スペインのワイナリー見学(3)-クネ(CVNE)

イースター休暇を利用してラ・リオハ州にあるクーネ(CVNE)というワイナリー見学に行ってきました。スペインワインと聞いて一番有名なワインの産地はやはりリオハワインだと思います。その中でも、クネ(CVNE)は1879年から140年以上も続く伝統あるワイナリーでまさしくスペインを代表するワイナリーと言えます。

ワイナリー見学はこちらから!(写真: 筆者撮影)

「クネ(CVNE)」ワイナリーの歴史

通称「クネ」と呼ばれているワイナリーの正式名称はコンパニア・ビニコラ・デル・ノルテ・デ・エスパーニャ(Compañía Vinícola del Norte de España )で、その頭文字を取って「C.V.N.E」です。日本語に訳すと「スペイン北部のワイン醸造会社(筆者訳)」となり、えらく抽象的な名前の会社だなというのが私の最初の印象でした。(笑) 「クネ(Cune)」と呼ばれている理由は、「V」を「U」にする方が呼び名として洒落た感じだったからだとか。上の写真でもワイナリーの名前「クネ(Cune)」の文字が見えます。

ワイナリーの敷地内は、ちょっとレトロな雰囲気が漂っていました(写真: 筆者撮影)

前述したようにこのワイナリーは、1879年リオハ州にあるアロ(Haro)という街にレアル・デ・アスーア兄弟(Real de Asúa)によって設立されました。もともとはリオハ州出身ではない二人でしたが、健康上の理由からこの地に移り住むことを決め、家族経営のワイナリーを始めることにしたとのこと。今も同じレアル・デ・アスーア家の人達の手により、質の高い、職人的かつ伝統的なワインを生産し続けています。

アロ(Haro)にはクネ(CVNE)以外にも有名なワイナリーが沢山あります(写真: 筆者撮影)

クネ(Cune)と言えばインペリアル(Imperial)!!

スペイン人にクネ(Cune)の代表的なワインは何?と尋ねると、必ず帰ってくる答えは「インペリアル・レセルバ(Imperial Reserva)!!」。このワインは、良質なぶどうが収穫され、優良なヴィンテージが期待出来る年にのみ造られる特別なワインです。

私の義母はリオハ州出身ですが、クリスマスプレゼントの定番がこの「インペリアル・レセルバ(Imperial Reserva)」。「このワインを嫌いな人なんていないわよ!」と言っている通り、地元の人達にも圧倒的な信頼を置かれているワインなのです。それもそのはず。このインペリアルワインはスペイン国王が毎年樽で購入しているプレミアムスペインワインなのです!

更に、「インペリアル ・グラン・レセルバ 2004(Imperial Gran Reserva 2004)」はアメリカのワイン専門誌『ワイン・スペクテーター』が選ぶ2013年世界のTOP100ワインランキングにて堂々【第一位】に輝き、スペインワイン初の快挙、まさに革命的な出来事となりました。

マグヌム (magnum) と呼ばれる1.5L入りのワインと3L入りの巨大ワインが売ってありました。うーん、3Lのワインを注ぐのはかなり大変そう…(写真: 筆者撮影)

スペインフェリペ国王とレティシア王女は2004年5月22日に結婚式を挙げられたので丁度今年は20周年という記念の年です。その壮麗な儀式の後で、披露宴の食事に振舞われた赤ワインがクネ(Cune)の「インペリアル ・グラン・レセルバ 1994(Imperial Gran Reserva 1994)」でした。前述のワイン・スペクテーター』が選ぶ2013年世界のTOP100ワインランキングにて堂々【第一位】に輝いた「インペリアル グラン・レセルバ 2004(Imperial Gran Reserva 2004)」は、奇しくもお二人が結婚された年のワインなので、今年5月22日の結婚記念日にはこの「インペリアル グラン・レセルバ 2004(Imperial Gran Reserva 2004)」でお祝いされるかもしれませんね。

ちなみに、結婚式に振舞われた白ワインは「テーラス・ガウダ(Terras Gauda)」でした。このワインのワイナリーについて興味がある方は、こちらもご覧ください。

