteros)、船大工(calafates)、水夫(marineros)、医師・外科医(médico-cirujano)を含め、23人から27人と推定されている」と書かれていて、20名以上の人達が数か月間寝起きを共にするにはちょっと辛かったんじゃないかなと想像しました。

家族連れなどが見学に訪れていました(写真: 筆者撮影)

船内は、当時の船乗りたちの生活ぶりがうかがえるように簡単な説明板がありました。また、この航海によって到着した土地から持ち帰った様々な物(金属、食用植物、繊維用植物、薬用植物、鳥など)も展示されていて、視覚的に分かりやすく子供たちも楽しめる水上博物館です。

マルティン・アロンソ・ピンソン(Martín Alonso Ponzón)船長の執務台には様々な計器が備えられていて、ここで太陽や北極星の高さを測定し、地球の緯線に対する船の位置を算出したりしていました(写真: 筆者撮影)

この船には、バイオーナ出身の乗組員もいました。操舵手クリストバル・ガルシア・サルミエント(Cristóbal García Sarmiento)は、船長の指示に従って船を操縦する役目を担っていました。

操舵手クリストバル・ガルシア・サルミエント(Cristóbal García Sarmiento)の仕事ぶりを再現しています(写真: 筆者撮影)

階段を下りて倉庫に入ってみましょう。

倉庫は閉塞感はあまりなく、思ったより広い空間が広がっていました(写真: 筆者撮影)

倉庫には航海中の船の維持管理や乗組員の生活に必要なあらゆる物資を保管していました。また、食料や医薬品だけでなく、帆、木材、工具、ロープ、タールを塗った防水布、麻布、その他様々な物資も保管されていました。説明板によると、乗組員たちは甲板上の藁マットや荷物の束の上で寝床をとっていたそうです。

船大工等の仕事場を再現(写真: 筆者撮影)

博物館は整然としていましたが、20人以上の乗組員たちが数か月間必要としていた食料や飲み物だけでも相当な量だったと想像できます。きっと、足の踏み場もないほど、当時の倉庫は満杯だったことでしょう。

「Botiquín(ボティキン」と呼ばれる薬棚(写真: 筆者撮影)

上の写真のように、船の薬棚には事前に調剤師に注文して作ってもらった調剤薬や、オリーブオイルや牛脂など地元産の品々が入っていました。しかし、各種スパイス、サフラン、クローブ(丁子)、コショウ、ナツメグ、生姜など、高価で貴重な外国産の品々も含まれていました。これらは医療において不可欠な用途があり、重宝がられていたものでした。

上の薬棚の上段右端にある薬瓶には「Arnica(アルニカ)」という名前が見えます。これは、ヨーロッパ原産のキク科の植物で、スペイン語の「Arnica(アルニカ)」は比喩として「特効薬」という意味もある単語です。主に打撲傷や青あざ等に使われ、痛風、リウマチ等の治療薬としても使われていました。

こちらは新大陸から旧大陸にもたらされたトウモロコシ、トマト、ジャガイモ、そして鳥のインコが展示されていました(写真: 筆者撮影)
コロンブスが現地から連れてきたアラワク族のひと(写真: 筆者撮影)

とかく欧州ではコロンブスの新大陸発見や西廻り航路の発見による経済的活動の活発化等、ポジティブに受け止められている印象がありますが、コロンブスによる現地人の強制連行やその後の奴隷貿易等を考えると、別の面から見た歴史というものを改めて考えさせられました。

最後に

スペインの中では夏の間バイヨーナを訪れる人は多いのですが、まだまだ海外にはあまり知られていない街ということもあり、水上博物館の中は人もまばらでユックリ見て回ることができました。インターネット動画や画像で見る船とは異なり、矢張り乗ってみて体験することから感じることも多く、興味深い一時でした。

この後、バイヨーナの街の中心にある航海博物館(Casa de la Navegación)にも足を延ばして見聞を広げました。こちらの博物館もこじんまりとした大きさでしたが、コロンブスの航海に関する資料なども多く展示されていました。

航海博物館(Casa de la Navegación)についてはこちらもどうぞ。

カラベラ船ピンタ号博物館(Museo la Carabela Pinta)の情報

住所:ポンテベドラ県バイヨーナ市パンタロン・デル・パセオ・アルフォンソ・ノベノ通り 郵便番号 36300   (Pantalán del Paseo Alfonso IX 36300 Baiona Pontevedra)

開館時間:月曜日閉館、火~金 10:00~13:00, 16:00~19:00、土日 10:30~13:00, 16:30~19:00

入場料:2ユーロ(カサ・デ・ラ・ナベガシオンとのセット券の場合は5ユーロ)

*2026年8月現在の情報ですので、訪れる方は事前に確認されるようお願いいたします。

参考

・こちらのサイトには英語による水上博物館の簡単な説明があります。

https://turismoriasbaixas.com/en/search/museo-de-la-carabela-pinta

・こちらのサイトはスペイン語ですが参考に。

https://www.paxinasgalegas.es/fiestas/carabela-la-pinta-baiona-6064.html