修道院のシスターが作る「SUSHI」が大人気!!

スペイン各地にある修道院のシスター達が作って販売する食べ物は、お菓子類やリキュール類、ジャム類やチョコレートなど色々ありますが、今回は、なんとお寿司のテイクアウトを始めたグラナダの跣足(せんそく)カルメル修道院(Carmelitas descalzos)を紹介します。

修道院生活を維持するために

日本でも北海道にあるトラピスト修道院で作られているトラピストバターやクッキーなどは有名ですが、ソフトクリームも売っていて人気だとか。添加物やトランス脂肪酸等が入っていない安心・安全材料を使って作られているお菓子や食べ物っていうイメージが強いですよね。

こちらスペインでも、修道院のシスター達が作るお菓子は昔から自然素材の材料や修道院の中で栽培している果物などを使ってありとても人気があります。観光などで訪れた修道院に売店があると私もつい覗いてお土産や自宅用に買っています。スペイン観光にいらして各地の修道院のお菓子をお土産に買われた経験がある方もいらっしゃることでしょう。

スペインの修道院で作られる食べ物は主にお菓子類ですが、スペインでは11月1日の諸聖人の日(Día de Todos los Santos)頃からクリスマス、2月のカーニバル、そして3月から4月にかかるイースターの頃まで約半年間はそれぞれの祝日に合わせたお菓子を食べる習慣があります。その他の時期は確かにクッキーなどを食べる機会はグッと減ってしまいます。夏の間はやはりアイスクリームをよく食べますし、毎週末に家族で集まってお昼ご飯を食べた後のデザートには、小さなニミケーキを買ってきて食べることが多いようです。

今回話題になっているグラナダの修道院は500年という長い歴史があり、その間シスター達はその土地の伝統的なお菓子を作ってきました。ところが修道院生活を維持するために伝統的なお菓子の販売だけでは経済的にままならなくなってきていたため、ここ数年スペインで大人気の日本の「寿司」をテイクアウトで販売するようになったとのことです。時代の要請にこたえる形で伝統を守るだけではなく柔軟に時代への適応を図っている点は素晴らしいことです。スペインの新聞でも、グラナダの修道院で隠遁生活を送る修道女が作る「祝福された」寿司を食べることができますよ、と記事になって紹介されています。

修道院内に吹く新しい風

現在7名のシスターが修道院内に暮らしていますが、そのうち5人はフィリピンから来た比較的若いシスターです。そのフィリピンの若いシスター達が修道院存続のため、知恵を出し合って伝統的なお菓子だけではなく新しい味を提供することにしました。

跣足カルメル修道院は、修道院の中から出ず禁域生活を送っているシスター達の修道院です。500年間そして今も修道院のお菓子を買いたいグラナダの人達が修道院の入口へ来てベルを鳴らし、格子窓の向こうにいるシスターが「Ave María Purísima(アベ・マリア・プリッシマ=至聖なるマリア様)」と問いかけ「Sin pecado concebida(シン・ぺカード・コンセビーダ=無原罪)」と訪問者が答えると格子窓が少し開くようになっています。これは、罪なくして宿られた最も清らかなマリア様という意味のスペイン語を二つに区切って合言葉の一種として使われているもので、スペイン中の修道院で共通な合言葉です。

ところが、今回はテイクアウトができるように電話応対という現代的な方法も加えたところ、注文の電話が殺到したそうです。お陰で、今では何とか修道院生活を維持することができるようになったとのこと。スペインの修道院に若くて新しい風が吹いたと言えそうです。

Sushi だけじゃない!

フィリピンから来たシスター達は、最初はフィリピン料理の麺類やソータンホン(=sotanghon)、スパイシーなスープ、エキゾチックなマンゴーとパッションフルーツのスムージーなどを作っていましたが、お寿司も加えることにしたそうです。すると、このお寿司が爆発的な人気となったというわけです。

驚くことに30種類ものメニューがあり、まるでレストランのように修道院の売店の入口には写真入りのメニューが張り出してあります。残念ながら私はグラナダには住んでいないので直接見たことはありませんが、下の記事の中の動画で見ることができますのでご覧ください。

https://www.ideal.es/granada/sushi-famoso-espana-monjas-carmelitas-granada-20231030111748-nt.html

それにしても、昨今の和食-特に寿司-の人気には驚かされます。そして、日本では見たこともないようなカラフルな巻き寿司や日本では使わないような食材を使ったヌーベルキュイジーヌ (=新しい料理)がスペインで花開いている感じです。逆に本場日本で一般的な巻き寿司を食べたら、地味で種類が少ないと感じてしまうスペイン人も多いんじゃないかと心配してしまうほどです。(笑)

遠く離れたスペインで500年も続いている修道院の財政再建に一役買っている「SUSHI」、考えてみれば面白いですね。

写真: ウィキペディアドメイン

参考

・今回の内容は、スペインの様々なメディアが取り上げているニュースを基に書いたものです。興味のある方はスペイン語ですがこちらの記事も読まれてください。写真や動画もあるので分かりやすいと思います。

こちらは、修道院長へのインタビューやシスター達がお寿司を作るビデオを見ることができます。

https://www.ideal.es/granada/sushi-famoso-espana-monjas-carmelitas-granada-20231030111748-nt.html

4番目に大きな通信社であるスペインのEFE通信社のデジタル新聞でも取り上げられています。

https://www.elperiodico.com/es/cata-mayor/actualidad-gastronomica/20231102/monjas-clausura-carmelitas-granada-sushi-94037639

https://www.granadahoy.com/granada/monjas-clausura-Granada-encargo-receta-celestial_0_1843617036.html

https://www.lavanguardia.com/comer/al-dia/20231031/9340437/monjas-clausura-sushi-encargo-receta-celestial-agenciaslv20231030.html

*アイキャッチの写真はウィキペディアドメイン写真です。

ロマネスクへのいざない (14)- アストゥリアス州 (2)– ビジャビシオサのサンタ・マリア・デ・ラ・オリーバ教会(Iglesia de Santa María de la Oliva en Villaviiosa)

ファサードだけを見るとゴシック様式の教会のよう(写真:アルベルト・F・メダルデ)

ロマネスク様式からゴシック様式への過渡期に建てられた教会

スペイン北部のビジャビシオサ(Villaviiosa)の街の中にあり、1270年に建てられたサンタ・マリア・デ・ラ・オリーバ教会(Iglesia de Santa María de la Oliva)は、スペインでロマネスク様式がまさに終焉しようとしていた頃、かつ、既に他のヨーロッパ諸国やスペインの他の街ではゴシック様式が建築の新しい主流となりつつあった頃に建てられたものだ。上の写真をご覧いただくとお気づきになる方も多いと思うが、入口の門のアーチは純ロマネスク様式の半円アーチではなく、ゴシック様式の特徴である尖ったアーチで造られ、ロマネスク様式にはなかったバラ窓が施され、そのファサードは鉛直性が見て取れる。これらの特徴はロマネスク後期に見られるもので、完全なゴシック様式ではないもののゴシック様式の原型となるものであった。

このような、二つの建築様式が融合している教会は興味深いものがある。改築や増築されたために異なる建築様式を持つ教会とは違い、取ってつけたような印象はなく、調和のとれた安心感を与える美しい建築だ。

アストゥリアス芸術が残るプレ・ロマネスク

サンタ・マリア・デ・ラ・オリーバ教会(Iglesia de Santa María de la Oliva)は、プレ・ロマネスク様式(アストゥリアス芸術)を受け継いだ正方形の祭壇を含む頭部 (Cabecera)を持つバシリカ間取りで、長方形の身廊と聖堂、聖具保管室、南壁に取り付けられた開口柱廊で構成されている。

祭壇を含む頭部 (Cabecera)部分が正方形なのは、この地方のプレ・ロマネスク様式(アストゥリアス芸術)の特徴の一つ(写真:アルベルト・F・メダルデ)

教会の内部の身廊は露出した木造建築で覆われ、尖ったアーチが聖堂の2つのセクションを隔ている。ゴシック様式への過渡期の尖ったアーチが見られるものの、全体的にはロマネスク様式の至ってシンプルな造りである。

祭壇を含む頭部 (Cabecera)へと導く主要アーチ(arco de trinumfo)はゴシック様式(写真:アルベルト・F・メダルデ)

プレ・ロマネスク様式(アストゥリアス芸術)とは、一般的にはロマネスク様式が伝わってくる以前にアストゥリアス地方で造られてきた教会や修道院などの建築様式で、この地方独特の特徴を持っていた。11世紀にはいるとロマネスク様式がスペイン北部全域そしてアストゥリアス地方でも席捲し始め、それまでの様式に取って代わられた。それ故、プレ・ロマネスク様式(アストゥリアス芸術)は11世紀以前に造られた建物が殆どだが、この教会は13世紀後半という後期ロマネスク様式時代に造られたにもかかわらず、まるで数世紀前の自分たちのアイデンティティーを懐かしむがごとく、プレ・ロマネスク様式(アストゥリアス芸術)の特徴である正方形の祭壇を含む頭部 (Cabecera)が造られたりしていて興味深い。

オリジナルなモチーフが施された柱頭

自分たちのアイデンティティーを再確認するようだと思わせる他の例として、ファサードの出入り口にある柱頭の彫り物のモチーフが挙げられる。

・アストゥリアスで初めてのバグパイプ奏者(Gaitero)

「バグパイプ」と聞くと日本では真っ先にスコットランド・バグパイプが思い浮かぶが、実は「バグパイプ」は中世ヨーロッパではポピュラーな楽器の一つで、スコットランドだけではなく各国で演奏されていた。スペインでは「ガイタ(Gaita)」と呼ばれ、現在でもアストゥリアス州やガリシア州ではお馴染みの楽器の一つだ。キリスト教三大巡礼地の一つガリシアのサンティアゴ・デ・コンポステーラという街では、今でも「ガイテーロ(Gaitero)」と呼ばれるバグパイプ奏者がストリート・ミュージシャンとして活躍していて、その音色を気軽に楽しむことができる。

