毎年11月1日は、「諸聖人の日 (Día de todos Los Santos)」としてスペインでは祝日です。これは、カトリック教会の祝日の一つ全ての聖人と殉教者を記念する日で、古くは「万聖節」と呼ばれていました。そして翌日11月2日は死者の日に当たります。既にこの世を去ってしまった家族や友人などに思いを馳せながら、お墓参りをしたり家族で集まって故人を偲んだりします。日本のお盆のようなものと考えてもらえば分かりやすかもしれません。
家族が集まれば、矢張りみんなでワイワイ語りながら食事やお菓子を食べるのはどこの国でも同じこと。日本では、昔に比べるとお盆をお祝いする習慣は廃れてきていると思いますが、それでも地方などではお盆には家族で集まり食事をしたり、落雁を食べる機会もあるでしょう。ここスペインでもこの日はいろいろなお菓子を食べる習慣があります。今回は、諸聖人の日(Día de todos Los Santos)に食べる様々なスペインのお菓子を紹介します。
ウエソス・デ・サント(Huesos de Santo)
左側のものは、ココナッツを使い形も骨っぽく仕上げています(写真: 筆者撮影)
「ウエソス・デ・サント(Huesos de Santo)」というは、「聖人の骨」という意味です。日本人の感覚からはちょっと驚きの名前ですが、スペイン人にとっては愛情をこめて死者を象徴する「骨」を食べているようです。もともとカトリック教会では、イエス・キリストや聖母マリアの遺品、キリストの受難にかかわるもの、また諸聖人の遺骸や遺品を「聖遺物(Reliquia)」として大切に保管し、聖人とその遺物に加護と神への取り次ぎを求める願掛けや治癒の奇跡を含む様々な宗教実践が形成されてきました。(ウィキペディアより)もしかすると、「ウエソス・デ・サント(Huesos de Santo)」という「聖人の骨」を表したお菓子を食することにより、庶民のささやかな願掛けや病気で苦しんでいる人の治癒の奇跡を望む切実な願いが込められていたのかもしれません。
ちょっと敬遠したくなるような名前のお菓子ですが、アーモンドの粉と砂糖を練り合わせたマジパンの中に卵黄を使ったクリームが入っていて、結構食べ応えのあるお菓子です。「ウエソス・デ・サント(Huesos de Santo)」の最初のレシピとしては、1611年、スペイン王フェリッペ2世の厨房責任者フランシスコ・マルティネス・モンティーニョ(Francisco Martínez Montiño)著書「料理・菓子・スポンジケーキ(ビスコッチョ)・保存食の方法『Arte de Cocina, Pastelería, Vizcochería y Conservería』」(筆者訳)に記載されていました。
私が住むカステージャ・イ・レオン州では、「諸聖人の日 (Día de todos Los Santos)」に食べる定番のお菓子ですが、スペイン中色んな所で食べられているようです。マジパンの生地に様々な味と色を付けてカラフルな「ウエソス・デ・サント(Huesos de Santo)」が最近では出回っています。
上からオレンジ味、キーウィ味、イチゴ味の「ウエソス・デ・サント(Huesos de Santo)」(写真: 筆者撮影)
ブニュエロス・デ・ビエント(Buñuelos de viento)
諸聖人の日(Día de todos los Santos)には欠かせないブニュエロス・デ・ビエント (Buñuelos de viento)(写真: 筆者撮影)
ブニュエロス・デ・ビエント (Buñuelos de viento)は、ピンポン玉程の大きさで一口サイズの揚げシュークリームです。とても美味しく手食べやすいサイズということも手伝い、ついつい何個でも食べてしまう魅惑のお菓子です。(笑)
ブニュエロス・デ・ビエント (Buñuelos de viento) の「ブニュエロス (Buñuelos)」は、小麦粉を使った生地を丸めて油で揚げたお菓子のこと、「ビエント(Viento)」は、「風」という意味ですが、ここでは「デ・ビエント (de viento)」で、「膨らんだ(hinchados)」という意味です。この揚げ菓子の中にカスタードクリームやスペインではカベージョ・デ・アンヘル(Cabello de angel)と呼ばれている金糸瓜(またはそうめんかぼちゃ)を使ったクリーム、チョコレートクリームや生クリーム等が入っています。
諸聖人の日(Día de todos los Santos)に食べるお菓子の中でも一番ポピュラーなお菓子です。私が住むサラマンカでは、美味しいお菓子屋さんに前もって予約して10月31日頃から買って食べている人が多いようですね。
最後に紹介する「諸聖人の日 (Día de todos Los Santos)」の日に食べるお菓子は「焼き栗」です。
11月は栗の季節です。この時期になると街角で焼き栗を売っていますが、栗のお祭りが各地で開催されます。スペイン北部で催される「マゴスト(Magosto)」やスペイン東部の「カスタニャーダ(La Castañada)」のお祭りが有名どころでしょうか。私が住むサラマンカでも県内各地でそれぞれの栗祭りを楽しんでいます。10月31日から11月11日の間に開催される所が多く、11月1日の「諸聖人の日 (Día de todos Los Santos)」にも焼き栗を食べる習慣があります。
「諸聖人の日 (Día de todos Los Santos)」という11月1日前後の短い期間のみにしか売っていないお菓子もあるので、この時期にスペイン訪問される方は「諸聖人の日 (Día de todos Los Santos)」のお菓子を是非食べてみてください。旅の良い思い出になること間違いなしです!
カンタブリア州は、州都サンタンデールをはじめ有名どころの観光地はカンタブリア海の海岸沿いに連なっています。スペイン旅行をされた方の中には、スペインを代表する建築家ガウディの「エル・カプリチョ」という建物があるコミージャス(Comillas)や海岸線から少し内陸部に入ったところにあり14世紀から18世紀の建物が残存する古く美しい街並みのサンティジャーナ・デル・マール(Santillana del Mar)を訪れたことがあるのではないでしょうか。もしかすると、サンティジャーナ・デル・マール(Santillana del Mar)の近くにあるアルタミラ洞窟まで足を延ばされたかもしれません。
村に入り、ぶらぶらと散歩していると、他の建物とは異なる立派な邸宅(Palacio)がありました。正面門の上部には、かなり大きな家紋が彫られています。現在ホテル兼レストランとして活躍しているディアス家、カッシオ家、カルデロン家、ミエル家の邸宅(Palacio de los Díaz de Cossio, Calderón y Mier)です。この邸宅は、1715年に建てられたマドリードのバロック(barroco madrileño)様式と地元の典型的な建築様式が融合した建物で、柱に3つの半円アーチを持つ中央部分と、それを挟む2つの高い塔で構成されています。
実際、ロマネスク様式の教会にはゾディアックが描かれていることがある。興味深いことは、星によって影響を受けるという占星術は、キリスト教の中では軽蔑すべき異教徒たちの迷信と考えられていた。では何故、天球上の12星座を示すゾディアックを教会の入口の装飾に使ったのだろうか?これは、天球上の12星座を示すゾディアックが示すものは、農業暦のようなものを指していると考えられている。つまり、ロマネスク芸術では、神が絶対的な支配者である1年の月の時系列的なサイクルであり、「時間の支配者である神」という意味が与えられていたのだ。(「Iconografía y Simbolismo Románico 」(「ロマネスク様式 図像と象徴」筆者訳) David de la Garma Ramíez 著 出版社 Arteguias より)