エッフェル設計のワイン倉庫

樽詰めしたワインを寝かす倉庫は、伝説の建築家アレクサンドル・グスタフ・エッフェルのスタジオが設計したもので、1890年から1909年にかけて建てられました。建築家アレクサンドル・グスタフ・エッフェルと言えば、パリのエッフェル塔が有名ですよね。

約17mx47mの長方形の間取りで、その広さは800㎡というかなり大きな倉庫(写真: 筆者撮影)

上の写真を見てお分かりになるように、これだけ大きな倉庫に柱が1本もありません。屋根は壁から壁へと走る金属製のトラスで支えられ、革新的な固定方式を採用した堂々たる構造となっていて、空間革命となりました。

この大きく開放的な空間は、建物内の樽の管理を大幅に最適化し、ワインの棚入れ、メンテナンス、管理を容易にしました。エッフェルが設計した倉庫と整然と並べられた大量のワイン樽は必見の価値ありです。

「インペリアル(IMPERIAL)」ワインの樽(写真: 筆者撮影)

ワインの墓場(Cementerio)⁉

次に、ワイナリーの見学の最大のミステリーとなる「墓場(Cementerio)」と呼ばれる地下室へと誘引されました。ガイドさんの懐中電灯の明かりだけを頼りに「墓場(Cementerio)」へと入ると、まるでミステリー映画かヨーロッパの中世にでもタイムスリップしたかのような錯覚を覚えました。

まるでワインのカタコンベのよう!(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

ここには、ワイナリー創立以来最も古いワインから今日のワインまでを保管してあります。ここの暗闇・温度・湿度といった理想的な条件下で、生き物であるワインは瓶詰めされた後も熟成し続けるのです、という説明がありました。「ワインが生き物」ということを考えたこともなかった私にとっては、真っ暗で湿気のあるこの地下室でいつか栓を抜かれ外界の空気と触れ合うまで、この「生き物」は息をひそめてジッと横たわって待ち続けているんだ、という背筋がゾワッとするような想像をかき立てられました。

少なくとも8万本の瓶が横たわっている(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

この後、ガイドさんがこの「墓場(Cementerio)」のある伝説を語ってくれました。1979年、クネ(CVNE)の創立100周年を記念して、設立者のレアル・デ・アスーア兄弟の子孫たちは、1888年のワインや、スペイン市民戦争が始まった1936年のワインなど重要なヴィンテージのボトルを、閉ざされた立ち入り禁止の門の奥に保管するという協定に署名しました。そして伝説によると、1979年に門を閉じた鍵は川に投げ込まれ、次の100周年にあたる2079年に、その協定に署名したレアル・デ・アスーア兄弟の子孫たちが再び集まれば、門は再び開くのだそうです。

写真では見えずらいですが、閉ざされた立ち入り禁止の門のこの中に、100年間の重要なヴィンテージのボトルが保管されています(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

テイスティング タイム 

まるで小説にでも出てきそうな伝説と「ワインの墓場」を後にして、湿気のある肌寒い地下から再び光射す地上に戻ってきました。なんともホッしました。(笑)

そして、楽しみにしていた試飲タイム!ここでは、一般には市販されていない、限定ワインの試飲ができました。深い赤色、深い味わい、両方ともとても美味しく頂けました。ただ、インペリアル(Imperial)の試飲もあるのかなーなんて期待していましたが、残念ながら出てきませんでした。(笑)

ほのぼのとした絵が描かれているラベルも素敵!(写真: 筆者撮影)

ガイドをしてくれた可愛いマリア(María)のワイナリーへの愛情や誇りが私たちにも伝わってきて、とても楽しいワイナリー見学ができました。

もし、ワイナリー見学に興味のある方はラ・リオハ州アロ(Haro)に是非足を運んでみてください。この町には沢山の有名どころワイナリーがツアーを開催しているので、参加されるときっと旅の良い思い出になること間違いなしです。

テイスティングの説明をするガイドのマリア(María)(写真: 筆者撮影)

参考

・「クネ(Cune)グループ」の公式サイト。個人でワイナリー見学を予約される方はこちらからどうぞ。https://cvne.com/visitas-home/

・ラ・リオハ州のワインを楽しむスペイン観光公式サイト。https://www.spain.info/ja/supein-tankyuu/rioha-ekusuperientu-wain-tanoshimu

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