アストゥリアスの「ガイタ(Gaita)=バグパイプ」は、旋律を演奏する主唱管(チャンター chanter)の他に、1本の通奏管(ドローン drone)が付いている。ちなみに、日本で知られているスコットランド・バグパイプはこの通奏管(ドローン drone)が3本付いている。

下の絵はアストゥリアスの「ガイタ(Gaita)=バグパイプ」である。スコットランドのものよりシンプルな形をしている。

1吹口管 (ブローパイプ Blow pipe)2 主唱管(チャンター Chanter)3 通奏管(Bass drone) 4 バグパイプの袋(バッグ Bag) (絵: Wikipedia domain)

欧州では、14世紀~15世紀にかけて最も盛んにこの楽器が用いられていたらしいが、今回訪れたサンタ・マリア・デ・ラ・オリーバ教会(Iglesia de Santa María de la Oliva)のファサード出入り口の柱頭には、この「ガイテーロ(Gaitero)=バグパイプ奏者」の姿を見ることができる。地元のガイドであるアナ・マリア・デ・ラ・ジェラ氏によると、これはアストゥリアス地方の教会の装飾として初めて施されたものだという。教会は1270年建設なので、かなり早い時期から「ガイタ(Gaita)=バグパイプ」がアストゥリアスではポピュラーな楽器だったことが推測される。ロマネスク様式では珍しい図像である。

アストゥリアスの「ガイタ(Gaita)=バグパイプ」を引く人「ガイテーロ(Gaitero)=バグパイプ奏者」(写真:アルベルト・F・メダルデ)

・豚の屠殺(とさつ)行事(Fiesta de Matanza de cerdo)

 こちらの図像もアストゥリアスならではのもので、前述のガイドアナ・マリア・デ・ラ・ジェラ氏によると、この柱頭の彫り物は豚の屠殺(とさつ)行事を表現している。中央の女性はアストゥリアス地方の代表的な飲み物「シードラ」と呼ばれるリンゴ酒(Sidra)を飲み、左側の女性はタンバリンをたたいてお祭り気分を表し、右側の男性は大きなナイフを持って豚をつぶそうと身構えている。

中央の女性の左手の下にはシードルが入った樽があり、樽からシードルが流れ出している。右側の男性は豚の屠殺(とさつ)の目的である保存食のハムやソーセージを作るという美味しい行事の始まりの期待感を感じさせる顔つきだ。(写真:アルベルト・F・メダルデ)

この豚の屠殺(とさつ)行事(Fiesta de Matanza de cerdo)は現在も行われており、特に地方の村々では11月末から2月にかけてこの「マタンサ(Matanza)」が開催されており、村を挙げての行事でありお祭りでもある。村のみんなが集まり共同して豚をつぶし、1年分のハムやソーセージを作ったり、肉を焼いて村人みなで食べたりして、食べ物が少なく貴重だった当時は、豪華な食べ物にありつける有難いお祭りだったのだ。

・妊娠姿のマリア像

次に紹介するのは、お腹が大きいマリア像である。教会の石像等でマリア像は沢山あるが、妊娠中のお腹が大きいマリア像は殆ど見ることができない貴重なものである。

左から2番目の像がマリア像。お腹が膨れているのがわかる。(写真:アルベルト・F・メダルデ)

その他のさまざまな図像

狩りをした後に城へ帰る騎馬の姿も見られる。

左側には城、右側には騎馬で狩りをした後に帰城する姿が見られる(写真:アルベルト・F・メダルデ)

こちらは、教会南側出入り口の柱頭に施されている図像で、子羊または豚を殺そうとしている場面である。

左側は化け物が鳥を食べている(写真:アルベルト・F・メダルデ)

怪物が人間を食べている場面も見られる。一般的に、ロマネスク様式の柱頭では「善」と「悪」を表現していることが多いが、これらは「悪」を表していた。

哀れにも下半身を怪物に食べられ、頭が下向きになっている姿が見て取れる。(写真:アルベルト・F・メダルデ)

最後に

既述の「妊娠姿のマリア像」の写真でお気づきになった方もいらっしゃると思うが、ファサードの8本の柱に施された人物像全ての首が失われている。これは、正確に言うと失われたのではなく、首を切り取られてしまったのである。

スペインでは、1936年から3年間にわたって左派の共和国人民戦線政府と右派の反乱軍が戦った、今もスペイン人の心の傷となって深く残る、スペイン内戦があった。同じ国の同士達がイデオロギーの違いによって、場合によっては親子や兄弟で敵同士となり戦った悲しい歴史だ。その内戦中、左派の社会労働党や共和主義者達は暴力革命志向が強く、そのためカトリック教会の施設破壊や略奪が公然のこととして横行した。アストゥリアス地方は、左派勢力が強かったため、前述したような教会のファサードに施された聖人像などの首が全て恣意的に切り落とされたのである。

中央のマリアと幼子イエスの像も破壊されたが修復されている。しかし、幼子イエスの首とマリアの手は今も失われたままだ。(写真:アルベルト・F・メダルデ)

一度、破壊された歴史的建造物を破壊される以前の姿に再現することは難しい。ここでもその例を見ることができる。そして、戦争の愚かさ、無意味さを考えさせられた。イデオロギーの違いを超えて、自分たちの祖先が築いた文化を守ることの大切さも考えさせられるものとなった。

顔や首のない石像たちの声なき声を聴いたような気がした。

参考

・デジタル版のビジャビシオサ(Villaviciosa)の街のニュースなどを提供している「ビジャビシオサ・エルモサ」の中に、今回登場したガイドアナ・マリア・デ・ラ・ジェラ氏によるサンタ・マリア・デ・ラ・オリーバ教会(Iglesia de Santa María de la Oliva)の説明動画がある。残念ながら映像と音響の質がいまいちでスペイン語しかないが、興味がある方はこちらをどうぞ。

・ここで紹介したビジャビシオサのサンタ・マリア・デ・ラ・オリーバ教会(Iglesia de Santa María de la Oliva en Villaviiosa)は、アストゥリアス州のロマネスクを訪ねたルートの中の一つだ。このルートを知りたい方はこちらを参考にしてほしい。

情報

ビジャビシオサ(Villaviciosa)ウエブサイト。教会が見れる時間帯などの情報が得られる。

https://www.turismovillaviciosa.es/iglesia/romanico/santa-maria-de-la-oliva/villaviciosa

諸聖人の日(Día de Todos los Santos)に食べるスペインのお菓子色々

毎年11月1日は、「諸聖人の日 (Día de todos Los Santos)」としてスペインでは祝日です。これは、カトリック教会の祝日の一つ全ての聖人と殉教者を記念する日で、古くは「万聖節」と呼ばれていました。そして翌日11月2日は死者の日に当たります。既にこの世を去ってしまった家族や友人などに思いを馳せながら、お墓参りをしたり家族で集まって故人を偲んだりします。日本のお盆のようなものと考えてもらえば分かりやすかもしれません。

家族が集まれば、矢張りみんなでワイワイ語りながら食事やお菓子を食べるのはどこの国でも同じこと。日本では、昔に比べるとお盆をお祝いする習慣は廃れてきていると思いますが、それでも地方などではお盆には家族で集まり食事をしたり、落雁を食べる機会もあるでしょう。ここスペインでもこの日はいろいろなお菓子を食べる習慣があります。今回は、諸聖人の日(Día de todos Los Santos)に食べる様々なスペインのお菓子を紹介します

ウエソス・デ・サント(Huesos de Santo)

左側のものは、ココナッツを使い形も骨っぽく仕上げています(写真: 筆者撮影)

「ウエソス・デ・サント(Huesos de Santo)」というは、「聖人の骨」という意味です。日本人の感覚からはちょっと驚きの名前ですが、スペイン人にとっては愛情をこめて死者を象徴する「骨」を食べているようです。もともとカトリック教会では、イエス・キリストや聖母マリアの遺品、キリストの受難にかかわるもの、また諸聖人の遺骸や遺品を「聖遺物(Reliquia)」として大切に保管し、聖人とその遺物に加護と神への取り次ぎを求める願掛けや治癒の奇跡を含む様々な宗教実践が形成されてきました。(ウィキペディアより)もしかすると、「ウエソス・デ・サント(Huesos de Santo)」という「聖人の骨」を表したお菓子を食することにより、庶民のささやかな願掛けや病気で苦しんでいる人の治癒の奇跡を望む切実な願いが込められていたのかもしれません。

ちょっと敬遠したくなるような名前のお菓子ですが、アーモンドの粉と砂糖を練り合わせたマジパンの中に卵黄を使ったクリームが入っていて、結構食べ応えのあるお菓子です。「ウエソス・デ・サント(Huesos de Santo)」の最初のレシピとしては、1611年、スペイン王フェリッペ2世の厨房責任者フランシスコ・マルティネス・モンティーニョ(Francisco Martínez Montiño)著書「料理・菓子・スポンジケーキ(ビスコッチョ)・保存食の方法『Arte de Cocina, Pastelería, Vizcochería y Conservería』」(筆者訳)に記載されていました。

私が住むカステージャ・イ・レオン州では、「諸聖人の日 (Día de todos Los Santos)」に食べる定番のお菓子ですが、スペイン中色んな所で食べられているようです。マジパンの生地に様々な味と色を付けてカラフルな「ウエソス・デ・サント(Huesos de Santo)」が最近では出回っています。

上からオレンジ味、キーウィ味、イチゴ味の「ウエソス・デ・サント(Huesos de Santo)」(写真: 筆者撮影)

ブニュエロス・デ・ビエント(Buñuelos de viento)

諸聖人の日(Día de todos los Santos)には欠かせないブニュエロス・デ・ビエント (Buñuelos de viento)(写真: 筆者撮影)

ブニュエロス・デ・ビエント (Buñuelos de viento)は、ピンポン玉程の大きさで一口サイズの揚げシュークリームです。とても美味しく手食べやすいサイズということも手伝い、ついつい何個でも食べてしまう魅惑のお菓子です。(笑) 

