スペインのカーニバルのお菓子いろいろ

文化

今年は、2月9日(金)から13日(火)まではカーニバルです。このお祭りは太陰暦で行われるため、イースター(復活祭)の時期によって毎年日付が変わります。具体的には、イースター(復活祭)の日曜日から遡って47日目の火曜日です。イースター(復活祭)は、春分の日以降の満月の日の次に来る日曜日と定められていて、毎年少しずつ当たる日が違います。今年は、3月31日(日)がイースター(復活祭)です。

さて、カーニバルと聞いて何を想像しますか?一番有名なカーニバルのお祭りはやはりブラジルの「リオのカーニバル」でしょうか。スペイン国内では、アフリカ大陸の横に位置するスペイン南部の諸島サンタ・クルス・デ・テネリフェのカーニバルが一番有名かもしれません。気候的にもスペイン本土とは異なり暖かい気候ということも手伝って、ブラジル的なリズミカルで奔放かつスペクタクルなカーニバルです。こちらは15日間に亘ってお祭りが開催されます。

クライマックスの日は火曜日のカーニバル(Martes de Carnaval)と呼ばれる最後の日です。ただ、学校以外の普通の社会人や大学生はその日は休日ではないので、その前の土曜日や日曜日に仮装して出かける人も多いですね。

その華やかなカーニバルの期間前から、街のお菓子屋さんでは地方色豊かなカーニバルのお菓子が出回ります。今回は、それらのお菓子について紹介します。

・オレハス・デ・カルナバル(Orejas de Carnaval)

パリパリっとした食感も楽しめる(写真: 筆者撮影)

オレハス・デ・カルナバル(Orejas de Carnaval)という名前の通り、スペイン西北部のレオン県やガリシア州でポピュラーなカーニバルの時期に食べるお菓子です。オレハス(orejas)というのは、スペイン語では「耳」を意味する「Oreja(オレハ)」の複数形です。「カーニバルの耳」というのがこのお菓子の名前ですが、一体何の耳を指しているのでしょうか?実は、豚の耳をかたどったものだと言われています。

カーニバルは、毎年日にちは異なるものの2月に行われます。昔からスペインでは、2月に豚を殺しその肉を使ってチョリソー(Chorizo)等のいわゆるソーセージやサラミを作ってきました。これは、農作物が少ない冬の間の貴重な食糧、保存食として昔から行われているスペイン語ではマタンサ(Matanza)と呼ばれる豚の屠殺です。

また、カーニバルの最終日が終わる次の日からは、キリスト教徒の間では復活祭(イースター)に向けて四旬節と呼ばれる断食の犠牲を伴う時期に入ります。基本的には、肉食を絶つ、食事の量を控えるということでしたが、キリスト教では主日(日曜日)には断食をしない習慣なので日曜日には普通に食事をしていました。

ただ、「肉食」の中には豚足や豚の耳は含まれておらず、「肉」の代用食として四旬節中にも食べられていました。そして、カーニバルの時期に重なるマタンサ(Matanza)-豚の屠殺-の習慣とこれから始まる四旬節中の断食の時期でも「肉」の代用として食べることができた豚の耳が民衆の間で上手く融合したことにより、カーニバルの時期に食べる「豚の耳」をかたどったお菓子が登場してきたという訳です。(ディアリオ・デ・レオン「Diario de Leon」2021年2月10日付新聞記事より)

この説がどこまで本当なのかは分かりませんが、このお菓子はとても素朴で美味しいので、カーニバルの時期は勿論、お菓子屋さんによっては1年中販売しているところもあります。是非、お試しください!

・フローレス・デ・カルナバル(Flores de Carnaval)

花の形が可愛い!(写真: 筆者撮影)

こちらは、花をかたどったお菓子で名前も「カーニバルの花」という可憐な名前です。オレハス・デ・カルナバル(Orejas de Carnaval)と同様に揚げ菓子です。

可愛い花をかたどった型。お菓子作りが大好きなお友達にはお土産にしても喜ばれそう!(写真: 筆者撮影)

カステージャ・ラ・マンチャ州やガリシア州、エクストレマドゥーラ州など、スペイン各地で見られるお菓子です。上の写真はレオン市のお菓子屋さんで買い求めたもので、「レオン市でもカーニバルの時期に食べるお菓子の一つだよ」と教えてくれました。レオン市は、今はカステージャ・イ・レオン州の中の一つですが、歴史的にはカステージャ王国とは別のレオン王国が存在していて、当時のレオン王国は今のガリシア州も領土の一部として統治していたこともあり、今のガリシア州と共通する食べ物や習慣も多々あります。

スペイン近代化の中で、歴史的には同じ王国だった場所が分裂されたり統合されたりして今の州制度が成立していますが、長い間培われた食文化は人々の生活の中ではしっかりと根ざしていて、今現在も食され、人々から愛され続けていることは興味深く、脈々と受け継がれてきた伝統文化を感じさせられます。

・カサディエージェス(Casadielles)

こちらは揚げ菓子バージョンではなく、パイ生地バージョンの「カサディエージェス(casadielles)」(写真: 筆者撮影)

最後に紹介するカーニバルの時期に食べるお菓子は、スペイン北部のアストゥリアス州の「カサディエージェス(casadielles)」です。こちらは、クルミを中に詰めた包み揚げ菓子で、アストゥリアス地方のある地域ではクリスマスに広く食べられ、他の地域ではカーニバルのお祭りで食べられています。どちらにしても、アストゥリアス州ではそのシンプルさと味の両方で人気のあるデザートの一つです。

その起源については、ローマ時代以前にアストゥリアス人が作り始めたとする説があります。アストゥリアス人(astur)はナッツ類を集める民族であったため、レシピにこれらの食材を多く使っていたと考えられているからです。

こちらのお菓子はスペインの他の州では食べれないお菓子なので、もしスペイン北部のアストゥリアス州に訪れる機会がある方は、食べてみられることをお薦めします!

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