ブニュエロス・デ・ビエント (Buñuelos de viento) の「ブニュエロス (Buñuelos)」は、小麦粉を使った生地を丸めて油で揚げたお菓子のこと、「ビエント(Viento)」は、「風」という意味ですが、ここでは「デ・ビエント (de viento)」で、「膨らんだ(hinchados)」という意味です。この揚げ菓子の中にカスタードクリームやスペインではカベージョ・デ・アンヘル(Cabello de angel)と呼ばれている金糸瓜(またはそうめんかぼちゃ)を使ったクリーム、チョコレートクリームや生クリーム等が入っています。

諸聖人の日(Día de todos los Santos)に食べるお菓子の中でも一番ポピュラーなお菓子です。私が住むサラマンカでは、美味しいお菓子屋さんに前もって予約して10月31日頃から買って食べている人が多いようですね。

パネジェッツ(Panellets)

カタルーニャ州・バレンシア州・バレアレス諸島等で最も伝統的かつポピュラーなお菓子で、アーモンドを使った小さなマジパンに様々な風味を加えてあり、色んなバリエーションを楽しめます。

ちなみに、「パネジェッツ(Panellets)」は、欧州連合(EU)の品質認証に登録され、スペインの「本物の美味しさ」を保証している「伝統的特産品で美味しいもの」の一つに認証されています。これは、伝統的特産品保証(TSG=Traditional Specialties Guaranteed)と呼ばれるもので、本物の「パネジェッツ(Panellets)」は、マジパンに、アーモンド以外のでんぷん(ジャガイモまたはサツマイモ)やリンゴを加えることや保存料、着色料の添加は禁止されていて、伝統的かつ安全な食べ物であることが保証されています。(スペイン農業・漁業・食品省のウエブサイト「伝統的特産品保証TSG(Traditional Speciality Guaranteed)」参照) 但し、お店などで売っているものは、サツマイモが入っているものが一般的のようです。

前述の通り「パネジェッツ(Panellets)」にはバリエーションが多く、カタルーニャ州・バレンシア州・バレアレス諸島に訪れる機会があれば、「パネジェッツ(Panellets)」の食べ比べをされるのも一興でしょう。代表的な「パネジェッツ(Panellets)」を紹介します。

バリエーション豊かで可愛いパネジェッツ(Panellets)」(写真: Wikipedia Domain)

両端 パネジェッツ・デ・ピニョネス(Panellets de piñones)

「パネジェッツ(Panellets)」はカステジャーノ語(一般的にスペイン語と呼ばれている言葉)では、エンピニョナードス (Empiñonados) と呼ばれています。松の実(ピニョネス-Piñones)をマジパンの周りにまぶしてあります

右から4列目 パネジェッツ・デ・カフェ(Panellets de café)

前述のスペイン農業・漁業・食品省のウエブサイト「伝統的特産品保証TSG(Traditional Speciality Guaranteed)」によると、アーモンドと砂糖のみのマジパンに挽いたコーヒーと焦がした砂糖を加えて茶色のコーヒー色に仕上げ、アイシングシュガーでコーティングした後、オーブンで焼きます。コーヒー豆を模した可愛い「パネジェッツ(Panellets)」もありますよ。

右から5列目 Panellets de almendra

こちらは、松の実の代わりにアーモンドをマジパンにまぶしたものです。

真ん中 Panellets de coco

マジパンにもココナッツが入っていて、周りにもココナッツをまぶしてあり、とんがり帽子のように先っぽを尖らせた形に作ってあります。

「パネジェッツ(Panellets)」は、カタルーニャ州・バレンシア州・バレアレス諸島等のお菓子なのでこの地方以外ではなかなか見つかりません。もし、これらの州に行かれる機会があれば、是非ご賞味ください。一口サイズのバラエティー豊かな「パネジェッツ(Panellets)」は、日持ちも良いものも多いのでお土産に買って帰るのもお薦めです。

焼き栗(Castañas asadas)

最後に紹介する「諸聖人の日 (Día de todos Los Santos)」の日に食べるお菓子は「焼き栗」です。

11月は栗の季節です。この時期になると街角で焼き栗を売っていますが、栗のお祭りが各地で開催されます。スペイン北部で催される「マゴスト(Magosto)」やスペイン東部の「カスタニャーダ(La Castañada)」のお祭りが有名どころでしょうか。私が住むサラマンカでも県内各地でそれぞれの栗祭りを楽しんでいます。10月31日から11月11日の間に開催される所が多く、11月1日の「諸聖人の日 (Día de todos Los Santos)」にも焼き栗を食べる習慣があります

もし、この時期にスペイン北部やスペイン東部を訪れる機会がある方は「マゴスト(Magosto)」や「ラ・カスタニャーダ(La castañada)」のお祭りに参加されると面白いと思います。

「焼き栗 (Castañas asadas)」自体はスペインの冬の風物詩で、クリスマス明けくらいまではスペイン各地の街角で焼き栗を売っているので、冬の間にスペインを訪れる方は、是非街角で焼き栗を買って食べてみてくださいね。木枯らしが吹く中、焼き立ての栗を食べるのはいかにもスペインらしく、スペインの秋から冬の楽しみの一つです。

最後に

「諸聖人の日 (Día de todos Los Santos)」という11月1日前後の短い期間のみにしか売っていないお菓子もあるので、この時期にスペイン訪問される方は「諸聖人の日 (Día de todos Los Santos)」のお菓子を是非食べてみてください。旅の良い思い出になること間違いなしです!

参考

・欧州の「本物の美味しさ」を保証する認証制について興味のある方は、在日欧州連合代表部の公式ウエブサイトをご覧ください。

https://eumag.jp/issues/c1013/

・伝統的特産品保証(TSG=Traditional Specialties Guaranteed)、スペイン語では「ETG=Especialidad tradicional garantizada)」について興味のある方は、スペイン農業・漁業・食品省のウエブサイトをご覧ください。

https://www.mapa.gob.es/es/alimentacion/temas/calidad-diferenciada/etg/Panellets.aspx

秋から冬のスペイン街角の風物詩-焼き栗(Castañas asadas)

10月も半ばを過ぎ、そろそろ本格的な栗の季節到来です!

この時期になると、スペインの街角ではカスタニェーロ(Castañero)と呼ばれる焼き栗を売る人が栗を焼いている姿をあちこちで見ることができます。新聞紙を円錐形にクルっと作り、12個の焼き栗を売ってくれます。勿論もっと沢山買いたい場合はもっと多い量の焼き栗を売ってくれますが、一般的には、円錐形の新聞紙に12個入りの焼き栗がスペイン人一人が買う焼き栗の量です。特に寒い日には、焼きたての栗を剥いて食べながら散歩する人や、子供に焼き栗を買ってあげる親の姿をよく見ます。日本では町中での立ち食い・歩き食いはお行儀が悪く敬遠されますが、こちらではとてもよくある秋から冬の風物詩です。

カスタニェーロ(Castañero)が作る焼き栗を家でも再現したいと、この時期になると我が家ではよくオーブンで焼き栗を作ります。オーブンがない場合は、フライパンでもできますよ。

焼き栗(Castañas asadas)

材料:4人分

・栗            約500g                

作り方

1.栗に切り込みを入れる。(焼いている間に栗が破裂しないように)

切り込みの入れ方は十字でもよし、縦切り・横切りでもよし、栗の端っこを少し削ぎ切りしてもよし(写真: 筆者撮影)

2.オーブン用の皿に重ならないように並べる。

できるならば大きさを揃えた方がいいのですが・・・(写真: 筆者撮影)

3.200℃に予熱したオーブンで20~25分焼く。(オーブンによっては多少時間が異なるので、途中で焼け具合を見てみる)

4.焼きあがっていたら、オーブンから出して熱いうちに皮をむいて食べる。

焼きたての方が皮がむきやすいですね(写真: 筆者撮影)

熱々の栗なので、火傷しないように軍手などをして皮をむいてくださいね。ホクホクしてとても美味しい焼き栗が簡単にできますよ。寒くなったら是非試してみてください。

おいでよ!スペインの素敵な村 (3)-カンタブリア州-カルモナ(Carmona)

スペイン北部 カンタブリア州内陸部にあるスペインで最も美しい村

今年の夏は例年以上に暑い毎日で、避暑を兼ねて8月末に2泊3日の小旅行に出かけました。その日カステージャ・イ・レオン州では37℃というかなり厳しい暑さでしたが、スペイン北部のカンタブリア州に入った途端一気に気温がドンドン下がっていき、車で15分も走ると17℃になり20度も差がありました。車から降りてみると、ちょっと寒いくらい!隣の州なのにこんなにも気温差があるのかと改めて驚かされました。

カンタブリア州は、州都サンタンデールをはじめ有名どころの観光地はカンタブリア海の海岸沿いに連なっています。スペイン旅行をされた方の中には、スペインを代表する建築家ガウディの「エル・カプリチョ」という建物があるコミージャス(Comillas)や海岸線から少し内陸部に入ったところにあり14世紀から18世紀の建物が残存する古く美しい街並みのサンティジャーナ・デル・マール(Santillana del Mar)を訪れたことがあるのではないでしょうか。もしかすると、サンティジャーナ・デル・マール(Santillana del Mar)の近くにあるアルタミラ洞窟まで足を延ばされたかもしれません。

今回ご紹介する村は、カンタブリア州内陸部の山地にある美しい村カルモナ(Carmona)です。1985年に歴史的・芸術的な村として指定されたカルモナは、2019年には「スペインで最も美しい村」という協会からスペインで最も美しい村の一つとしても認定されました。「日本で最も美しい村」という日本版の協会もあるのでご存知の方も多いかもしれません。ちなみに、この「スペインで最も美しい村」という協会は2011年に設立され、人口1万5000人以下(歴史地区の人口は5000人以下)であること、建築的遺産または自然遺産があることなどを条件に、村内の環境、宿泊施設、案内板に至るまで厳正に審査し、登録を認定しています。(ウィキペディアより)

半円アーチを持つ入口とバルコニー、そして切り石建築はこの山間部の村に見られる典型的な建築(写真:筆者撮影)

カルモナ(Carmona)の邸宅(Palacio)でお昼ご飯

村に入り、ぶらぶらと散歩していると、他の建物とは異なる立派な邸宅(Palacio)がありました。正面門の上部には、かなり大きな家紋が彫られています。現在ホテル兼レストランとして活躍しているディアス家、カッシオ家、カルデロン家、ミエル家の邸宅(Palacio de los Díaz de Cossio, Calderón y Mier)です。この邸宅は、1715年に建てられたマドリードのバロック(barroco madrileño)様式と地元の典型的な建築様式が融合した建物で、柱に3つの半円アーチを持つ中央部分と、それを挟む2つの高い塔で構成されています。

二つの建築様式が見事に調和され、バランスの取れた切り石建築と中央の大きな紋章が特徴(写真:筆者撮影)

特に目を引く大きな紋章はディアス家、コシオ家、カルデロン家、ミエル家の4つの家の紋章で、紋章の両脇には長槍で武装した二人の巨大な兵士の彫刻が浮き彫りにされています。

紋章の上には飾り付きの兜が(写真:筆者撮影)

丁度お昼ご飯の時間だったので、邸宅のレストランでお昼を食べることに。中に入るとレストラン部分の隣に小さな中庭がありテーブルが用意されていたので、心地よい風の吹く中庭でお食事を。ウエイターの方にお薦め料理を尋ねると、「狩猟で捕獲したこの辺りの野生鳥獣の肉を使ったジビエ料理だね!」という返事が返ってきました。味付けの方はカレーのスパイシーなもので、伝統料理というよりも地元の伝統的な素材を使って作る創作料理という感じのものでしたが、日本人の私にとっては口に合う味付けでした。

カレー味のピチョンと呼ばれる鳩の雛肉(Pichón)料理(写真:筆者撮影)

他にもカルモナ村では、コシード・モンタニェス(Cocido montañés)と呼ばれる煮込み料理や、カルモナ村から約10㎞程にあるサハ川で獲れるマスを使った料理等も有名だそうです。

村で取れた洋梨を使ったサラダ。数年前からスペインでもよく使われるようになったイタリアのブッラータチーズ入り(写真:筆者撮影)

レストランの上部分には野外テラスがあり、そこから見る自然に囲まれた風景は心癒されるものがありました。

バロック時代の家々

カルモナ村を歩いていてすぐ気付いたことは、村の家々が私が住むカステージャ・イ・レオン州の村の家々の造りとはかなり異なっていることです。

まず、結構大きな家が多く存在していてバロック時代(17世紀から18世紀)に造られたものです。特徴としては、入口は半円アーチがあり、「ソラーナ(Solana)」と呼ばれるバルコニーがあります

百聞は一見に如かず。下の写真をご覧ください。こちらはカルモナ村の典型的な家です。

入口は半円アーチがあり、「ソラーナ(Solana)」と呼ばれる左右を厚い石造りの防火壁で囲まれたバルコニーがある(写真:筆者撮影)

次に下の写真をご覧ください。こちらは、カステージャ・イ・レオン州の「カンデラリオ(Candelario)」村の典型的な家です。入口、バルコニー等かなり趣が異なっていることがお分かりになると思います。

カンデラリオ(Candelario)についてもっと知りたい方はこちらもどうぞ。

この「ソラーナ(Solana)」とは左右を厚い石造りの防火壁で囲まれたバルコニーで、カンタブリア地方特有の建築様式です。下部の壁には梁受け(はりうけ ménsulas)が突き出していてバルコニー部分を支えています。そして、「ソラーナ(Solana)」であるためには南向きに造られ、冬の日差しを存分に浴びることができるように考えられています。(一般的なスペイン語の「ソラーナ(Solana)」の意味は、「日なた、日だまり」等の意味があるからです。)

村に残存する建築物から、その村に住む人たちの生活の知恵、生活様式、生活のニーズが見えてきます。そして、村人たちの美的感覚や村に対する愛着まで訪れる人に伝わってくることはとても興味深く、歴史的・芸術的な村を訪れる醍醐味ともいえるでしょう。

カルモナ村の木工細工「アルバルカ(Albarca)」

この村の伝統的な職業として木工細工があります。特に「アルバルカ(Albarca)」という木靴を作る「アルバルケロ(Albarquero)」という職業が典型的で、現在もこの村で作られ使われています。日本の下駄とは異なりつま先が靴のように覆われていて、歯は前の方に2本、後ろの方に1本、合計3本付けられています。この木靴は、雨の多いこの地方で、湿気や水たまりから足を守るために考案されたもので、カンタブリア地方からスペイン北部のその他の地方へも伝わっていきました。木靴というと歩きにくいように感じてしまいますが、3本の歯が足を高くして歩行に敏捷性を与えるため、悪路やぬかるんだ場所だけでなく雪の中での歩行に実用的な靴だということです。

カンタブリア地方西部が原産のトゥダンカ牛(Wikipedia Public Domain)

またこの地方では、「トゥダンカ(Tudanca)」という名前のスペイン特有の牛の品種が多く生息していて、このトゥダンカ牛の畜産が盛んですが、牧人たちが牛を放牧している間に副業としてこの木靴「アルバルカ(Albarca)」を作っていたということです。

スペイン国営テレビによる木靴「アルバルカ(Albarcas)」ととそれを作る職人「アルバルケロ(Albarquero)」について紹介する動画があります。是非ご覧ください。

https://www.rtve.es/play/videos/aqui-la-tierra/albarcas-cantabras-tradicion-region/5646428/

ちょっと足を延ばして

今回は紹介しませんでしたが、カルモナ村から車で約30分位の所に「バルセナ・マヨール(Bárcena Mayor)」という村があります。この村もカルモナ村と同様に歴史的・芸術的な村として指定され、「スペインで最も美しい村」協会からもその一つとして認定されています。そして、カルモナ村と同じような建築様式の家々があり、とてもかわいい村です。カルモナ村に比べると、もっと観光地化している印象を受けましたが、カルモナ村と同様に、この地方の典型的な建築様式が見事に反映された家々を見て歩くのは楽しいものでした。

バルセナ・マヨール村(Bárcena Mayor)(写真:筆者撮影)

カルモナ村もバルセナ・マヨール村も趣がありとても絵になる美しい村です。特にカルモナ村はサハ保護区に含まれているため、恵まれた自然の飛び地に位置していて、この地域特有の森林や景観がとても豊かで、周りを自然に囲まれ、まるで自然から優しく包み込まれているかのような錯覚を覚え、心に安らぎを与えてくれる村です。機会と時間があれば是非訪れてほしいスペインの村の一つです。

カルモナ村へ向かう途中の景色。美しく調和のとれた自然とその中で営む生活の一端(写真:筆者撮影)

情報

・4つ星ホテル兼レストラン ディアス家、カッシオ家、カルデロン家、ミエル家の邸宅「Hotel Arha Carmona」のウエブサイト。

https://www.hotelarhacarmona.com/

・カルモナ村に興味のある方はこちらのウエブサイトもお薦めです。カルモナ村の地図も出ていて便利です。残念ながらスペイン語のみです。

https://www.esenciadecantabria.com/disfruta/turismo-cultural/visitas-autoguiadas/carmona

トマトの時期は、「お手軽パントマト(Pan con tomate)」で朝食を!

やっと我が家の畑のトマトの収穫ピークが訪れました!今年は例年より10日ほど遅い収穫ピークです。周りの畑のトマトはもう既に8月中旬からピークを迎えていたのに、我が家のトマトはなかなか熟しませんでした。

トマトの種類によりけりなのでしょう。今年は、青トマト(Tomate azul)と呼ばれる種種類のトマトを多く植えているからでしょうか。とにかく、畑のトマトの収穫が始まると我が家では毎朝パントマトを食べます。スペインでは一般的に「パントマカ」と呼ばれているカタルーニャ地方の料理がよく知られていますが、我が家では、アンダルシア地方の料理教師である友人のレシピ、「お手軽パントマト」を食べています

カタルーニャ地方では、軽く焼いたフランスパンに半分に切ったニンニクをこすりつけ、更に半分に切ったトマトをこすりつけます。その上にエキストラ・バージンオリーブオイルをたっぷりかけ、仕上げに軽く塩を振って食べます。スペインにいらしたことがある方は、この上に生ハムがのっているものを食べたことがあるのではないでしょうか。これもなかなか美味です!

生ハムがのったカタルーニャ地方料理「パムトマカ」(写真: Wikipedia Domain)

では、我が家のアンダルシア式(というかアンダルシアの友人式)「お手軽パントマト」の作り方を紹介します。

「お手軽パントマト」(Pan con tomate)

材料:4人分

・トマト(あれば完熟)            大 1個

・エキストラ・バージンオリーブオイル      適宜

・塩                     少々                

作り方

1.軽く焼いたフランスパンに、エキストラ・バージンオリーブオイルをたっぷりかける。

2.すりおろしたトマトを上からたっぷりのせる。

3.最後に軽く塩を振って出来上がり。

これぞ我が家のパントマト!(笑)

エキストラ・バージンオイルは、できればあまり癖のないアルベキーナ (Arbequina) のエキストラ・バージンオリーブオイルをお薦めします。アルベキーナというオリーブの実から搾られたオイルは、辛みや苦味がなく、後味に甘みを残すような味です。これだと、トマトの酸味をほんのりと和らげ、トマト本来の味を引き立てれくれます。

アルベキーナ (Arbequina) というオリーブの実から搾られたエキストラ・バージンオリーブオイルをたっぷりつけて!

日本ではピンク系のトマトが主流ですが、スペインでは赤系のトマトが断然人気があります。畑作りをしていると、畑のご近所さんから「このトマトは美味しかったから一度食べてみて!気に入ったら種を取って来年植えるといいよー!」とトマトを頂くことも多々あります。先日、バレンシア地方のトマトを頂きましたが、とっても美味しくて、早速来年用に種を取り、乾燥させています。来年が楽しみです!

左からジグザクに、青トマト、かなり大きいピンクトマト、黒トマト、先がちょっととんがったバレンシアトマト、小粒なガリシアトマト、トマトソースに使う洋ナシ形トマト

ロマネスクへのいざない (11)- カスティーリャ・イ・レオン州-ブルゴス県 (8)– ビスカイーノス・デ・ラ・シエラのサン・マルティン・デ・トゥール教会 (Iglesia de San Martín de Tours en Vizcaínos de la Sierra)

ブルゴス県のデマンダ連峰にある小さなビスカイーノス村は、ペドロソ川のそばにあり、標高1000mを超える所にある。私が目指したサン・マルティン・デ・トゥール教会 (Iglesia de San Martín de Tours)は村へ入る道路に隣接して立っているので、すらっとした鐘楼がいきなり目の前に現れた。

アーチ型夫婦窓が美しい教会だ(写真: 筆者撮影)

この村は、この町を囲む広大な山岳地帯全体と同様に、9世紀末から10世紀にかけて政治的にも人口の面でも重要な位置を占めていた。そして、この時代はアストゥリアス-レオン王国とカスティージャ伯爵領の人口補充が進んだ時期とも重なる。(「arteguias」ウエブサイトより)

シエラ派 (Escuela de la Sierra) の職人たち

以前紹介したピネダ・ラ・シエラのサン・エステバン・プロトマルティール教会 (Iglesia de San Eesteban Prótomartir en Pineda de la Sierra)の最後にも言及したが、この地方には、シエラ・デ・ラ・デマンダ(Sierra de la Demanda)というデマンダ連峰があり、そこから由来する名前でシエラ派(筆者訳 La escuela de la Sierra)と呼ばれるロマネスクの教会や修道院を造った職人たちがいた。

ピネダ・ラ・シエラのサン・エステバン・プロトマルティール教会 (Iglesia de San Eesteban Prótomartir en Pineda de la Sierra)についてはこちらをどうぞ。

このシエラ派(La escuela de la Sierra)の職人たちは、主に10世紀、11世紀、12世紀にかけて活躍した。そして12世紀にはその姿が消え始める。理由は、シロス修道院の回廊を作った4人の親方職人たちの覇権が強かったことに由来する。

水平な教会の単調さを破る高い塔、そして特にその彫塑的な造形(escultura monumental)はシエラ派(La escuela de la Sierra)の特徴として挙げられる。また、現在鐘楼としての役割を果たしている塔が、建設当初は防御の役割を担っていたことも特筆すべき点である

その他のシエラ派(La escuela de la Sierra)の教会について興味のある方はこちらもどうぞ。

サン・マルティン・デ・トゥール教会 (Iglesia de San Martín de Tours)

サン・マルティン・デ・トゥール教会 (Iglesia de San Martín de Tours)の最初の教会は、プレロマネスク様式で9~10世紀に建てられたが、11世紀の終わりまたは12世紀の初めに、シエラ派 (La escuela de la Sierra)と呼ばれるロマネスク様式のものに取って代わった。そして、12世紀後半には、同じロマネスク様式ではあるが別の流派であるシレンセ派(La escuela de la Silense)により、柱廊のある玄関(La galería porticada)と、鐘楼(La torre)が追加された。

近代に入り、何度か改修工事が行われた。最も重要なのは18世紀のことで、前述の回廊のある玄関(La galería porticada)が解体され、再建された

車を降りて教会の入口へ歩いていくと、先程目の前に現れたすらっとした鐘楼の姿のイメージとは全く異なる堂々とした姿が現れた。ただ、他のシエラ派(La escuela de la Sierra)による教会に比べ柱廊のある玄関(La galería porticada)は簡素だ。それでも、横の広がりと高い塔による縦への広がりの調和が美しい教会だ。

砂岩の石組みは濃い褐色、または深い紫がかったトーンもある色で、落ち着いた雰囲気がある(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

シエラ派(La escuela de la Sierra)特有の彫刻

コーニス(軒蛇腹)部分にある持ち送りには、シエラ派特有の自然主義ではないが原始的で表情豊かな様々な彫刻が施されている。

2頭のライオンの首をロープで掴んでいる人物が描かれた彫刻は面白いモチーフで注目に値する。

なんとなく漫画チック。2頭のライオンはちょっととぼけた顔をしていて迫力には欠けるが、憎めない(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

こちらは猿だろうか。歯を食いしばって立派な歯を見せているところは笑いを誘われる。

確かに原始的だがとても親しみを持てる彫刻ばかり(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

性を示す男性。頭でっかちでこちらも笑いを誘う。それにしても教会も以前は性に対してもっと寛容だったのだろうか。ロマネスクでは時々見るモチーフである。

教会に想像上の動物などが彫られていてるのは不思議だが、性を示す男性が彫られているのはもっと不思議だ(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

arteguias のウエブサイトには、「これは、メソポタミアから中世ヨーロッパに伝わった古代の図像であろう。」と言及されていました。そうだとすると、これらの彫刻たちは長い時間をかけて遠いところからやって来たんだ、お疲れ様、と労をねぎらいたくなってしまう。(笑)

シレンセ派(Escuela de la Silense) の彫刻

ここから近いサント・ドミンゴ・デ・シロス修道院 (Monasterio de Santo Domingo de Silos)で活躍した職人達がシレンセ派(La escuela de la Silense)である。前述したように12世紀末にシレンセ派(La escuela de la Silens)の職人たちが、柱廊のある玄関(La galería porticada)と鐘楼(La torre)を造った。彼らが彫った柱廊のある玄関(La galería porticada)の柱頭などはかなりシエラ派(La escuela de la Sierra)のものとは趣を異にしてる。

ロマネスクでは好んで用いられたモチーフの女の頭を持つ鳥ハイピュリアとドラゴンが見える。シレンセ派(La escuela de la Silens)の方が緻密かつ高度な技術があることが分かる。ただ、シレンセ派(Escuela de la Silens)の彫刻のようなユーモラスさ、温かみのある表情には欠ける。

木の実またはブドウを食べるドラゴン(左側の柱頭)と向い合せに配置されているハイピュリア(右側の柱頭)(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

柱廊のある玄関(La galería porticada)の入口の両側にある柱頭には、右側にはライオン、左側にはドラゴンが彫られているが、シエラ派(La escuela de la Sierra)のようなおとぼけライオンではなく、歯をむき出した凶暴な雰囲気を現し毛並みも細かく彫ってあり迫力満点。

同じ教会に施された彫刻も、異なる派の職人の手によるとこんなにも趣の異なるものになるのかと驚かされる(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

鐘楼(La torre)

鐘楼も同じシエラ派(La escuela de la Sierra)が12世紀後半に造ったものだ。この鐘楼は3層から成り、下の層は上層部の構造部分を支える高台としての役目を持ち、南北方向に完璧な半円筒形ヴォールトで覆われている。真ん中の層は、四方にアーチ状夫婦窓があり開口している。上の層は、真ん中の層よりも幅の狭い小窓があり、これもアーチ状夫婦窓である。このアーチ状夫婦窓は、2本の外柱に半円形のアーチで囲まれた中にあるという特徴があり、更にリズミカルな印象を私たちに与える。

上層部分のアーチ状夫婦窓が小さくなることにより、まるで天に昇っているような錯覚も与えられる(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

アーチ状夫婦窓の柱頭には、小型の果実、シダのような葉、人の頭、四足獣、ハイピュリア、ワシなどが描かれている。(「arteguias」ウエブサイトより)

小型の果実がぶら下がっている柱頭(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

四足獣がみえる(写真: アルベルト・フェルナンデス・メダルデ)

最後に

全く異なる時代の様式で改築されている教会や建物は多いが、このビスカイーノス・デ・ラ・シエラのサン・マルティン・デ・トゥール教会 (Iglesia de San Martín de Tours en Vizcaínos de la Sierra)は、同じロマネスク期の中で職人たちが属する派の相違により異なる特徴を持った彫刻や石組みの仕方などがひとつの教会の中に見られる貴重な教会の一つだろう。

洗練されたシレンセ派(La esuela de la Silense)が、温かみがあり表情豊かではあるものの原始的なシエラ派(La escuela de la Sierra)を席巻し、遂には消滅させてしまったというこの地方の歴史から、当時の職人たちの市場獲得の激しさを垣間見たような気がした。

こちらは、造られた時期によって石の組み方の違いや、教会内部にある西ゴード時代の洗礼盤等も見れるので見逃すにはもったいない動画。

デマンダ連峰(Sierra de la Demanda)にあるシエラ派 (Escuela de la Sierra) の建物

今から約1ヵ月ほど前に、ブルゴス県観光課によりシエラ派 (La escuela de la Sierra) の教会を紹介する動画が計10本 youtube にアップされた。その中から幾つか紹介する。残念ながらスペイン語のみだが、内部や教会の周囲などの様子が分かり興味深い動画だ。

・12世紀に造られたバルバディージョ・デ・エレーロスの聖コスメ&聖ダミアン礼拝堂 (Ermita de los Santos Cosme y Damián de Barbadillo de Herreros)を紹介した youtube 。

・プレロマネスク時代の10世紀~11世紀に造られ、その後12世紀に増築されたトルバーニョス・デ・アバホの聖キルコ&聖フリタ教会 (Iglesia San Quirco y Santa Julita de Tolbaños de Abajo)を紹介した youtube 。

・12世紀末に造られたアルランソンの聖大天使ミカエル教会 (Iglesia de San Miguel Arcángel de Alranzón)を紹介した youtube 。

・12世紀に造られたリオカバド・デ・ラ・シエラの聖コロマ教会 (Iglesia de Santa Coloma de Riocavado de la Sierra)を紹介した youtube 。

・12世紀に造られたリコバド・デ・ラ・シエラの聖コロマ教会 (Iglesia de San Millán Obispo de San Millán de Lara)を紹介した youtube 。

参考

ここで紹介したビスカイーノス・デ・ラ・シエラのサン・マルティン・デ・トゥール教会 (Iglesia de San Martín de Tours en Vizcaínos de la Sierra)は、ブルゴス県のロマネスクを訪ねたルートの中の一つだ。こちらのルートを知りたい方はこちらを参考にしてほしい。

・スペイン語ですが、教会についてだけではなく、興味深い図面なども見れます。

https://www.romanicodigital.com/sites/default/files/pdfs/files/burgos_VIZACA%C3%8DNOS_DE_LA_SIERRA.pdf

・こちらもスペイン語ですが、興味のある方は是非ご覧ください。

https://www.arteguias.com/iglesia/vizcainosdelasierra.htm

・デマンダ連峰の観光案内。残念ながらスペイン語のみです。

https://sierradelademanda.com/

・デマンダ連峰にあるロマネスク建築のパンフレット。これも残念ながらスペイン語のみです。

https://sierradelademanda.com/wp-content/uploads/2019/01/FOLLETO-ROMA%CC%81NICO-SERRANO.pdf

https://goo.gl/maps/JdMPigBAKd1zY3pD8?coh=178573&entry=tt

村上春樹氏、日本人作家初のアストゥリアス皇太子賞(Premios Princesa de Asturias)受賞!

去る2023年5月24日、「スペインのノーベル賞」とも呼ばれる「アストゥリアス皇太子賞」の文学部門の今年の受賞者に、日本人作家の村上春樹氏が決まりました!おめでとうございます!

アストゥリアス皇太子財団(Fundación Príncipe de Asturias)(Wikipedia Public Domain)

アストゥリアス皇太子賞(Premios Princesa de Asturias)とは

「アストゥリアス皇太子賞(Premios Princesa de Asturias)」は、現在のスペイン国王フェリペ6世が皇太子だった1980年に、皇太子の称号を冠して設立されたアストゥリアス皇太子財団(Fundación Príncipe de Asturias)により創設され、「コミュニケーションおよびヒューマニズム部門(Premio Príncipe de Asturias de Comunicación y Humanidades)」、「社会科学部門(Premio Príncipe de Asturias de Ciencias Sociales)」、「芸術部門(Premio Príncipe de Asturias de las Artes)」、「文学部門(Premio Príncipe de Asturias de las Letras)」、「学術・技術研究部門(Premio Príncipe de Asturias de Investigación Científica y Técnica)」、「国際協力部門(Premio Príncipe de Asturias de Cooperación Internacional)」、「共存共栄部門(Premio Príncipe de Asturias de la Concordia)」、「スポーツ部門(Premio Príncipe de Asturias de los Deportes)」の8部門の賞があります。

今回の文学部門での村上春樹氏の授賞に際しては審査員全員一致で決まり、授賞理由について、日本の伝統と西洋文化の遺産を野心的かつ革新的な叙述で調和させ、独自の文学を持ち、世界的に受け入れられている作家だと位置づけたうえで、その作品は、孤独や存在不安、都市の非人間化、テロといった現代の重要な主題や困難を表現することに成功し、全く異なる世代にまで受け入れられていると述べています。そして、最後に現代文学における現代文学における主要な長距離ランナーの一人だ、とたたえました

スペイン語ですが、アストゥリアス皇太子財団(Fundación Príncipe de Asturias)の公式サイトにこの授賞について詳しくでています。興味のある方はどうぞ。

https://www.fpa.es/es/premios-princesa-de-asturias/premiados/2023-haruki-murakami.html

文学部門での日本人受賞は初めてですが、作家村上春樹氏はスペインでも人気が高い日本人作家のひとりです。既に24冊の本がスペイン語に翻訳されています。新刊「街とその不確かな壁」も来年の春にはスペインでも出版される予定です。

これまでの日本人受賞者

ちなみに、この「アストゥリアス皇太子賞」の日本人の受賞者は想像以上にいました。現在までの受賞者の皆さんは次の通りです。

1.国際協力部門(Premio Príncipe de Asturias de Cooperación Internacional)で、1999年に宇宙飛行士の向井千秋氏が日本人として初めて、米国やロシアなどの宇宙飛行士3人と共に受賞されました。

2.学術・技術研究部門(Premio Príncipe de Asturias de Investigación Científica y Técnica)で、2008年に物理学者でもあり化学者でもある飯島澄男氏が、アメリカの中村修二氏をはじめとするアメリカ人学者4人と共に受賞されました。

3.共存共栄部門(Premio Príncipe de Asturias de la Concordia)で、2011年に福島第一原子力発電所事故の対応に当たったフクシマ50(消防士、自衛官、警察官、作業員)の方々が受賞されました。また、同じ部門では、2022 年には建築家の坂茂氏が受賞されました。

4.コミュニケーションおよびヒューマニズム部門(Premio Príncipe de Asturias de Comunicación y Humanidades)では、2012年に任天堂株式会社代表取締役フェローの宮本茂氏が受賞されました。

去年2022年に、建築家の坂茂氏が受賞されていたので、2年連続の日本人受賞の快挙ですね。坂茂氏も、スペインで有名な方です。

今でも鮮明に記憶にあるのが、福島第一原発の事故で放水作業や住民の避難誘導に当たった、自衛隊と警察、消防の部隊フクシマ50の方々に送られた2011年の共存共栄部門(Premio Príncipe de Asturias de la Concordia)です。その時のフクシマ50のスペイン語名称は、「フクシマの英雄たち(Héroes de Fukushima)」というものでした。

授賞の理由として、「津波によって引き起こされた原子力災害による壊滅的な影響の拡大を、その決断が自分達の生命に深刻な影響を及ぼすことをも顧みず、自己犠牲によって防ごうとした、人間として最高の価値観と勇気を体現した人たち-フクシマの英雄たち」と褒め称えました。

授賞理由を聞いた際、胸が熱くなり涙が出たのを今も思い出します。

スペイン語ですが、この受賞についてもっと知りたい方はこちらをどうぞ。

https://www.fpa.es/es/premios-princesa-de-asturias/premiados/2011-heroes-de-fukushima.html?especifica=0

最後に

さて、スペイン語を勉強している皆さん、またはスペイン語をご存じの方は、この「アストゥリアス皇太子賞(Premios Princesa de Asturias)」を見て、疑問に思われたことと思います。というのも、スペイン語の「Premios Princesa de Asturias」を日本語に訳すと、実は、「アストゥリアス皇太子賞」ではなく、「アストゥリアス王女賞」となるからです。

アストゥリアス皇太子財団(Fundación Príncipe de Asturias)の名称は現在、アストゥリアス王女財団(Fundación Princesa de Asturias)と改称されています。何故なら、2014年に皇太子から国王フェリペ6世として即位されたことにより、長子である王女レオノールがアストゥリアス公を継承しました。そのため、現在の名称は「アストゥリアス女王財団(Fundación Princesa de Asturias)」となったという訳です。本来ならば、「アストゥリアス皇太子賞」ではなく、「アストゥリアス王女賞」とするべきですが、日本の報道機関で使われている従来の「アストゥリアス皇太子賞」という名前でこのブログの記事も統一しています。

補足すると、スペイン王家が持つこのアストゥリアス公の称号は、1388年、カスティーリャ王フアン1世が王位継承者を指定するためにアストゥリアス王子の称号を創設したことに端を発したものです。それから600年以上も続くスペイン王家の由緒正しい称号なのです。

スペインの国民的画家 フアキン・ソロージャ(Juaquín Sorolla)- 没後100年記念の年

今年2023年は、スペインの国民的画家フアキン・ソロージャ(Juaquín Sorolla)が亡くなってからちょうど100年目の年に当たります。それを記念し「ソロージャ イヤー」と銘打って、出身地バレンシアをはじめマドリッド等でも彼の絵の展示会が開催されています。

このブログでも以前フアキン・ソロージャ(Juaquín Sorolla)とソロージャ美術館について紹介していますので、興味のある方はこちらもどうぞ。

今回は、バレンシアとマドリッドで現在開催中の展示会やその他の展示会情報をお伝えします。

光のアプローチ ソロージャ(Sorolla a través de la luz

最初は、マドリッドの王宮で開催されている「光のアプローチ ソロージャ(筆者訳)(Sorolla a través de la luz)」の展示会です。

この展示会では、テクノロジーを駆使して彼のオリジナル作品とデジタルで再現された作品が対話するという仕掛けが施してあります。また、バーチャルリアリティルームではバーチャルリアリティ用の装置を付け、画像と音のショーの中に身を置くという、今までの絵画展示会では考えつかなかったような不思議な体験ができます。

特殊な部屋に入ると、部屋一杯にソロージャの作品が映し出されます(写真: 筆者撮影)

展示されているソロージャの絵は24点ありますが、そのほとんどが個人所有のもので今回初公開されています。海、庭園、肖像画、風俗描写の場面など、画家ソロージャが好んで描いたテーマが選ばれています「光の画家」と呼ばれているほど彼の絵には、その瞬間、瞬間の微妙な光の動きや光の強弱、光の質感、そして季節ごと一日の時間ごとの光の違いを上手く捕らえて表現されていて、こんなにも異なる光を表現できるのかと驚かされます。初めてソロージャの生まれ故郷バレンシアを訪れた時、お天気が良かったということも手伝って、あーこれがソロージャの光だな!地中海の光だな!と実感しました。同じスペインでも私が住むカスティージャ・イ・レオン州の光とは全く異なる光がそこに降り注いでいたことがとても印象的でした。

大きなスクリーンに映し出された絵は、まるで見ている私たちも同じ場所にいるような不思議な感覚を抱かせられます(写真: 筆者撮影)

「ハベアの恋人たち(筆者訳)(Idilio, Jávea)」という作品がありました。まだ年若い少年が少女に話しかけています。少女は恥ずかしそうにでも嬉しそうに下を向いて座っています。なんと初々しく、見る人がまだ若かったころの自分の思い出とオーバーラップするような美しい絵でしょう。説明板に、この絵は9月の昼下がりに描かれ、ソロージャ自身が若くして妻クロティルデに恋した思い出を表現したものかもしれないと書かれていました。題名の「Idilio」には「田園恋愛詩、恋愛関係、牧歌的(幸福)な時期」という意味が手元の辞書には出てきますが、この作品は1901年の「国内絵画展(Exposición Nacional de Bellas Artes)」に出展され売れました。その時には「Los novios(恋人たち)」という名前がついていたそうです。

「ハベアの恋人たち(Idilio, Jávea)」昼下がりの光が若い二人に降り注ぎ、ほのぼのとさせられると同時に胸がキュンとなりそうな絵です(写真: 筆者撮影)

マドリッドの王宮で開催されている「光のアプローチ ソロージャ(Sorolla a través de la luz)」の展示会は、2023年6月30日まで開催されています。もし、それまでにマドリッドに行かれる機会がある方は、是非この展示会にも寄られることをお薦めします。その際は、下の公式サイトで事前に入場券を買われた方が良いでしょう。

https://www.patrimonionacional.es/actualidad/exposiciones/sorolla-traves-de-la-luz

ソロージャの原点 (Los orígenes de Sorolla)

次に紹介する絵画展は、バレンシア美術館(Museo de Bellas Artes en Valencia)で開かれている「ソロージャの原点 (筆者訳)(Los orígenes de Sorolla)」です。

この展覧会は、まだピカソやダリ等が活躍する以前、スペイン国内でも国際的にも最も成功したスペイン画家の原点を探っていく内容の展示会として構成されています。まだ21歳だったソロージャが「パジェテルの叫び(筆者訳)(El grito del Palleter)」という作品の成功により、奨学金を得てローマに滞在する直前の1878年から1884年までの6年間の軌跡をたどります。あまり知られていない初期の絵画、水彩画、素描、ソロージャの若いころの写真、資料が一堂に展示されていてとても興味深いものです。

若いころのフアキン・ソロージャ。なかなかのハンサム青年でした(写真: 筆者撮影)

「光の画家」として、スペインのみならずヨーロッパやアメリカ合衆国で名声を得、様々なテーマの絵画を残しているソロージャですが、修業時代は、同じスペインの画家である巨匠ベラスケスやリベラの絵を勉強、模写していました。また、15歳の時に描いた果物の静物画や肖像画等も多数展示してありますが、そのデッサン力、光と影の描き方、構図のとり方等、10代にして既にのちに巨匠と呼ばれる画家としての頭角を現しています。

バックを黒にして、白や水色を際立たせて見る人を惹きつける(写真: 筆者撮影)
「ベラスケスの[メニポ]の模写(筆者訳)(Copia de “Menipo” de Velázquez)」19歳のソロージャがプラド美術館で模写した様々な作品は、死ぬまで手元に置いていたそうです(写真: 筆者撮影)

YouTubeでこの展覧会の様子が紹介されています。スペイン語ですが、様々な作品が紹介されていて見るだけでもソロージャの素晴らしさが伝わってくると思います。

「パジェテルの叫び(筆者訳)(El grito del Palleter)」バレンシア州議会が主催したローマへの絵画奨学金コンクールで、21歳の若さで賞を取りローマへ本格的な絵画の勉強へ行くことになったソロージャの記念すべき作品(写真: 筆者撮影)

バレンシア美術館(Museo de Bellas Artes en Valencia)で開かれている「ソロージャの原点 (筆者訳)(Los orígenes de Sorolla)」は、2023年6月11日までですので、残り2週間弱となってしまいましたが、機会があれば是非お薦めしたい展覧会です。

スペイン観光局のスペイン観光公式サイトにも紹介されています。

https://www.spain.info/ja/karendaa/soroorya-kigen-tenrankai-barenshia/

ちなみに、バレンシア美術館(Museo de Bellas Artes en Valencia)には、ベラスケス本人が描いた「自画像(Autorretorato)」もあります。あまり知られていないようですが、プラド美術館以外で見れるベラスケスの作品です。

温和で誠実だったと言われているベラスケスですが、この自画像の彼の視線には強い意志を感じさせられます(写真: 筆者撮影)

黒のソロージャ(Sorolla en negro

「光の画家」として名を馳せたソロージャですが、黒やグレーの色使いを中心にして描いた作品も多く残しています。それらの作品を集めて展示しているのが、バレンシアのバンカハ財団で開催されている「黒ソロージャ(筆者訳)(Sorolla en negro)」です。

ソロージャの黒の使用は、ベラスケス、エル・グレコ、ゴヤなどのスペイン絵画の伝統に由来していて、詩的で精神的な状態を示唆する豊かな表現要素となって、彼の時代の現代性とその飾り気のない気品を反映する色として再解釈されました。(バンカハ財団のウエブサイトより)

「グレーのドレスを着たクロティルデ(筆者訳)(Clotilde con traje gris)」ソロージャが深く愛した妻クロティルデ。心を打つものを感じます(写真: 筆者撮影)

ソロージャが描いたグレーという色は現代的な色として描かれていて、静寂や平穏を表現していたそうですが、この「グレーのドレスを着たクロティルデ(Clotilde con traje gris)」には、グレーのドレスがクロティルデの美しさのみではなく洗練された雰囲気を醸し出し、と同時に内面的な静穏と深い愛情が伝わってきます。

展覧会は、「黒とグレーの調和(筆者訳)(Armonías en negro y gris)」、「象徴的な黒(筆者訳)(Negro simbólico)」、「黒と暗い表面(筆者訳)(Superficies negras y oscuras)」、「モノクローム(筆者訳)(Monocromías)」の4つのセクションで構成されています。ソロージャの絵に特別な個性を与えている肖像画の黒とグレーの色彩和音から始まり、時代や自然主義画家の作品に浸透している黒という色の象徴性や文化的意義について見ていきます。更に、19世紀に急進的なコントラストを生み出し、他の色を引き立てる存在として形作られた黒の新しい使い方についても検証していきます。展覧会の最後には、グレーや青みがかった色調に包まれたモノクローム作品が展示されていますが、これは複雑でないどころか、卓越した技術を駆使した特異な作品です。(バンカハ財団のウエブサイトより)

「エンリケタ・ガルシア・デル・カスティージョ(筆者訳)(Retrato de Enriqueta García del Casitillo)」こちらは雄弁に語る黒!という感じ(写真: 筆者撮影)

確かに、この絵画展を見てソロージャは正しくスペインの巨匠たちの素晴らしい技術を踏襲したスペインの画家であることを確認させられました。と同時に、黒とグレーという色に様々な意味を持たせ、ソロージャが表現したいものを浮き出たせる重要な役割を果たす色だったということにも気づきました。ソロージャ絵画の奥の深さ、多面的な部分を再発見できた素晴らしい展覧会でした。

バレンシアのバンカハ財団で開催されている「黒のソロージャ(Sorolla en negro)」の開催期間は今年9月10日までです。もしバレンシアに行かれる方は是非見に行ってください。

バンカハ財団の公式サイトです。最後の方には、展覧会を紹介したYouTube の動画もあります。一見の価値ありです。

https://www.fundacionbancaja.es/exposicion/sorolla-en-negro/

肖像画で見るソロージャ(Sorolla a través de sus retratos

最後に紹介するのは、マドリッドのプラド美術館で開催されている「肖像画で見るソロージャ(筆者訳)(Sorolla a través de sus retratos)」です。

こちらは、プラド美術館が所有するソロージャの作品を集め、特に肖像画を通してソロージャの作品に迫るものです肖像画のコーナーには、ソロージャの作品だけではなく、ソロージャと同時期19世紀に活躍した画家たちが描いた肖像画も一堂に展示されています。残念ながら美術館内での写真撮影が禁止されているので、写真をお届けすることはできませんが、下のプラド美術館公式サイトをクリックして頂くと、展示されているソロージャの作品が紹介されています。

もし、6月18日までにマドリッドのプラド美術館を訪れる機会があれば、是非こちらも見に行ってください。

プラド美術館公式サイトはこちらです。

https://www.museodelprado.es/actualidad/exposicion/retratos-de-joaquin-sorolla-1863-1923-en-el-museo/2f9c9749-54a2-b25b-4afb-932e76fdb8cf

2023年に開催される展覧会情報

その他、開催されているソロージャの絵画展は次の通りです。

マドリッドのソロージャ美術館:

・2023年6月25日まで開催-「ソロージャが死んだ!ソロージャ万歳!(筆者訳)(¡Sorolla ha muerto!¡Viva Sorolla!)」

この展示会は、ソロージャが亡くなった時の新聞記事などが展示してあり、ソロージャがどれだけ民衆からも愛された国民的な画家だったことがよくわかります。簡単な説明が youtube に紹介してあります。スペイン語ですが、興味のある方はどうぞ。

・2023年9月17日まで開催-「マヌエル・ビセンテとソロージャの海(筆者訳)(En el mar de Sorolla con Manuel Vicent)」

ソロージャと同じバレンシア州出身の詩人・作家マヌエル・ビセントによる詩とソロージャの絵画のコラボ企画です。スペイン文化・スポーツ省の公式サイトにこの展覧会が紹介されています。

https://www.culturaydeporte.gob.es/msorolla/exposicion/exposicion-mar-sorolla-con-manuel-vicent.html

バレンシア:

・2023年6月2日まで開催-「ローマのソロージャ。芸術家ソロージャとバレンシア州議会奨学金(筆者訳)(Sorolla en Roma. El artista y la pensión de la Diptación de Valencia (1884-1889))」バテリア宮殿 (Palacio de Batlia)

ソロージャが前述の「パジェテルの叫び(El grito del Palleter)」という作品の成功により、奨学金を得てローマに滞在した21歳から26歳まで絵画の勉強と訓練を積んだ時期の芸術生活に焦点を当てた展覧会です。「ソロージャ100周年(Centenario Sorolla)」公式サイトにも紹介されています。

https://www.centenariosorolla.es/exposiciones/inauguracion-de-la-exposicion-sorolla-en-roma-el-artista-y-la-pension-de-la-diputacion-de-valencia-1884-1889/

・2023年12月まで開催-「芸術家たちの街。フアキン・ソロージャとバレンシア芸術産業宮殿(筆者訳) (La Ciudad de los artistas. Juaquín Sorolla y el Palacio de los Artes e Industrias de Valencia)」バレンシア市立博物館(Museo de la Ciudad de Valencia)

ソロージャと並行してキャリアを積んだバレンシアの芸術家たちによる140点以上の作品が展示されています。フアキン・ソロージャがバレンシアに芸術産業宮殿を建設したプロジェクトについてや、当時のバレンシアの芸術的雰囲気に焦点を当てた展覧会です。「ソロージャ100周年(Centenario Sorolla)」公式サイトにも紹介されています。

https://www.centenariosorolla.es/exposiciones/inauguracion-de-la-exposicion-la-ciudad-de-los-artistas-joaquin-sorolla-y-el-palacio-de-las-artes-e-industrias-de-valencia/

アリカンテ:

・2023年6月25日まで開催-「ソロージャと同時代のバレンシア絵画(筆者訳) (Sorolla y la pintura valenciana de su tiempo)」アリカンテ美術館(Museo de Bellas Artes de Alicante)

120点という多くの作品が展示してある展覧会で、ソロージャの作品以外にもソロージャの弟子たちや同時代に活躍したバレンシアの画家の作品やバレンシアを題材にした作品を一挙に公開しています。スペイン国営のラジオ・テレビ放送協会がこの展覧会について紹介しています。

https://www.rtve.es/play/videos/linformatiu-comunitat-valenciana/sorolla-pintura-valenciana-tiempo-mubag/6773781/

「ソロージャ100周年(Centenario Sorolla)」公式サイトはこちらです。

https://www.centenariosorolla.es/

このブログで紹介した展覧会が行われている場所です。

https://goo.gl/maps/q8QfpFVUtugstwbc6?coh=178573&entry=tt

レオン(León)へ行こう!(5)―ナショナル ジオグラフィック トラベル リーダーズ チョイス アワード 2023

去る2023年4月25日、ナショナル ジオグラフィック トラベル マガジンで、スペイン国内ベスト デスティネーションを読者の方々に選んでもらうという第1回読者賞「ナショナル ジオグラフィック トラベル リーダーズ チョイス アワード 2023(Premios de los Lectores 2023 de Viajes Nacional Geographic)」の授賞式が行われました。そして、私が大好きなレオン市が栄えある「ベスト アーバン デスティネーション賞」に輝きました!

夜になるとレオン大聖堂の中の照明が美しいステンドグラスを浮かび上がらせます。鮮明に撮れず残念ですが、雰囲気だけでもお届けします(写真:筆者撮影)

ベスト アーバン デスティネーション賞 (Mejor Destino Urbano Nacional)

この賞は、ナショナルジオグラフィックトラベルマガジンの読者数千人の投票によって選ばれました。これは、歴史的遺産と文化的生活という面において、レオン市が「スペインの中で最も重要な都市のひとつ」という理由でこの賞に選ばれました。このブログでもレオン市の魅力についての記事があります。興味のある方はこちらもどうぞ。

レオン市内には、2000年の歳月をレオンの街と共に経てきた「ローマ時代の城壁(Muralla Romana)」、スペインの精神的バックボーンを作ってきたキリスト教の建築物でもあり、レオン王国の歴代王が埋葬されている霊廟がある「聖イシドロ王立参事会教会(Real Colegiata de San Isidoro)」、レオン市民の誇りでもありレオン市民の心の拠り所でもある「レオン大聖堂(Catedral de León)」、修道院、病院、刑務所、パラドールと使用目的が変遷していった「サン・マルコス教会(Iglesia de San Marcos)」、日本人でも知らない人はいないくらい有名なアント二・ガウディが建築した「カサ・ボティネス (Casa Botines)」、2005年に開館した現代美術館「ムサク(MSAC)」という、時代ごとの素晴らしい建築物をまるでタイムスリップして楽しめるように見て回ることができます。これが受賞理由の一つ「歴史的遺産」に当たるものです。

ガウディ建築「カサ・ボティネス」とベンチに座るガウディ。
ガウディの隣には地元のおばあちゃんとお孫さんが散歩の休憩中でした。(写真:筆者撮影)

もう一つの理由「文化的生活」の中の重要な要素として含まれていることに、レオンの街にある「バル」と呼ばれる多くタパスバーがあります。スペイン人にとって、「バル」のない生活は考えられません。どんなに小さな村でも必ずと言っていいほど「バル」はあります。数多くの「バル」で出される様々なタパスの質の高さもレオンの魅力の一つです。地元の食材を使った伝統的なタパスや家庭的なタパス、前衛的なタパスや切ったフランスパンを軽く焼き、その上に様々な料理を載せて食べる「トスタ」と呼ばれるものなど、実に色んな種類の美味しいタパスがレオンでは食べれます。「食」は旅の喜びの一つ、発見の一つ、そしてそこに住む人の生活様式や文化を知るすべとなるものの一つです。実は、スペインの中で、住民一人当たりのバルが最も多い都市はこのレオン市なのです!人口1,000人当たり5.03軒のバルがあるということ。確かに、ウメド地区(Barrio Húmedo)やロマンティコ地区 (Barrio Romántico)には沢山の「バル」が軒を争っており、どこに入ろうか?と、迷ってしまうほどです。

ロマンティコ地区(Barrio Romántico)にあるバル「エル・ガジネロ(El Gallinero)」。ここは手作りトルティージャ・デ・パタタス(Tortilla de patatas)がタパス。(写真:筆者撮影)
バル「エル・ガジネロ(El Gallinero)」の看板タパス、トルティージャ・デ・パタタス(Tortilla de patatas)美味しいですよ!(写真:筆者撮影)

「住民一人当たりのバルが最も多い都市はどこ?」というタイトルで「ラ・ラソン(La Razón)」という新聞に記事(2023年2月8日付)が載っています。スペイン語ですが、こちらです。

https://www.larazon.es/castilla-y-leon/cual-ciudad-espana-mas-bares-habitante_2023020863e13c3c308cc00001feb77b.html

レオンの魅力をもっと知りたい方は、こちらもどうぞ。

こちらがナショナルジオグラフィックトラベルのウエブサイトに出ている「ベスト アーバン デスティネーション賞」の内容です。

https://viajes.nationalgeographic.com.es/a/48-horas-sorprendentes-leon_12963

カスティージャ・イ・レオン州は観光の穴場!

今回の第1回読者賞「ナショナル ジオグラフィック トラベル リーダーズ チョイスアワード2023」の中では、カスティージャ・イ・レオン州の活躍が目立ちました。

「スペイン ベスト ガストロノミー デスティネーション賞 (Mejor Destino Gastronómico de España)」にはブルゴス市が、そして「ベスト ガストロノミック ルート賞(Mejor Ruta Gastronómica)」の最終候補に残りながら惜しくも賞を逃した「リベラ・デ・ドゥエロのワインルート(Ruta del Vino Ribera de Duero)」が特別賞 (Mención especial) を獲得しました。

カスティージャ・イ・レオン州は、美味しいワインあり、料理あり、歴史あり、文化ありの観光にはうってつけの場所なのです。その上、バルセロナやグラナダのように常に多くの観光客でにぎわっている所と異なり、もっとゆっくりと静かに自分のペースでまるでそこで生活しているように旅を楽しめる所です。

リベラ・デ・ドゥエロのワイン(Ribera de Duero)「マタロメラ(Matarromera)」
マドリッドにあるティッセン-ボルネミッサ美術館とのコラボで絵画がラベルに使われています(写真:筆者撮影)

ナショナルジオグラフィックトラベルのウエブサイトに出ている「スペイン ベスト ガストロノミー デスティネーション賞 (Mejor Destino Gastronómico de España)」を受賞したブルゴスの記事です。

https://viajes.nationalgeographic.com.es/a/burgos-sin-salir-ciudad_16573

こちらがナショナルジオグラフィックトラベルのウエブサイトに出ている「リベラ・デ・ドゥエロのワインルート(Ruta del Vino Ribera de Duero)」の記事。

https://viajes.nationalgeographic.com.es/a/ruta-por-ribera-duero_8054

「リベラ・デ・ドゥエロのワインルート(Ruta del Vino Ribera de Duero)」のウエブサイトです。興味のある方はこちらもどうぞ。英語版もあります。

https://www.rutadelvinoriberadelduero.es/

日本は大人気

「海外のベスト デスティネーション賞 (Mejor Destino Internacional)」では、日本が選ばれました!

最近、スペインでの日本人気は高いなと実感していただけに「やっぱり!」という感想です。私の周りでも日本を訪れたことがある人、訪れてみたいと考えている人は多く、和食レストランがどんどん増えてきていることからも、スペインから日本への旅行者がしばらくは増え続けそうですね。それに、若者の間で日本の漫画やアニメのポップカルチャーも根強い人気で、若者層から中年層まで幅広く層の厚い日本大好きスペイン人がいます。(笑)

ただ、日本も東京浅草や京都などの人気観光地は、外国人観光客が増えて一体ここは日本なの?というような状況だと聞いています。ある程度人数を制限するなどの対策を取っていかないと、スペイン語でもよく使われる「Morir de éxito (成功による死)」という表現のように、あまりに人気があり観光客が増えすぎて逆に観光客から避けられることになり遂には観光客が大幅に減るという事態が起こる可能性も起こりうるなという危機感を覚えています。住む人も、訪れる人たちも皆が心地よく過ごせるような工夫を民間共に知恵を絞って実行していかなければならないターニングポイントに来ていると思います。

最後に

ナショナル ジオグラフィック トラベル マガジンのスペイン語版は、スペイン国内だけではなく、スペイン語語圏の中南米の国々でも読まれている非常にポピュラーな雑誌です。スペイン国内を対象にした賞を中心に行われた読者投票なので、投票した人はスペインに住む人々が多かったと推測されますが、今回の受賞内容を見て分かることは、一般的な観光地や観光客でごった返している所ではなく、地元の人達から愛されている場所、居心地の良い場所、今もスペインらしさが残されている場所などが選ばれているということです。「観光地」という仮面を被ったまるで人工的でよそよそしく、地元の人々の日常からかけ離れてしまった場所ではなく、もっと地に足のついた「地元の人達が住みやすい場所、地元の人達のための場所」を見てみたいという方には、レオンはお薦めの街です。是非、次の旅行にレオンを加えて計画を立ててみてくださいね。

最近ファザード部分がきれいになって、華麗な姿を現したサン・マルコス教会(写真:筆者撮影)

今回の内容の元となったナショナルジオグラフィックトラベルのウエブサイトはこちらです。

https://viajes.nationalgeographic.com.es/a/asi-fue-la-entrega-de-los-i-premios-de-los-lectores-2023-de-viajes-national-geographic_19258